[第71回]「チルド中華まんじゅう」は入手しやすさで他を圧倒する紀文!コンビニの味で知られる井村屋、中村屋!中華の名店蓬莱本館、重慶飯店などがランクイン!

 にわかに寒さが増す今日この頃。「仕事帰りに、コンビニでホッカホカの中華まん」。そんな季節が今年もやってきたようである。『日経POSランキング』、今回のテーマは「チルド中華まんじゅう」。コンビニに行かなくても、自宅でチン!すぐにホッカホカが味わえる。一体今どの「チルド中華まんじゅう」が売れているのか?

 いつものように販売金額でランキングを作成する前に、そもそも「チルド中華まんじゅう」が、スーパーでいつから売り出されるのか。それが気になって、『日経POS情報POS EYES』を使って、月別の販売状況を調べてみた。というのも、やはりホッカホカの中華まんは、寒い時期に売れる季節商品である。真夏はあまりスーパーでは見かけないだろう。それなら10月という時期はどうなのか。
 その結果が下のグラフである。このグラフの元になったデータは、直近の1年間の月別データ。つまり2020年10月から始まり、今年9月までの12ヶ月間、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータを使用し、商品分類「チルド中華まんじゅう」で検索。各月の「千人当り金額」をグラフ化したものである。

 このグラフを見ると、明らかに夏の季節は販売金額が落ち、冬には上昇、そして1月にピークを迎えていることがわかるだろう。ちなみにこれ以前の年と比べてみても、おおむね、このような形のグラフになっていることがわかった。この結果から、スーパーでの「チルド中華まんじゅう」の販売を、繁忙期と閑散期に分けるなら、9月から2月の半年間が繁忙期、3月から8月の半年間が閑散期ということになるだろう。つまり今、10月のスーパーの販売状況は、すでに繁忙期でピーク時と比べても大差ないほどの品揃えになっているはずである。毎週20回以上、スーパーの売り場を見て歩く記者も、最近「チルド中華まんじゅう」の姿をよく見かけるようになった気がしていたが、それはこのデータからも裏付けられたわけだ。
 そこで今度は、商品別に何が一番売れているのかを見てみよう。使用するデータは、さきほどのグラフ作成のデータ同様、直近の1年間、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータ。「チルド中華まんじゅう」で検索をかけ、販売金額によりTOP20商品をランキング表にまとめたのが、下の(表1)である。

 表で色を着けた商品の、5つのメーカーは、メーカー別で販売金額シェアを見たときの上位の5社である。実際は、第2位に自社開発商品(PB)が入るので、上位6位までに入るメーカーということになる。

店舗で圧倒的に多く見かける「紀文」の商品

 記者がいつも最初に気にするは、表の右端の欄「カバー率」である。これは「販売実績があった店舗の比率」を表す数字で、くだいて言うとどれだけの店舗に商品が陳列されているかを示す数字である。例えば、この数字が100%だと、すべての店舗に商品が置いてあったということだし、50%だと半分の店舗にしか商品が陳列されてないことになる。  
 (表1)の「カバー率」の数値を見ると、20商品のうち12商品は一桁である。つまり10店に1店も陳列していない商品が、20商品のうち12商品もあるのだ。逆にカバー率が一番高い商品でも第4位の44%に過ぎず、全体的にカバー率が非常に低い商品であることがわかる。これだときっと商品を買いに行っても、おそらく多くの商品は入手困難に違いない。少々、気が重い・・・。

今回、実際に購入できた紀文の4商品。本当に品揃えの少ない店舗が多い中、紀文の商品だけは、多くの店舗で陳列されていた。少なくても、スーパーでは圧倒的に強いと言えるだろう。

 中華まんじゅうの種類で見ると、TOP20の20商品中、7割に当たる14商品は「肉まん」(豚まん、肉まん入りの詰め合わせも含む)で、「あんまん」が4商品、「ピザまん」と「カレーまん」が1つずつとなっている。つまり圧倒的に「肉まん」の人気が高いのだ。
 着色した5メーカーの商品では、青の井村屋株式会社(三重県津市、以下井村屋)がTOP20の中に5商品がランクインで最も多く、次いで、赤の株式会社紀文食品(東京・中央区、以下紀文)が4商品をランクイン、オレンジ色の株式会社中村屋(東京・新宿区、以下中村屋)が2商品、緑の株式会社蓬莱本館(大阪市中央区、以下蓬莱)と、黄色の日本ハム株式会社(大阪市北区、以下日ハム)がそれぞれ1商品ずつランクインさせている。ただし、このランクイン商品数と実際のメーカー別の販売金額シェアは一致しておらず、メーカー別シェアの順位では、第1位から紀文、蓬莱、井村屋の順になっている。

こちらはランキング第4位の日ハムの商品。小さなまんじゅうが8個入っているのが見た目の最大の特徴。レンジでチンしたときの、生地のもっちり感はなかなか良かった。

 このデータを頭に入れて、少々気が重くなりながら売り場回りに出発。やはり先ほどの「カバー率」からの予想通り、どのスーパーの店舗にも、陳列されている商品は非常に少ない。記者が住むエリア10店のスーパーを見て回ったが、(表1)のTOP20商品の中で、実際に買うことができたのは、わずか6商品だった。しかもその6商品のうち4商品は紀文の商品(第2、3、10、13位、2つ上の写真)で、あとの2商品は第4位の日ハム(上写真)と第16位の農水フーヅ株式会社(山口県下関市、以下農水)の商品(下写真)である。

ランキング第16位の農水の商品。大きな「豚饅」の文字は、売り場でとても目立つ。

 売り場を見る限り、さすがメーカー別トップシェアの紀文というところなのだろうが、今回、第1位の蓬莱の商品はカバー率も30%以上あったにもかかわらず買えなかったのが残念である。また、“コンビニの肉まん・あんまん”で人気の井村屋や中村屋の商品も1つも入手できなかったのは意外だった。

イオンの店頭には、PB「トップバリュ」の中華まんじゅうばかりが、大量に陳列。他のスーパーでも、それぞれPBの商品は比較的多く見かけられた。

 また店舗によっては、置いてあるのはPB商品だけで、ナショナルブランドは1つも置いてないところも珍しくなかったし、置いてあっても“紀文だけ”というところも多かった。日本のスーパーマーケット最大手のイオンでも、陳列されていた「チルド中華まんじゅう」は同社のPB「トップバリュ」の商品だけ(上写真)で、他は一切置いてなかったのだ。

ランキング第1位の蓬莱は、大阪・難波の中華レストラン。店頭にも「豚まんの蓬莱本館」の文字が。

価格的にレベルが違う?!蓬莱本館と重慶飯店の中華まん

 今回は、トップ商品の『蓬莱 フレッシュ豚饅 3個 360G』が入手できなかったが、最後にこの商品についてご紹介したいと思う。この蓬莱というメーカーは、メーカー別シェアでも紀文に次いで第2位であることは既述のとおりだが、このメーカー、本業は大阪・難波の本格中華レストランである(上写真)。
 蓬莱本館の始まりは、終戦わずか2ヶ月後の1945年10月に誕生した「蓬莱食堂」。そして創業2年目に、「蓬莱の豚饅」が誕生し、現在までその味は受け継がれている。

蓬莱本館の通販サイトには、豚まんのほかにも、様々な点心類が並び、お得なセット商品などもある。

横浜中華街の入り口にある重慶飯店。店頭には、いつも名物の大きな肉まんを求めて、多くの観光客が列を作る。

 蓬莱のサイトには、豚饅をはじめ、各種点心が詰め合わされたセットなどの通販も行われている通販サイト(2つ上の写真)もあるので、気になる方はご利用してみてはいかがだろうか。今回のランキング表の中でも、第15位の『龍門商事 重慶飯店 肉まん 120G×3』(横浜中華街の名物の肉まんがある中華レストラン重慶飯店の肉まん)と並んで、値の張る商品でもあり、味も期待できそうである。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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