[第62回]健康のために毎日食べたい「フルーツ入りヨーグルト」!アロエに強い森永乳業が明治の『ブルガリアヨーグルト』に挑む!出色は第8位の“あの商品”!

 COVID-19の世界的流行で、日常生活でも除菌・殺菌を意識することが多くなった。と同時に、自分の身体の“免疫力を高める”ことへの関心も高まっている。以前から美容と健康のために腸内環境を整える“腸活”はブームだったが、それに加え今では、免疫力という視点からも、“腸活”が注目されているようである。今回のテーマは、その“腸活”に有効なヨーグルトの中から、「フルーツ入りヨーグルト」を取り上げたい。

 『日経POS情報POS EYES』で「ヨーグルト」という大分類を調べてみると、「ドリンクヨーグルト」や「プレーンヨーグルト」、「ハードヨーグルト」といった小分類と共に「フルーツ入りヨーグルト」という小分類があり、さらにそれらはそれぞれ「低脂肪・無脂肪タイプ」にも分けられている。今回は、その小分類から、「フルーツ入りヨーグルト」と「フルーツ入りヨーグルト(低脂肪・無脂肪)」の2つのカテゴリーを合わせたものを、「フルーツ入りヨーグルト」として取り上げたいと思う。

 さっそく、この2つの小分類カテゴリーを『日経POS情報POS EYES』にセットして、2020年8月から2021年7月までの1年間、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータを使用し、販売金額によるランキングを作成したのが、上の(表1)である。上位20商品を、ランクインの商品数が多いメーカー3社に赤・青・緑で色分けし、「カバー率」が90%を超えている3商品の数値を赤で表示した。

ランキングTOP5の「フルーツ入りヨーグルト」。明治が3商品、森乳が2商品。アロエ入りが3商品、ベリー系が2商品である。

明治、森永乳業の“争い”に割って入る世界企業・ダノン

 ランクイン商品の数で見ると、株式会社明治(東京・中央区、以下明治)が8商品、森永乳業株式会社(東京・港区、以下森乳)が6商品、ダノンジャパン株式会社(東京・目黒区、以下ダノン)が4商品で、残る2商品は北海道乳業株式会社(北海道函館市、以下北乳)雪印メグミルク株式会社(東京・新宿区、以下雪印)がそれぞれ1商品ずつとなっているが、このデータをメーカー別で出力してみると、シェアトップ3は、1位明治、2位ダノン、3位森乳の順になっており、この3社だけが頭1つ抜け出している。
 この3社のランクイン商品をよく見ると、まず「平均価格」に1つの傾向が認められる。ランクインしている多くの商品は4個入りパックのタイプなのだが、その「平均価格」を見ると、明治の商品は約150円なのに対し、森乳の商品は約140円と10円程度安い。一方ダノンの商品は『ダノンビオ』ブランドは180円台後半とグッと高く、『ダノンヨーグルト』ブランドは100円台前半とグッと安いのである。

ランキング表の第6位から第10位の5商品。明治と森乳以外で唯一『フルーツサラダ』という商品が混ざっている(後列中央)が、この商品の詳細は後述する。

 また、明治と森乳の商品はそれぞれのトップが「アロエ入り」なのに対し、ダノンはランクイン4商品に「アロエ」入りはなく、すべていちごやブルーベリーなどのベリー系であるのも面白い。こうして見ると、明治と森乳は、何となくライバル関係で争っている感じがするが、外資系のダノンだけは、1人我が道を行っているようにも見える。売り場の様子を見ても、明治と森乳は競って売り場争いをしているように見えるが、ダノンだけは、そこから1歩離れたところで静観している風にも見える。そういう印象は、ダノンのパッケージデザインが、ヨーロッパ企業(ダノンはフランスに本社がある多国籍食品企業である)にありがちな大人っぽい落ち着いたムードを醸し出していることで、明治や森乳との違いが強められているようにも思える。

ダノンの『ダノンビオ』ブランドの商品。落ち着いた緑色のデザインは、他のメーカーの商品のデザインとは一線を画し、大人っぽい雰囲気を醸し出している。

“アロエに歴史あり”の「森乳」と“ヨーグルトに歴史あり”の「明治」

 (表1)に目を戻すと、第1位の森乳と第2位の明治の商品は、「金額シェア」ではどちらも4.0%の同スコアで並ぶほど僅差でトップ争いを演じている。そして第3位には再び森乳が着けているという状況なのだが、この第3位までの3商品は、いずれも「アロエ入り」の商品であることに注目したい。

ランキングTOP20に入っている「アロエ」商品はこの4商品。第1位~第3位に加え、第10位の『明治 プロビオヨーグルト LG21 アロエ 脂肪0 112G』(一番左)である。

 そもそもアロエが入ったヨーグルトと言うと、個人的には昔から森乳の「アロエ ヨーグルト」が目に浮かぶのだが、その歴史は意外と新しいのである。森乳のアロエヨーグルトのブランドサイトを見ると、初代の「アロエ ヨーグルト」誕生は1994年のことだったらしい(下写真)。まだ誕生してから27年しか経っていないのだ。ブランドサイトには「当時はアロエという食材をヨーグルトに入れることも、パッケージに緑色を使うことにも賛否両論あった」というようなストーリーも記されているが、このようにやはり「アロエ入り」となると、森乳に一日の長があるのか、(表1)でも森乳が僅差ながらも第1位と第3位をキープしている。

森乳の「アロエヨーグルトのブランドサイト」には、アロエヨーグルトのヒストリーという年表仕立てのページがある。当初は「素肌とカラダのために」がキャッチコピーだったのだ。

 それではこれらトップ3のアロエ入り商品、何が違うのだろう。実際に食べ比べてみた。まず第1位の森乳だけが「低脂肪」仕様になっており、1カップ(75g)当たりの脂質が0.7gで、第2位の明治は1カップ(75g)あたり1.2g、第3位の森乳は1カップ(80g)当たり1.8gより確かに脂質が少ない。その脂質の量の差は、食べ比べではほとんどわからないが、入っているアロエの量は、第3位の「アロエヨーグルト」だけが断然多いのは食べればすぐにわかる。ゴロゴロと大粒で入っていて、しかも歯応えもザクザクとしっかり。ヨーグルト自体の味の好みは、個人個人で微妙な差があるのかも知れないが、「アロエ」ということだけを見れば、第3位の圧勝だと言えるだろう。とはいえ、内容量当たりの単価で考えると、この第3位の元祖「アロエヨーグルト」は、第1位、第2位に比べ価格的には2倍近く高いのだから、アロエの量と質の差も頷ける。

入っているアロエの量も多く、粒も大きく、歯応えも素晴らしい、元祖の「アロエヨーグルト」。アロエ入りを食べるなら、やはりこれがダントツでいい。ただし値段は、4個パックの商品より2倍近く高い。

 第3位の商品の次にアロエが大きいのは、第2位の明治である。ただし歯応えはあまりなく、柔らかなフニャッとした感じである。第1位の商品に入っているアロエは、シャキシャキとはしているもののサイズは小さい。アロエを取る(第3位)か、低脂肪を取る(第1位)か、その中間(第2位)を取るか。それがこのトップ3の選択の分かれ目となるのだろう。
 ちなみに、TOP20にランクインしている森乳の5商品のうち、先の「アロエヨーグルト」以外の4商品は、すべて「低脂肪」仕様であるのに対し、明治は、ランクインしている4個パック入り商品は“通常”仕様で、1個売りの第10位、第12位、第13位の商品は「無脂肪」仕様の脂肪ゼロ商品であるのも対照的である。

どちらも明治の『プロビオ』ブランドのフルーツ入りヨーグルト。右が第10位、左が第13位である。どちらも「脂肪ゼロ」であることが最大の特長である。

 ところで「アロエ」ではトップを森乳に譲ったものの、日本のヨーグルトというと、やはり明治の『ブルガリアヨーグルト』ブランドに“一日の長”がある。売り場を見てもやはりその存在感の大きさはひと味違う(下写真)。『ブルガリアヨーグルト』のブランドサイトを見ると、明治が『ブルガリアヨーグルト』の前身となる「明治プレーンヨーグルト」を発売したのが1971年のこと。それが「明治ブルガリアヨーグルト」に名称変更をしたのが1973年なのだそうだ。この50年の歴史の強みなのか、同社は「プレーンヨーグルト」でも「ドリンクヨーグルト」でも圧倒的な強さを見せる。特に「ドリンクヨーグルト」分野での昨今の『R1(アールワン)』ブランドの強さは他社の追随を全く許さない。

どのスーパーでも、ヨーグルトコーナーでの『明治ブルガリアヨーグルト』の存在感は他社を圧している。ヨーグルト商品全体での、明治のシェアはダントツ1位である。

 ヨーグルトの歴史という意味では、ヨーロッパ生まれのダノンは、日本の会社とは比較にならないほどの重みを持っているのだろうが、今のところ、ヨーグルト全体の日本市場においては、明治、森永、雪印の後塵を拝している。

 

ハワイのホテルがお手本!? 北乳の「フルーツサラダ ヨーグルト」

 さて再度(表1)に目を戻してみよう。ランキングの第14位まで、ズラリと森乳、明治商品が居並ぶ中、第8位にポツンと孤高の商品が目立っている。メーカーは北海道函館市に本社がある北乳(前出)。他のランクイン商品のメーカーと比べても、その知名度は低い。とはいえ、堂々の第8位にランクイン。「カバー率」に至っては「94.9%」という高スコアで第2位である。おそらく多くの人はこの商品を見たことがあるかもしれないし、これだけ売れているのだから、ファンも多いのかも知れない。かくいう記者も、実はこの商品の大ファンである。この商品、今回のテーマである「フルーツ入りヨーグルト」と呼ぶのは、ちょっと筋違いの商品である。というのも、「フルーツ入りヨーグルト」というよりは「ヨーグルト入りフルーツ」に近いほど、フルーツの存在感が大きいからである。

ランキング第8位『北海乳業 フルーツサラダ ヨーグルト 130G』。どの売り場でも必ず見かけるので、多くの人は少なくとも見たことはあるだろう。この商品のフルーツの“実力”はハンパない!

 商品名にも「フルーツサラダ ヨーグルト」とヨーグルトが小さな文字でフルーツの文字の後ろに書かれている。あくまでメインはフルーツという姿勢が見えるのだ。それは下の写真を見れば一目瞭然だろう。本当にフルーツがゴロゴロと入っている。ぶどうなど、大きな実が丸ごとで2個だ。それにパインアップル2片に白桃にみかん2粒。

『北海乳業 フルーツサラダ ヨーグルト 130G』の中身を、皿に出してみた。このフルーツの大きさは、他のランクイン商品とは全く別世界である。目指しているところがまるで違うのである。

 北乳のサイトにある「フルーツサラダ ヨーグルト おいしさのひみつ」というコーナー(下写真)を見ると、この商品の誕生のきっかけは、同社の社長が1990年頃にハワイのホテルで食べたヨーグルトにあったとのこと。
「フレッシュフルーツをカットしたフルーツカクテルに、ヨーグルトを添えて食べる手作り感覚の贅沢なヨーグルト。『このおいしさを多くの人に届けたい』という想いから、大粒の果肉を主役にした商品開発に着手しました」ということだったというのだ。

北乳のこのブランドサイトには、まさに「おいしさのひみつ」が満載。興味ある方は、ぜひ覗いてみて欲しい。

 こうした経営者の想いが乗り移っている商品は強い。この『北海乳業 フルーツサラダ ヨーグルト 130G』のカップには、「手作り仕立てのおいしさ」という言葉が書かれているが、まさに“手作り感覚”の贅沢さに溢れたフルーツの盛りである。他商品と比べて、確かに価格も高いが、この1カップを添えた朝食は、それだけで満足感がグンとアップしそうである。
 冒頭に“腸活”ということを書いたが、昨今では、ヨーグルトに含まれる乳酸菌の種類や機能に注目した「栄養機能食品」や「機能性表示食品」、「特定保健食品」などが、この「フルーツ入りヨーグルト」にも登場してきた。そうした機能などにも注目しながら、自分に合ったヨーグルトを摂取し、健康的な腸環境と生活を実現していただきたいものである。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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