[第56回]女性の使用頻度が高い「汗拭きシート」は女性用が2倍も値段が高い!?そもそも男性、女性の区別は必要?女性消費者は納得して買っているのか?

 暑い夏の日。オフィスから一歩外に出ると、汗が吹き出す。朝、シャワーを浴びたのに、また昼にはシャワーを浴びたくなる。そんなときに重宝するのが、今回のテーマである「汗拭きシート」だ。いつものように「何が売れているのか」ランキング表を作成し、商品を買いに売り場に出向き、商品を手に取ってみて“妙なこと”に気が付いた。

圧倒的に強い花王!追うマンダム

 わきの下の発汗予防や汗の臭いの予防にパウダースプレーをひと吹き。あるいはロールオンタイプの液体をひと塗り。このようなタイプの汗対策商品は、『日経POS情報POS EYES』では、「制汗・デオドラント剤」に分類されている。それに対し、今回のテーマである「汗拭きシート」の類いは、分類名も「汗拭きシート」。この両者は、大分類「エチケット用品」の中の小分類では、販売金額で1位と2位で競っている。もう少し詳しく言うと、夏真っ盛りには「汗拭きシート」が1位になるが、それ以外の季節では「制汗・デオドラント剤」が1位を取り戻す。つまり「制汗・デオドラント剤」は、比較的通年で使用されるのに対し、「汗拭きシート」は完全に夏に特化した季節商品で、夏には急激に売れるが、秋以降はガクンと売上げが落ちるのである。そして1年を通した販売金額を見ると、両者ほぼ互角。やや「制汗・デオドラント剤」が売れているといった状況なのだ。

汗やニオイ対策のトップ3は、「タオルやハンカチ」「制汗剤」「汗ふきシート・ボディシート」で、特に女性の使用頻度が高いのが「汗ふきシート・ボディシート」である。(2019インテージ調べ「汗とニオイ対策調査」より)

 8月は季節商品「汗拭きシート」の販売真っ盛りの季節である。そこでいつもなら、直近1年間の販売金額ランキングを作成するところだが、今回は季節商品なので、直近1ヶ月間の販売金額ランキングを作ってみた。データの期間は2021年7月。日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータから、小分類「汗拭きシート」で検索し、商品の販売金額により作成したランキング表が下の(表1)である。第12位、第16位、第18位が2つずつあるのは、「金額シェア」も「千人当り金額」(表には掲載していない)も同値だったために同順位としたからである。

 まず一見してすぐにわかるのは、20位までほぼすべて花王株式会社(東京・中央区)株式会社マンダム(大阪市中央区)で占められていること。両社以外は第16位の大王製紙株式会社(東京・千代田区)と第20位の株式会社資生堂(東京・中央区)の2商品だけである。また(表1)だけでは、花王とマンダムは互角の争いにも見えるが、「メーカー別」に出力してみると、実は販売シェアは花王の圧勝で、第2位のマンダムは花王のシェアの半分にも満たないし、第3位の資生堂はさらにマンダムの3分の1にも満たない状況なのである。

男性用の「汗拭きシート」売り場。『メンズビオレ』と『ギャツビー』ばかりが棚に並ぶ。

 表の一番右の「カバー率」を見ると、ここでも花王の圧倒的な強さがわかる。カバー率が50%を超えている商品は、すべて花王の『ビオレ』ブランドである。実際の売り場を見ても、花王商品はどこにでもある。特に女性用商品となると、花王しか置いてないスーパーも珍しくないほどだ。男性用でも見かけるのは花王の『メンズビオレ』とマンダムの『ギャツビー』ばかり(上写真)第16位の『大王 エリエール フォーメン ドデカシート スーパークール 徳用 30枚』は、結局、どこの売り場にも見つけることはできなかった。

ランキングTOP3の商品は、いずれも花王の商品で、すべて女性用である。右の第3位の賞品は、「汗拭きシート」というよりもタオルのサイズ。首に掛けられることが売りになっている。

知ってる?花王の女性用「汗拭きシート」は2倍高い!

 次に、表の色分けに注目して欲しい。今回の色分けの意味に気が付いただろうか。実は、赤は女性用として販売されている「汗拭きシート」、青は男性用として販売されているもの、そして緑は男性女性を問わない“ジェンダーレス”の商品である。花王では、女性用のブランドが『ビオレ』、男性用ブランドは『メンズ ビオレ』、マンダムの商品では、男性用ブランドが『ギャツビー』なのに対し、女性用ブランドは『ハッピーデオ』となっている。第16位の大王製紙の『エリエール』ブランドには、「フォーメン」という男性用を示す名称が使われ、ただ1つ性別が分からなかった第20位の資生堂『シーブリーズ』はブランドサイトから、若者向けで男女を問わないブランド・コンセプトであることを確認した。

こちらはランキング第4位(中央)、第6位(左)、第7位(右)の商品で、『メンズ ビオレ』が1つに、『ギャツビー』が2つである。これらが男性用商品のTOP3ということになる。

 さて、そこで記者は冒頭に書いた”妙なこと”に気が付いたのである。今回もまずは売り場に出向き、女性用トップ3と男性用トップ3と、ジェンダーレス1商品の計7商品を購入したのだが、女性用3商品と男性用3商品では、大きさと重さがまるで違うのである(下写真)。レジに持って行くとき、女性用の3商品は片手でヒョイと持てたのに、男性用の商品は厚く、ずっしりと重いために片手では持てなかったのだ。そしてそのあと価格を確認。すると、驚いたことに軽くて量が少ない女性用の方が価格が高いではないか。

左が女性用のTOP3を重ねたところ。右は男性用TOP3を重ねたところ。これだけ量が違う。男性用の方が断然大きく、ずっしりと重い。これで値段は女性用の方が高いとなると、普通は「?」という気持ちになるだろう。

 もう少し細かく検証してみよう。まずシートの枚数である。(表1)の赤い欄の女性用商品に入っている「汗拭きシート」の枚数を単純に平均すると17.8枚、一方男性用は31.8枚となる。ただ、女性用商品にはシートの使用目的の違いなどで第3位は5枚とか、第18位は3枚といった極端に少ない商品もあるので、それを除いて平均をとると21.7枚となる。つまり男性用商品の3分の2しか入っていないわけだ。ここでさらに細かくチェックすると、同じ女性用商品でも、マンダムの2商品(第14位と第18位)は、男性用と変わらず36枚入りとなっている。つまり女性用のシート枚数が少ないのは花王商品だけなのである。そこで、花王の女性用商品で、なおかつ第3位と第18位の2商品を除いた5商品の平均枚数をとると16枚ちょうどとなる。これは男性用商品の平均枚数の31.8枚のほぼ半分でしかない。しかもこの花王の5商品の「平均価格」の平均は290.8円で、男性用10商品の「平均価格」の平均の284.7円よりも高いのである。つまり、それらのことをすべて勘案すると、花王の女性用の「汗拭きシート」は、他商品のほぼ2倍値段が高いということになる。
 ちなみに、(表1)内で唯一のジェンダーレス商品である第20位『資生堂 シーブリーズ フェイス&ボディシート せっけん 30枚』のコスパを計算してみると、枚数が30枚で「平均価格」が388.1円なので、はかったかのように上記女性用・男性用の中間で、やや男性商品に近いあたりに位置する。

資生堂『シーブリーズ』ブランドは、男女の区別のないジェンダーレス商品。シンプルなデザインも中性的だが、店舗では女性用の売り場に置かれていることが多かったので、男性は手に取りにくい。

女性消費者は納得して購入しているのだろうか?

 誤解なきように最後に一言付け加えたい。本稿は、花王の女性用の「汗拭きシート」だけが割高であることを批判しているのではない。本稿ではあえて触れないが、当然、女性用商品と男性用商品との間には、多少の成分の違いもあることだろうし、それが価格に反映しているだろうことも想像は付く。実際、花王の女性用商品には、他にはない「ヒアルロン酸」が成分として入っている。これにどれほどの効果があり、それがどう価格に反映しているのかは、記者にはわからない。しかし、今のこの時代に、ある意味夏の必需品でもある「汗拭きシート」という商品で、ことさら男女の区別をする必要があるのだろうか

花王『メンズ ビオレ』のブランドサイトより。「洗顔シートは、外出先での男性のスキンケアにとても便利なアイテム」とあるが、女性にも同様に便利なアイテムではないのか?

 女性用と男性用では香りの違いもあるが、ランキングの第2位、第3位の女性用商品は「無香性」である。またTOP20商品でも人気の高い「石けんの香り」は、『シーブリーズ』のブランドサイトの言葉を借りれば、「男女問わない永遠の定番」の香りだということだ。香りなど、男女関係なく、自分の好みで選べばいいことだろう。男性向けと女性向けの違いの1つには、シートの大きさということも挙げられる。しかし、これも男女の問題ではなく、使う目的に合わせて、例えば大・中・小とかL・M・Sとでもして選べばいいだけのことではないのか。

ジェンダーレスの資生堂『シーブリーズ』のブランドサイトには、男女の若者たちが「汗拭きシート」を使うシーンが普通に描かれており自然な感じがする。

 実際、資生堂『シーブリーズ』ブランドは、若者向けとはいえ男女問わないコンセプトで出しているわけだし、マンダムも男女でブランドを分けてはいるものの、内容量や価格には差を設けていないようである。ところが花王だけが女性用商品と男性用商品を別物として扱い、そこに2倍もの価格差を設けている。では本当に2倍のお金を払うだけの差異が、そこにはあるのだろうか。そして何よりそのことを女性消費者は理解し、納得しているのだろうか。本稿はそこの問題提起をしたいだけのことである。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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