売れてると評判の煙を出さない焼肉コンロ『カセットガス・スモークレス焼肉グリル “やきまる”』の実力を検証

おいしく焼けなければ煙が出なくても意味がないから、これ!

 

部屋を汚す煙を発生させなければ家で焼肉ができる。そうしたらどんなに経済的で楽しい焼肉タイムが待っていることか、夢想する人は少なくない。なので煙対策を謳った焼肉コンロ製品はそこそこ存在するが、うまく焼けなかったりのストレスも多い。しかし目下大評判を呼んでいるのが『カセットガス・スモークレス焼肉グリル “やきまる”』。これは美味しく焼けるのに煙が最小限なんだとか。これは試さないと。

“家でゆっくり経済的に焼肉がしたい! でも煙が…”という民衆の叫びに応えるスモークレスな焼肉マシン!

 

岩谷産業株式会社(東京都港区)といえば、1930年創業の超老舗。産業ガス事業を幅広く手がける会社だが、やっぱり民衆としておなじみなのは不思議な名前のカセットコンロ「カセットフー」の存在。ちなみにフーはフランス語で炎を表す単語なので、タネを明かせばそんなに謎ではないのだけれど。

気軽に購入できる価格設定とカセット式ガスボンベの組み合わせは、手軽さの極み。ホースもコードもないから設置場所も自由自在。近年はホットプレートなどはもっぱら電気式だが、レンジと同時に使用してブレーカーが落ちる、本物の炎を使用するガスの方が美味しく食べられる(特に焼き物)というメリットがあり、肝心なときにボンベが無いという不便もありつつ、ついつい使ってしまう人も多いのでは?

通常のカセットコンロよりもひと回り小さい。

 

中でも焼肉は、カセットコンロの方がホットプレートよりも美味しく仕上がりやすいのはどうしても否めない現実。ただ味を追求すると部屋が汚れる。そう、本物の火を使用することによって、部屋中に煙を撒き散らすことになる。記者も何度か試して壁から何から全てが焼肉臭くなるという事象は体験済み。さらに電気式ホットプレートで煙対策を施された機種の何とも言えない満たされない焼き加減も。

幅303×奥行278×高149㎜/プレートサイズ直径233mm/約2.0㎏。1〜2名で楽しむのに適したサイズ。

 

つまり煙さえ出なければ、味の面ではガス最強なのだ。焼肉店で電気式の店がないように、火を使った鉄板で焼くのが美味しく仕上げる最大要素である。そこでこの『カセットガス・スモークレス焼肉グリル “やきまる”』(CB-SLG-1・実勢価格 税込約7,000円・2016年8月29日発売)の出番となる。これは昨年の発売機種ながら「自宅で煙を気にせずに焼肉店気分が味わえる」と大ヒットしている商品である。

こんな感じで、本当に煙が出なくなるの!?

 

その特徴は何と言っても煙の発生を極限まで抑え込んでいるところ。見た目的にはコンロ部分が特殊な溝を刻んだ鉄板になっている以外は普通のカセットコンロ。使用するのもおなじみのオレンジ色の缶「イワタニカセットガス」。それでいて煙を出しにくいとはどういうことか。

おなじみのオレンジ色のあいつ。

 

まさにアイコス式! 焼き面を約210~250℃にコントロールして煙化を防ぐプレート

 

カセットガスを収納する部分は通常製品と同じだが、バーナー部分は奥の方に設置されている。その上に水を入れた水皿をセットして、鉄板でできている焼き肉プレートを設置すれば準備完了。

ボンベ装着はマグネット式。基本的に純正品である「イワタニカセットガス」を使用すること(法律上も特定ボンベを使用することになっている)。やはりガスという性質上、予想外のトラブルを起こさないためにもメーカーが予測しているボンベを使う方が安心感があると記者は思う。

さらに安心なのは、ボンベが必要以上に過熱した時に自動的にボンベが外れてガスが止まる「圧力感知安全装置」の搭載。ガス=爆発と連想してしまう人にとってはこの仕組みがうれしい。ちなみに「イワタニカセットガス」1本で約3時間半の使用が可能なので、不足することは滅多に無いだろう。これは煙を出さないために火自体が弱めに設定してあるため。通常の「カセットフー」では2時間弱で無くなることを考えると余裕がある。

 

 

ただ火力が弱い分、構造として熱がこもりやすくできているので、トップの鉄板は焼肉時の煙を出しにくい最適温度の約210~250℃をきっちりキープしてくれる。温度が下がりすぎては美味しくないし、高まれば煙でもうもうとなる。美味しくてなおかつ煙の出にくいのがその温度なのだそう。小さなボディーでこんな調整をしてくれるとはすごい。

 

 

ちなみに世間で大ブームを巻き起こしている煙の出ない「アイコス」「グロー」などの加熱式たばこも同レベルの温度をキープして、タバコ葉を燃やさずに煙を発生させないようにしている(使用者が吐き出しているのは蒸気)。

 

さらに脂を確実に水皿に誘導して煙を出さない鉄板のスリット。ややこしい溝には意味がある!

一定温度に鉄板温度をキープしても、肉から滲み出た脂が煙を発生させようとする。その時に役立つのがこのアーティスティックに刻まれた鉄板のスリット。

スリットを流れた脂は穴に入り、さらに裏面突起で作られた隙間から水皿へと脂を落とす。

要は脂を何が何でもバーナーの火に近づけないシステム。

 

バーナーの火の方へ脂がいこうとしても約7mmの壁でブロックする。単純な構造なのだが、これで煙ブロック性能は格段にアップするというわけ。

 

それでいて直火焼きだから、肉の美味しさは焼肉店並みのクオリティーに!

 

火は弱火で遠火という仕組みではあるけれど、鉄板を介しているので直火焼きの良さが楽しめるのがこの”やきまる”を最強にしているポイント。今までの煙ブロックの仕組みがうまく機能しても美味しくなくては意味がない。それでは実際に使ってみて、その味と煙の出具合を確認してみたい。

 

これはもう立派な焼肉店気分! しっかり美味しくこんがり焼けるのに煙が出ない奇妙な体験!

後から水を入れても、先に入れてからでもOK。

 

ボンベをセットしたら、水を入れた水皿をセット。そしてスリットの入った鉄板をその上にセット。器具せんつまみをカチッとするまで回す。

ボディー中央に覗き窓があるので、点火を確認できる。基本的には火力調整はしない。

 

やきまるのプレートの大きさは約23.3cmなので、1〜2名で楽しむのが最適か。記者は夫婦で試してみたのだが、適量と感じた。4人家族くらいになると焼き面争奪戦になってしまうかもしれない。

鉄板はすぐにあったまるので、肉をのせる。すると小気味いい”じゅー“の音が。これは焼肉店の音ではないか。

しかし不思議なことに煙が出ない。

アメリカ産牛カルビ、黒毛和牛もも肉、ラム肉などを次々のせても煙が出ない。なのに焼けていくミステリー。

というか、肉の表面に湯気が出る。しかし程なく順調にこんがりと肉は焼けていく。軽く縁の部分を焦がしつつ、中心は完全に火が通り切らないレアという状態が実現可能。これはホットプレートではなかなか望めない焼き加減。

せっかくなのでタレは叙々苑のものを用意した。これなら純粋に焼肉店との味の差をわかりやすいと思ったからだ。食べてみる。絶品。カルビなどは安価な焼肉店で頼むと脂が多く、あっという間に火がついたりもするが、”やきまる”はそんな無粋なことはしない。ただ強力に脂が多い肉は多少脂がはねた。

調子に乗って、半分以上白い豚バラ肉ものせてみた。それでも一瞬煙が見えた気がしたが、やはり煙は発生しない。しかも玉ねぎやピーマンなどの野菜もしっかり焦げ目がつく焼き上がり。狐につままれたようだが、美味しい。焼肉店でも焼き網の端っこは焼かれないことが多いが、”やきまる”は全面開放。どこで焼いてもきっちり焼ける。同じ鉄板でもフライパンで焼くのより圧倒的に美味しい。これは焼肉ならではの味。

とはいえ穴の空いている位置より下にすると脂がはけなくなってしまうので注意。と、ここで少しだけ煙が発生した。30〜40分くらい過ぎた頃だ。中の水皿が蒸発してしまったのかと思い、付属の取っ手を使って鉄板を持ち上げ内部を見たが、水はある。鉄板を戻して再度よくよく観察してみると、トップの鉄板が汚れてしまい、肉の断片などから発生しているようだ。なるほど、ならば表面をティッシュで拭き取ってきれいにしてみる。すると復活。またしてもスモークレス焼肉が続行できた。実際、取扱説明書にも「プレートの上で食材が固着すると、こげによって煙の発生が増えることがあります」と書いてあった。

つまりこれは、焼肉店でしばらくすると店員がやってくれる焦げ付いた焼き網の”交換”タイミングなんだなと気付く。なるほど、ならばこの焼き用の鉄板プレートがもう一枚欲しい。せっかく取っ手まで付属しているのだから、焼肉店のように丸ごと交換してしまいたいもの。別売でもいいから、発売を望みたい。

付属するプレート用の取っ手。

 

もちろん肉だけでなく、魚介類も焼ける。ただ直径約23.3cmに収まる範囲となるので、サンマなどの長い魚は持て余してしまうので、カットして焼かなくてはならない。

 

煙さんとバイバイ! それで結局、家焼肉で部屋は汚れなかったのか?

 

結論を言えば、煙はほとんどなかったのだが、それなりに焼肉の匂いは充満した。ただ煙のようにこびりつく感じではないので換気をしっかりすれば、かなり匂いは低減できる。ただリビングルームなどでソファやカーペットなどの布製品が多い場合は結構厄介。というのも防げない脂はねは多少出るから。

 

野菜から立ち上る蒸気。

 

床も多少ペタペタしたので、フローリングで事後に水拭きなどできる場所だと完璧。細かく言えばそうした掃除作業はあるけれど、焼き加減最高での家焼肉が可能なんだから、そのくらい我慢できる人も多いだろう。同様に本体の掃除はきつい油汚れなので大変だ。

 

 

もちろんコードもホースもいらないカセット式がゆえに、外に持ち出すのも楽々。庭で使うのは後始末の面でも大変有利。キャンプなどのアウトドアでも使えるが、大勢で、となると一台ではとてもまかないきれないので複数台必要。ただ大方のキャンプ用品の中では安い部類だと思うので、各自揃えてもいいのではないか。

 

 

煙もうもうの紙巻きタバコが、アイコスやグロー、プルーム・テックなどの加熱式たばこになって煙を発生しなくなったように、『カセットガス・スモークレス焼肉グリル “やきまる”』でカセット式コンロも本格的に煙を出さない時代に突入したようだ。生産が追いつかないほど売れているというのも、実際に使ってみてよくわかった。家焼肉は果てしなく楽しい!

 

 

オススメ度:(絶対におすすめ)
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記者

清水 りょういち

食レポからタバコ・コーヒーなどの体に悪い系、果てはIT、経済分野までフォローする新しもの好きライター。「わかりにくいをわかりやすく」がモットー。元「月刊歌謡曲/ゲッカヨ」編集長

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photo by 尹 哲郎

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