[第69回]「ビスケット・クッキー」の販売ランキングは、“個数”と”金額”ではトップが異なる!CMに見る、そのターゲットの違い。TOP20でただ1つ“異質”な商品とは?!

 この記事が公開される頃は、ワルシャワで開催中のショパン国際ピアノコンクールの二次予選が終わっている頃だろうか。不思議な偶然というのは起きるもので、記者はついさきほどまで、その一次予選で、あるピアニストの演奏を聴いていた。まさか、その人物が、本稿にこれから登場するとも知らずに。『日経POSランキング』、今回のテーマは、「ビスケット・クッキー」である。

 まず『日経POS情報POS EYES』の商品分類で、「ビスケット・クッキー」というカテゴリーで検索し販売状況を調べよう。データは、直近の1年間、すなわち2020年10月から2021年9月の期間で、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータである。果たして何が売れているのだろうか?

「販売個数」第1位は、ブルボンのルマンド!

 具体的なランキングや商品の話に入る前に、ビスケットとクッキーの話を少しだけしておきたい。ビスケットとクッキーは何が違うのかわかるだろうか。この点については、株式会社ロッテ(東京・新宿区)のサイト内にある「ビスケットの豆知識」というコーナーに詳しい。その説明を要約すると、「ビスケットとクッキーは本来同じものだが、日本では区別する傾向がある。糖分と脂肪分の合計が40%以上で、なおかつ手作り風の外観を持つものはクッキーと呼んでもいいという業界ルールのようなもの」ということになる。感覚的に解釈すると、“バターの風味がより強く、見た目にも手作り風で高級そうなお菓子が日本ではクッキーと呼ばれる“というところだろうか。

誰でもきっと食べたことがあるだろうブルボンの「ルマンド」。「販売個数」で第1位の商品である。

 話を戻そう。『日経POS情報POS EYES』で、「ビスケット・クッキー」の直近1年間の販売状況を調べると、「販売個数」では第1位が株式会社ブルボン(新潟県柏崎市、以下ブルボン)『ブルボン ルマンド 12本』(上写真)である。このお菓子の発売開始は1974年。まもなく50周年を迎えるロングセラー商品なのだ。昨今では、「贅沢ルマンド」や「ミニルマンド」、「ひとくちルマンド」、さらに「ルマンドアイス」も出て、全部ひっくるめて「ルマンドシリーズ」などとも呼ばれている。そして新しいルマンドシリーズのテレビCM(下動画)では、ピアニストでYouTuberの角野隼斗さんの作曲したオリジナル曲が、彼の演奏で流れるのである。記者はテレビを持たないので、そのCMを見たことがないが、冒頭に書いた「あるピアニスト」とは、この角野隼斗さんのことである。 

 これまで一度も食べたことのない人は、おそらくいないのではないだろうか。その思わせるくらい、『ブルボン ルマンド』はポピュラーなお菓子で、「販売個数」で1番売れているというのは、それだけ数多く国民に浸透しているということである。
 さて、「販売個数」での第1位はわかったが、今度は「販売金額」で見ると、何が売れているのだろうか。その「販売金額」によるランキングTOP20を示したのが下の(表1)である。今回は、「販売個数」のシェアも一緒に掲載しているので、それも一緒に見比べてみて欲しい。

「販売金額」第1位は、子育てファミリーがターゲット!?

 この(表1)を見てわかるとおり、さきほど「販売個数」が第1位であると紹介した『ブルボン ルマンド』は、「販売金額」では第5位に位置している。それに対し、表では、商品名を伏せているが、「販売金額」第1位の商品は、「販売個数」でも第2位であることがわかる。これはかなり強力な商品である。さて、この商品、みなさんは見当がつくだろうか。この商品は、記者の経験から言うと、子どもたちにとても人気があり、そのため子育てファミリーにも根強い人気がある商品なのである。その点、もう少し大人層を意識したブルボンの多くの商品とはターゲッティングがかなり異なる。

 (表1)のランキング第1位の商品、正解は、株式会社不二家(東京・文京区、以下不二家)『不二家 カントリーマアム バニラ&ココア 20枚』(下写真)である。

現在サイト上に紹介されているだけでも、期間限定品なども含め15種類という豊富なバリエーションを持つ『不二家 カントリーマアム』。写真の商品が最もベーシックな商品である。

 商品名やパッケージのイラストから想像がつくように、この『不二家 カントリーマアム』のモチーフは、アメリカの郊外に住むお母さんが子どものために焼いた手作りクッキーにあると、同社のサイトには説明がある。発売開始は1984年なので、『ブルボン ルマンド』に遅れること10年ということになる。こうした開発の経緯などを踏まえてか、テレビCMも、やはり子育てファミリー(特に母と子)をイメージしたもの(下動画)となっている。このCMの作りの違いを見ても、先に紹介したブルボンとのターゲットの違いは明白である。

メーカーの上位3社の三者三様の戦略

 さてもう一度、(表1)に目を戻そう。全体的に青の部分が目立っている。そして次が緑、そしてピンクだ。青はブルボンの商品、緑が森永製菓株式会社(東京・港区、以下森永)の商品、ピンクが不二家の商品である。そして、メーカー別の販売金額シェアも、この順、つまり第1位ブルボン、第2位森永、第3位不二家となっている。
 この3社、ブルボンと不二家については、狙っているターゲットの違いを感じるという話は既述のとおりだが、それではその間で第2位になっている森永のターゲットはどうなのだろう。(表1)を見ると森永の商品で最上位なのは、第4位の『森永 ムーンライト クッキー 2枚×7』、その次が第6位の『森永 チョコチップクッキー 2枚×6』である(下写真)。そこで、この両商品を同社のブランドサイトで調べてみると、どちらの商品の説明にも「子供から大人までどなたでも、サクッと手軽にしあわせな気持ちになれるクッキーです」という文言が書かれている。パッケージのデザインを見ても、まさに子供にも大人にもウケそうなスクエアーな雰囲気が漂っている。

特に奇をてらったこともせず、売り場でも特に目立つわけでも無く普通に存在している森永のクッキーたち(左が第2位、右は第6位)だが、同社のお菓子はさりげなくよく売れている。

 これだけのことで全てを語るのは乱暴ではあるが、あえて簡潔に言えば、「不二家は子供狙い、ブルボンは大人狙い、森永は全部狙い」という三者三様のターゲット設定が見えてくる。実際は、そんな小難しいことを言わなくても、何となく子供たちのおやつに出すなら『カントリーマアム』、大人同士のティータイムなら『ブルボン』、誰にでも万能な『森永』というように、多くのお母さんたちは感覚的に買い分けているようにも見える。

1つだけ性質が異なる『マルセイバターサンド』

 最後になるが、(表1)の20商品の中で、ただ1つだけ他とは趣きを異にする商品がある。それが第2位の『六花亭 マルセイバターサンド 5個』(下写真)である。表のデータでも、販売金額では第2位ではあるが、販売個数ではそれほど上位には入らない。つまり価格が高いのである。パッと見、「平均価格」は、他の商品の3倍~6倍にもなる。そして「カバー率」が圧倒的に低い。あまり多くのスーパーには置いてない商品なのだ。案の定、記者も今回、この商品を売り場で見つけることはできなかった。

ランキング第2位の『六花亭 マルセイバターサンド』。名前を聞いてもわからなかったが、この写真を見て、「ああ、これね!」と記者も納得。記者の住所の近所のスーパーでは見かけることがなかった。

 しかし、上の写真を見て、この商品、「ああ、食べたことがある」と思った人は多いことだろう。なぜなら、北海道土産としては、かなり有名な商品であるうえに、ちょっとレトロ感のある個性的なパッケージと、バターの風味が濃いレーズンバターの味はかなり印象に残りやすいからだ。また包装紙の表に書かれた文字列「バ成タ」から、「バナリタ」という愛称でも呼ばれている商品である。
 メーカーは、北海道帯広市に本社を置く六花亭製菓株式会社(以下、六花亭)。同社サイトによると、「北米産小麦粉でつくった2枚のビスケットの間に、ホワイトチョコレートと北海道産生乳100%のバターとカリフォルニア州産のレーズンをあわせたクリームをサンドしている」お菓子で、1977年の発売開始である。レトロな包装紙のデザインは、それもそのはずで、発売当時のデザインを復刻・再デザインしたものであるらしい。

(表1)にランクインしている、ブルボン、森永、不二家、六花亭以外の4商品。今回は特に触れなかったが、この4商品も、どれもよく知られた商品である。

 この『六花亭 マルセイバターサンド』、北海道産の商品でありながら、首都圏、中京、中国、四国エリアでは販売シェアがトップになっているのも面白い。逆に北海道のスーパーには、そもそも商品を卸していないのだろうか。全く売っていないようである。いずれにしても、このように、(表1)の商品のなかにあって、この商品はただ1つ性格が違う商品なのである。逆に他の商品は、季節商品や期間限定商品などを別にすれば、どれを取っても「カバー率」が非常に高く、ほぼどのスーパーでも手に入る名の知れた商品ばかり。味などについては、ぜひ各自お試しになって欲しい。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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