焼酎蔵の技術の粋を集めて作り上げた福岡初の和風クラフトジン『ジン 無銘』に込められた隠れた意図をメーカーに聞いた!

和風ジンの極め付けともいうべき個性派!

世界的にウイスキーの原酒が不足している。しかしその原酒の製造には長い年月がかかるために増産は難しい。そんな中、比較的短期間で製造できるところから注目を浴びているスピリッツがジンだ。そのフレーバー付けの自由度から国産クラフトジンが目下ブームに。そんな和ジンの中でひときわ異彩を放つのが『ジン 無銘』である。

ベーススピリッツにまろやかな米焼酎を使用し、さらに和のボタニカル素材で仕上げた日本人のためのクラフトジン!

オエノングループ福徳長酒類株式会社(千葉県松戸市)の『ジン 無銘』(700mlびん・希望小売価格 税抜3,000円・2018年3月20日発売)は、本格焼酎蔵の技術を使い、米焼酎をベーススピリッツに、柚子、玉露、桜葉、ホップ、和薄荷(ニホンハッカ)などの和ボタニカル素材を加えて生み出された、クラフトジンの中でも究極に和に寄り添ったジン。いったいどのような経緯で生み出されたのか、製造元の福徳長酒類株式会社に聞いてみた。

「本格焼酎は芋焼酎を中心とした焼酎ブームによって、 業界全体の規模が拡大し、現在も安定はしています。 しかしウイスキー、RTDが大きく伸張する中、注目度が薄れ、焼酎の若年層へのアプローチは不足していると感じていたんですね。
そこで、焼酎にもう一度目を向けてほしいという思いから、 長年温めていた本格焼酎原酒を活用したウイスキーやジンの 開発に取り組みました(ウイスキーは一昨年前に発売済み) 。
開発のバックグラウンドには、弊社は過去に洋酒製造の経験がある事、ボタニカルの取り扱いの豊富な知見をもつグループ会社を持つこと、グループ間で社員の人事交流がある事があげられます。 そういう意味では『ジン 無銘』は焼酎再発見のための入り口でもあるんです」

アルコール度数は40%

 

福徳長酒類株式会社は全国でも屈指の規模を誇る福岡・久留米工場を持つ。もちろんその現場には腕の良い職人たちが日々酒造りにいそしんでいる。そしてそこで作られる和のコンセプトにこだわったジンのベースに抜擢されたのは、日頃からなめらかでまろやかな口当たりに仕上げる技術で定評のある米焼酎だった。

「米焼酎は弊社が保有する本格焼酎の中で、 香りが最も穏やかで、なめらかな口あたりと余韻があります。 これならボタニカルの特長を損なわず、ともすれば荒々しくもある風味をやさしく包み込み、他にはないまろやかな風味を表現できると考えたのです」

通常ジンと言えば大麦、じゃがいも、ライ麦などを原料に蒸留させて作るのが一般的。そこをあえて米をベースにしたところが、芯から和のコンセプトをいっている。

 

 

今一度焼酎の魅力を再発見する入り口として開発された特殊な立ち位置の和ジン!

ジンは通常ネズの実(ジュニパーベリー※ジンの語源)を中心に、薬草成分を加えて完成される。この『ジン 無銘』もジンであるがゆえにジュニパーベリーは含まれる。そこにさらにコリアンダー、ビターオレンジピールなどの洋のボタニカルを加えて入るのも意外ではない。

しかしその先の玉露や桜葉、和薄荷(ニホンハッカ)となってくると話は違う。このボタニカルのセレクトは非常に大変だったのではないだろうか。

「絶対に使いたくないという素材はないんです。世の中のボタニカル(植物)は全て対象だったと言ってもいいくらい。それこそ数え切れないほどの素材を試しました。どうしてもこれは合わないと感じたのは、”クミンシード”でした。エスニックな香りが強く、目的の味わいから大きく外れてしまうので…。
基本のフレーバー以外で『ジン 無銘』のポイントになっているのは、シトラス(柑橘)系の香りを高める為の柚子、 後味に爽快感を出すためにごくわずがに隠し味として加えた“和薄荷”でしょうか。
でも、それもこれもまろやかな個性を出しているベースの本格米焼酎を味の決め手にするための引き立て役なんです」

 

『ジン 無銘』をおすすめのロックで飲んでみる!

焼酎の美味しさの再発見を促すための和風クラフトジンという、何とも不思議な立ち位置の『ジン 無銘』。これはもう飲んで確かめてみるしかないだろう。

 

 

飲み方はまずロックで。大きめの氷とともに、冷えた『ジン 無銘』をクイッと流し込む。複雑な香りだ。ジン特有のジュニパーベリーの香りはするのだけれど、確かにまろやかな口当たりは上質な米焼酎のそれである。それでいて柚子の香りがさらに和方向へとハンドルを切る。飲み込んだ時の薄荷感はさらに謎めいた味わいを醸し出す。

和洋折衷の極み。時代で言ったら大正時代? レトロでありつつ海外のエッセンスも取り入れたこの味わいは、斬新。単純なジンとして味わうにはもったいないというのが正直な感想だ。

これは新ジャンルの和ジンであり、上級焼酎特有のまろやかながら強烈なアルコール感もまた新感覚。念のため、トニックウォーターを使い、ジントニックを作ってみたが、これもジントニックと言われなければ、わからないくらい強烈な個性を醸し出している。個人的におすすめなのは炭酸割りか。苦味のある『ジン 無銘』の味わいに炭酸がさらにそれぞれのボタニカルを際立たせて、かなり複雑怪奇な味わいに。

確かにこれが米焼酎ベースだと言われると、改めて焼酎をしっかり味わいたい気持ちになるから不思議だ。もちろんメーカーの思惑通りなので、じゃっかん悔しいけれど、やはり気になる。

和風ジンが好きな人、きっちり酔いたい人、酒の味は冒険してなんぼと考える人におすすめ。入手は全国の酒販店で可能である。

 

 

公式サイトはこちら

記者

清水 りょういち

食レポからタバコ・コーヒーなどの体に悪い系、果てはIT、経済分野までフォローする新しもの好きライター。「わかりにくいをわかりやすく」がモットー。元「月刊歌謡曲/ゲッカヨ」編集長

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photo by 尹 哲郎

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