ノートが音声付データに!学研『エコー・スマートペン』 図も文字も音もデジタル管理で、広がる手書きの可能性

ン1本で思うままに文字や絵で表現する。大きくても小さくても、斜めでも丸くても構わない。そんな手書きの自由さは、どんなにデジタルツールが進化しても、人間は失いたくないのかもしれない。だからこそ、デジタルとアナログの中間のどこかで折り合いを付けるツールが後を絶たない。

 

この学研『エコー・スマートペン』も、そんなデジタルツールである。使い方は、ちょっと複雑で慣れが必要なうえ、文具としての洗練度もまだまだだと記者は感じるが、そんなものを軽く吹き飛ばすほどの可能性を感じさせる素晴らしい機能を持っている。さっそく“おためし”してみたので、できるだけシンプルに、ご紹介しようと思う。

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一体何ができるツールなのか?

グリーンのパッケージを開けると、中には太めのペンが1本、専用ノート、ボールペンの替え芯、USBケーブル、キャップが2個(4GB、8GBモデルの場合)、そして取説とアプリケーションソフトのIDカードが入っている。

 

見た目には、USBケーブル以外は、あまりデジタルな感じがない。ただのペンとノートといった雰囲気である。果たしてこの「デジタルペン」で、一体何ができるのか?記者は何より、「これで何ができるのか?」が、消費者にわかりにくいことが、この商品の一番の問題ではないかと思っている。そこで、まず「このペンで何ができるのか」、以下に列挙してみた。

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『エコー・スマートペン』でできること。

  1. ボールペンとして、普通に文字や図などを書くことができる。
  2. 書いたものをデジタルデータとして保存できる。
  3. 書いたときの筆の運びや順番を時間と同期させて保存し、再現できる。
  4. 書いたときの周囲の音を録音し、書いたものと一緒に保存できる。
  5. 書いた筆跡をタッチすれば、書いた場面の音を再現できる。
  6. 手書きの文字データを、OCRソフトでテキスト化できる。
  7. 以上のデータをPCでデジタル管理できる。
  8. 保存したデータを、キーワードで検索したり、人と共有したりできる。

 

つまり、この『エコー・スマートペン』は、ペンであり、ICレコーダーであり、カメラであり、そしてそれ以上でもある。でも、これだけでは、まだ「何ができるのか?」がわかりにくいと思う。以下、さらに詳しく見ていこう。

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専用ノートに隠された秘密

この『エコー・スマートペン』で特徴的なことは、このペンを使うには、「専用ノート」が必要になること。専用ノートは、A5判とA4判、それぞれ横罫と方眼のタイプを中心として、ふせん型やハードカバーなど様々なタイプが別売されているが、この専用ノートを使うことで、『エコー・スマートペン』は機能を発揮できるのだ。

 

この専用ノートに、『エコー・スマートペン』で文字や絵を書くと、それは画像データとして保存されるが、その際にペンが認識しているのは、ペンのインクや筆跡ではない。その秘密が、この専用ノートにはある。

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専用ノートの紙面には、上の写真のように、目に見えないほど細かなドットが不規則に大量に印刷されている。これがノートの座標になっているのだ。

『エコー・スマートペン』で何かを書くと、ペン先に仕込まれたCCDカメラが、この細かなドットを毎秒75フレームという高速で読み取り、それにより、 正確に筆跡をトレースし、デジタルデータとして記録・再生できる。

 

この記録の際に、ノート下にある「RECORD」ボタンをタッチしておけば、筆跡に同期して、音声を録音できる。高感度マイクがペンに内蔵されており、その再生のためのスピーカーもペンの中央にビルトインされている。

 

音声を再生するには、書いた文字や絵の一部をタッチするだけでいい。そうすると、タッチした部分を書いていたときの音声が再生される。例えば、会議のメモを、この『エコー・スマートペン』で取っておけば、メモの文字をタッチすることで、会議の録音の頭出しが自由にできるのである。

同様に、学校の授業などで、先生の話の中のキーワードだけをノートにメモしておけば、あとでそのキーワードをタッチするだけで、そのキーワードに関連する先生の話を聞くことができるようになる。つまり、音声付きのノートが作成できるというわけである。

 

この機能は、記者のように、日頃インタビューを仕事としている人間には、大きな武器になる。相手の話のキーワードだけを、あたかも目次のように簡潔にメモしてさえおけば、あとでその“目次”をタッチするだけで、その部分の話を音声データで再生できるからである。もう従来のように、長時間の録音データから、関連部分の音声を探し出す苦労が不要になるのである。

 

画像データでは、筆跡をすべて時間の経過とともにトレースできるので、例えば、このペンとノートで、子供に漢字テストを実施すれば、書き順の間違いだって指摘できるし、このペンで紙芝居を作れば、物語の進行と合わせて絵が表示されるものが作成できる。これは、紙芝居ではなくて、プレゼン資料として考えてみても面白そうである。

また、このペンとノートで、年賀状を作成すれば、手書きで書き進められながら、声のメッセージも聞くことができる賀状が音声付きPDFファイルで完成する。あとは、それをメールで送れば、かなり個性的な年始の挨拶ができることだろう。

大学の講義ノートとして、学生が使用すれば、あとで板書をクリックしながら、講義を聴き直すこともできる。授業の復習用にはもってこいである。

 

このように、アイデア次第で、この『エコー・スマートペン』の使い方は大きな広がりを見せる。こうした具体的な使い方がわかってくれば、今より多くの消費者が、この商品の秘められた魅力に気がつくはずだ。

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このペンの上部には、外部マイク用の3.5mmステレオミニジャックと、充電およびデータ転送用のmicroUSBコネクターが登載されている。

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このコネクターに付属のケーブルを接続して、充電やPCへのデータ転送を行うことができる。

ちなみに、ペン本体の内蔵フラッシュメモリーの容量に応じて、2GB、4GB、8GBの3種類のラインナップがあり、それぞれ約200時間、約400時間、約800時間の録音が可能である。

 

さて、次のページでは、付属のアプリケーションの使い勝手や、この商品の問題点について、さらに話を進めよう。