90歳(卒寿)を迎えた『キリンレモン』。昭和3年からずっと透明であり続けてきた元祖自然派ドリンクの歴史を知り、90年目の最新リニューアル版を飲む!

これを読んでいるほとんどの人より年上

1928年(昭和3年)に人工甘味料不使用・人工着色料不使用・無色透明の瓶という3つのこだわりとともに世間に登場したのが元祖自然派清涼飲料水『キリンレモン』。しかし卒寿を迎えてもなおリニューアルするという。歴史とともに今回のリニューアルに至る理由を探りたい。

日本の清涼飲料水のあけぼの〜ラムネからキリンレモン誕生まで〜

1853年に黒船来航、ペリーが運んできたのが縁日などで見かける「ラムネ」(語源はレモネードから)。これをもとにレモン水として日本でもラムネが登場し、明治19年(1886年)に大ブームとなる。そのきっかけは東京だけでも10万人が死亡した空前のコレラの大流行。”コレラに炭酸が効く”との風説からラムネ人気が大爆発することとなった。

生みの親の本城杢三氏。そのレシピはトップシークレット扱いだったとか

そんな世相を受け、昭和2年(1927年)に清涼飲料水開発のためキリンビールにスカウトされたのが本庄杢三氏。彼こそがキリンレモンの生みの親。独自レシピを作り出し、1928年(昭和3年)にキリンレモンは市場デビューを果たす。

これが初代キリンレモン!

90年前の1928年(昭和3年)と言ってもピンとこなくて当然。どのくらい昔かというと、その年は日本で初めて万人が参加できる第1回普通選挙(第16回衆議院議員総選挙)が行われた年で、ミッキーマウスが初めてお披露目された年。歴史の教科書なら張作霖(ちょうさくりん)が爆殺されて世界情勢が不安定になり、戦争の足音が聞こえてきた時代。ニューヨークで初めてテレビの定期放送が始まった、そんな時代に「キリンレモン」は産声をあげたのだ。

発売当時(1928年/昭和3年)のポスター

今でも画期的なのは、その時代に人工甘味料不使用・人工着色料不使用というこだわりの製法を取っていたこと。当時すでにあった透明炭酸清涼飲料水は、りんご風味の「三ツ矢サイダー」とレモン風味の「リボンシトロン」。そこにそうした自然派の柑橘系透明炭酸清涼飲料水として25銭で販売されることとなった。

発売当時のバックラベル

当時はラムネが1本2銭、アンパンが5銭という時代なので、まさに高級品。なのでそのまますぐヒット商品になることはなかった。

当時のラベルは当然右から読む

キャップはこんな感じ

広く使われていた人工甘味料チクロが問題になったことから、「キリンレモン」に追い風が吹く

1929年のポスター

今も昔も問題視されがちな人工甘味料。当時も安価で生産できることから広く使用されていた人工甘味料がチクロだ。米国で発がん性が指摘され、「チクロショック」として世間を騒がせると、日本の厚生省も使用禁止を通達。しかしもともと人工甘味料を使用していなかった「キリンレモン」は、高評価を受け、発売から45年かけて透明炭酸飲料ナンバー1の座に輝いたのである。

1936年のポスター

1937年(昭和12年)のポスター

 

自動販売機の登場で、清涼飲料水の普及が加速

1957年には日本に自動販売機が登場。キリンもまた自動販売機サービスに注目し、1963年に「キリンレモン」を広く知ってもらうために「自動販売サービス株式会社」(のちのキリンビバレッジ株式会社)を設立。200mlで30円の価格で、販売を開始する。第一号機は東京・浜松町に設置された。

1960年代当時の自販機

自販機用にびんも変更して発売された(写真は1965年のびん)

 

1967年にはイメージキャラクターを新設。「さわやかさん」の名称で抜擢された初代は「魅せられて」のジュディ・オング、5代目は近年2時間ドラマ女優としても名を馳せた片平なぎさが名を連ね、1979年にはCMソングとして竹内まりやの2ndシングル「ドリーム・オブ・ユー〜レモンライムの青い風〜」が流れた。

 

 

様々なリニューアルを経て、たどり着いた90年目の大リニューアル!

1961年にCMソングの巨匠・三木鶏郎(三木トリロー※他に「牛乳石鹸、良い石鹸」など)が生み出した「キリンレモンのうた」。時代とともに様々なアレンジがなされてきたが、第1弾として流れているのが、楽器を持たないガールズパンクバンド・BiSHによるアレンジバージョン「透明なままでゆけ。」(出演・佐久間由衣)。今後も様々なバージョンがリリースされるというから楽しみだ。

90年目リニューアルのコンセプトは「誕生時より受け継いだ誠実なものづくりの実現」。人工甘味料・着色料不使用はそのままに、保存料も不使用で、天然水を使用するこだわり。

さらに広島産瀬戸内レモンの果皮(ピール)を一晩かけて抽出したエキスを使用して、レモンの果実感を高めているという。

もっとわかりやすいのは見た目の変化。ペットボトルは一見ガラスびんに見える丸みのあるフォルムで、キリングループのシンボル・聖獣マークを大きくど真ん中に配置。この聖獣というのは首の長いキリンとは全くの別物で、中国の想像上の生物の麒麟(きりん)。ビール系ではおなじみだが、ソフトドリンクでこれだけズドンと存在するのは珍しい。

 

それでは長い歴史に思いを馳せながら、最新版を飲んでみよう!

キリンビバレッジ『キリンレモン』(450mlPET・希望小売価格 税抜140円・2018年4月10日発売)のキャップをひねると、峻烈なレモンの香りが飛び出してくる。ぐいっと飲むとなかなかの強炭酸がビリビリと舌を刺激する。控えめな甘さは砂糖が主体で自然な甘さ。酸味がふわっと広がって、天然水のすっきりした後味とともに、何とも言えない爽快感が生み出される。

大人の舌にもバッチリと合うキリッとした味わいのリニューアル。これは正しい進化ではないだろうか。もちろん取り立てて激しく主張する味わいではないが、長く飲み続けるためにはそうしたクセが強すぎるものは逆に飽きてしまいがち。質実剛健で悪目立ちしないすっきりドリンク。これぞ王道だろう。

公式サイトはこちら

記者

清水 りょういち

食レポからタバコ・コーヒーなどの体に悪い系、果てはIT、経済分野までフォローする新しもの好きライター。「わかりにくいをわかりやすく」がモットー。元「月刊歌謡曲/ゲッカヨ」編集長

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