[第47回]「冷凍パスタ」は、ほぼ“3社独占”のマーケット。売れ筋TOP3とPB商品、食べ比べてみたら・・・。具の質と量に「冷凍パスタ」の進化が!

 夏の暑い最中に、長時間かけて「茹でる」という苦行から解放してくれる冷凍食品の存在はありがたい。普段、あまり冷凍食品を食べない記者の目にも、スーパーの冷凍食品のコ-ナーは、年々拡大しているように思える。特に野菜等の総菜や、昨今ではパスタの品揃えが随分と充実していることに驚かされる。今回のテーマは「冷凍パスタ」である。

 スーパーの「冷凍パスタ」売り場は、店舗によっては他の冷凍食品のコーナーから分かれて独立した棚を持つほど、大きくなりつつある。そこには実に多種多様な「冷凍パスタ」が陳列され、どれもがとても美味しそうに見えるのだ。

このスーパーでは、「パスタ」と表示して、他の冷凍食品とは別の独立した棚に「冷凍パスタ」を陳列していた。本当に目移りがするほど、いろいろな商品がある。

 そこで、いつものように『日経POS情報POS EYES』を使って、今の冷凍食品マーケットの状況を調べてみると、やはり予想通り、冷凍食品で一番売れているのは、「冷凍パスタ」であることがわかった。その結果が下の表である。

 大分類「冷凍総菜」の中には、この表では全部を表示していないが、実に40種類もの小分類カテゴリーがある。「冷凍パスタ」はその中で販売金額シェアがトップなのだ。なるほど売り場面積も大きいわけである。アイテム数も多く、多種多様な味付けの「冷凍パスタ」がある中で、今一番売れている商品は何なのか。今回は、販売金額ランキングTOP3の商品を1つずつ紹介しよう。

第3位『ニップン オーマイ プレミアム 
              彩々野菜 ペペロンチーノ 260G』

 使用したデータは、上の表と同じく、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集した2020年7月~2021年6月の1年間のPOSデータ。それを小分類「冷凍パスタ」カテゴリーで検索し、その販売金額によりランキングした。

紙トレー入りで、お皿が不要なのが、とても便利である。

見ての通り、野菜が豊富なうえに、エビ、輪切りの鷹の爪もしっかり入っている。食べてみると、ニンニクと赤唐辛子の味わいも手抜きなしである。

 売れ筋「冷凍パスタ」の第3位が上の写真の商品。この商品には本当に驚かされた。というか、普段食べないので余計に冷凍パスタの進化を痛烈に感じさせられたのである。この野菜のボリュームと種類の豊富さ。さらにしっかりとエビも入り、唐辛子の辛味、ニンニク味も効いていて、ちゃんと“ペペロンチーノしている”。
 メーカーは株式会社ニップン(東京・千代田区)。今年1月からこの社名になったが、それ以前の日本製粉株式会社である。ニップンは『オーマイ』ブランドのスパゲティが有名だが、この冷凍パスタにも『オーマイ』というブランド名を使用している。
 500Wの電子レンジで、わずか4分40秒、600Wなら4分ちょうどで、暑い思いもせず写真のような野菜たっぷりパスタが食べられる、しかも平均価格は218.1円足らずである。写真は、本当にレンジから出しただけの姿で、最初から紙トレーに入っているので、お皿を出す必要もなければ、食後に皿を洗う手間も要らない。これは意外にポイントが高い。記者は辛い方が好みなので、これに軽く唐辛子をふって、エキストラバージンオイルを垂らして、十分に満足のいく食事ができた。

第2位『日清食品冷凍 もちっと生パスタ 
           牛挽肉とまいたけのクリーミーボロネーゼ 295G』

ボロネーゼには、ソースの絡みがいい平打ち麺がいい。

写真下の方の麺は、くっついてしまっていて、ソーズが絡まないのが残念。

 ボロネーゼは冷凍パスタの定番メニューの1つだろう。第2位日清食品冷凍株式会社(大阪市淀川区)『もちっと生パスタ』ブランドのボロネーゼである。この商品のいい点は、パスタに平打ち麺のタリアテッレを使用していること。やはりボロネーゼは、こうあって欲しい。他社の商品で、ボロネーゼで通常のスパゲティ麺を使用し、ソースの味も加わって、ただのミートソースになってしまっている商品もあった。一方こちらの商品はソースに「北海道産生クリーム使用」しているが、これは少々好みが分かれるところかもしれない。個人的には、この生クリームはない方がいい。 
 さて肝心のタリアテッレだが、もっちりとした生パスタが売りのブランドだけあって、本当に歯応えもっちりだが、しつこい感じはなく好感が持てた。さすがに小麦の風味を感じるのは難しいが、平均価格161.8円にそこまで求めるのは酷というものだろう。
 この商品は、袋ごとレンジでチンして、皿に盛りつける必要がある。麺のボリュームがあるからが、500Wで約6分、600Wだと約5分ほど時間がかかる。

参考商品『トップバリュー 生パスタ 
             牛ひき肉と香味野菜の風味 クリーミーボロネーゼ』

 ちなみに「冷凍パスタ」市場をメーカー別に見ると、ほぼ3社独占状態で、それに自社開発商品(PB)が加わる。「3社」とは、既出のニップン、日清食品冷凍、それに日清フーズ株式会社(東京・千代田区)。勘違いしがちなのは、日清食品冷凍は日清食品グループ、日清フーズは日清製粉グループで、この両社は資本関係も何もない全くの別会社であるということ。

製造所は2カ所あり、どちらも香川県坂出市。讃岐うどんの本場だから、麺がうどんっぽいのか?!

うどん食感!?のフィットチーネ。まいたけが大きくて食べ応えあり。

 今回、売り場巡りの中で、大手スーパー・イオンのPB『トップバリュー』で、上記第2位の商品と同様の平打ち麺のボロネーゼで、しかもクリーミーソースを使用した冷凍パスタを見つけたので、比較参考のために購入し食べてみた(上写真)。
 麺はフィットチーネで、タリアテッレとさほど差は無いが、その食感が上記第2位の商品の麺とは明らかに違った。ちょっと表現は悪いが、こちらのPB商品のフィットチーネは「うどん」のようである。PBだけあって、購入価格が税別148円と格安だが、麺の食感は、日清食品冷凍の『もちっと生パスタ』が上だ。そのかわり、この『トップバリュー』のボロネーゼは、まいたけの水煮が大きくて歯応えも良く、その点は評価できる。ただいずれにせよ、記者はこの価格のパスタで、あまり厳密に味や歯応えの比較はしたいとは思わないし、そこまでの期待をしない。ある程度の味で、安く手軽に食べられれば十分で、ほんのひと手間加えれば、その味もかなり向上させることも可能である。チーズやパセリ、バジル、エキストラバージンオイル、黒こしょう、唐辛子などを用意しておけば、格段に美味しくすることができるのだ。

第1位『日清F ママー ザパスタ 
            ソテースパゲティ ナポリタン 290G』

 ナポリタンも「冷凍パスタ」の定番メニューである。日本人は本当にナポリタンが好きなようで、ナポリタンの商品は非常に多い。しかも個人的には安い「冷凍パスタ」にはナポリタンは向いていると思う。というのも、茹でたスパゲティに熱を加えるナポリタンは、あまり麺の質に神経質にならなくてもいいからだ。

第1位の商品。ナポリタンには“当たりはずれ”が少ないように感じる。

良くも悪くも『ママー』の味である。ピーマンとソーセージの大きさはGOODである。

 というわけで、これだけ多種多様な「冷凍パスタ」で、今最も売れているのが、この『日清フーズ ママー ザパスタ』ブランドのナポリタンという結果になった。同社の『ママー』ブランドのスパゲティ同様、ある意味、日本人には最も“慣れ”のある食感のパスタで、麺自体には特に感想はないが、写真でわかるように、ピーマンとソーセージがしっかり存在感をアピールしていて、そこに濃厚なケチャップとたまねぎの風味が絡んで、いい味わいに仕上がっている。
 記者は今回、生に近いスクランブルエッグの上に盛って、タバスコをひと振りしていただいたが、これで200円しない平均価格なら大満足である。レンジは500Wで約5分20秒、600Wで約4分40秒である。

 最後に、今回のランキングTOP20の表を上に掲載した。一目でわかるのは、本当に3社独占であること。これにPB商品を加えると、それだけで市場シェア99%を超すのである。また価格は、おおむね200円前後。こんなに安く、簡単お手軽で、いろいろなパスタを楽しめる「冷凍パスタ」の世界。この夏は、少し試すことが増えそうな予感である。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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