[第54回]プルーンやレーズン以外の「その他ドライフルーツ」は何が売れてる?美容と健康にいいため人気急上昇中のデーツは?輪切りの●●●も売り場にたくさん!

 今回のテーマは「その他ドライフルーツ」である。実は前回の「お好み焼きミックス」の記事の下調べをしていたときに、『オタフクソース』で有名なオタフクソース株式会社(広島市西区)が、あるドライフルーツを取り扱っていることを発見し、それが今回のテーマ選びの決め手となった。その“あるドライフルーツ”とは「デーツ」という果実である。ご存じだろうか。

 そもそも「なぜソースメーカーがドライフルーツを売っているのか」。そう思って調べてみると、まずオタフクソースが販売しているドライフルーツは、ただ1種類、それが「デーツ」で他には特に扱っていないことがわかった。オタフクソースでは、あの独特の甘味を持つソースの原料に、この「デーツ」を40年以上も使い続けているのである。いわば、「デーツ」のプロなのだ。だからこそ、同社では、それを「ドライフルーツ」として売るようになったわけなのである。

これがオタフクソースが販売する「デーツ」。後述するが、訳あってスーパーでなかなか見つからなかったのである。

 それでは、このオタフクソースのデーツ。果たしてどれくらい売れているのだろう。次なる疑問はそこだった。さっそく『日経POS情報POS EYES』を使い、「ドライフルーツ」の販売状況を調べ、その結果に驚かされた。まず大分類で「ドライフルーツ」を検索。するとその下に4つの小分類すなわち、「プルーン」、「レーズン」、「果物・野菜チップ」そして「その他ドライフルーツ」がある。探している「デーツ」は、「その他ドライフルーツ」の中だろうと思い、さらに小分類「その他ドライフルーツ」で検索。データは、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集した、2020年8月から2021年7月までの1年間のPOSデータを使用。そして結果をランキング表にまとめたものが、下の(表1)である。順位は金額シェアにより決め、同値の場合は「千人当り金額」(表には掲載していない)の多寡で決め、さらにそれも同値の時は同順位とした。

 (表1)の中でオタフクソースが販売するデーツはどこにあるのか。探したがなかなか見つけられなかった。というのも、まさか表の一番上にあるとは思ってもみなかったからである。

 そういうわけで、なんと「その他ドライフルーツ」販売金額ランキング第1位は、『オタフク デーツ 150G』なのである。売れてるんだ!これ。しかもこの商品、値段が結構高い。150G入りで平均価格約790円。同じ150G入りでも、第2位のドライマンゴーは平均価格が半分以下。なので個数シェアではこちらの方が上に位置している。第3位のレモンは、わずか25g入りなので、単価的にはこちらの方がオタフクデーツよりも高く付くものの、販売価格が100円台と安いこともあり、個数シェアでは、この商品が第1位でもある。さらに第4位は、第1位と同じデーツだが単価では半分くらい。ここまで見ただけでも、何となく統一感がなく、比べにくい雰囲気を感じるランキング表である。「その他」という寄せ集め的なものだから仕方がないのだろうか。

ここはドライフルーツの品揃えが豊富なスーパーだったが、そのほとんどがPBである。

 この比べにくい雰囲気は表の右端の「カバー率」にも表れている。これを見ると全体的にカバー率1ケタ台の商品が多く、なかなか商品を買い集める事は難しそうであるが、その中に、第3位の商品や第12位の2つの商品のように、ポツンポツンとカバー率の高い商品もある。これはどういうことだろうと思いつつ、まずは“現場百遍”、何より売り場巡りを開始した。

お菓子コーナー、中華材料コーナー、さらに
   「??????コーナー」に分散されて陳列!見つからない!

 さて、あちこちのスーパーを訪ね歩くと、やはり予想通り、商品がまるで揃わない。ランキングTOP20の商品がほとんど見当たらないのである。ちなみにこの「その他ドライフルーツ」のPOSデータを、メーカー別に出力してみると、シェアトップが自社開発商品(PB)で、しかもダントツである。確かに各スーパーにPB商品は多く陳列されている(上写真)。しかし、PB商品は、このランキング表には表示されないので、売り場で見つけられないのは、まあ当然でもある。とはいえ、さきほども指摘したが、カバー率がある程度高い第3位や第12位の商品が見つけられないのはおかしい。そして何より、カバー率でも34.8%ある第1位のオタフクデーツが見つからないのも何とも悔しいではないか。

あまり多くを扱っていない店舗では、ナッツや珍味類と一緒に混ざってドライフルーツが売られている。

 そこで、ランキング表をもう一度、よくよくチェックしてみると、不思議なことに気が付いた。カバー率の高い第3位の1商品と第12位の2商品、合わせて3商品は、他に比べ価格が極端に安いこと、そして内容量も極端に少ないことだ。しかもメーカー名やブランド名を見ると、「ライオン菓子」とか「SB 菜館」とある。「ライオン菓子」は、その名のとおりお菓子のコーナーではないのか。「SB菜館」って、あの有名な中華材料の「SB菜館」ではないのか。そう気が付いて、もう1度スーパーに戻り、売り場を見直すことに。そうすると、「ありました、ありました」。なんと、ライオン菓子の2つの商品は、グミ・キャンディーのコーナーに、そしてSB菜館は、やはり中華材料のコーナーにそれぞれ陳列されていたのだ。ちなみに、他の多くの商品は「珍味」とか「ナッツ」のコーナーのあたりに「ドライフルーツ」というコーナーがあり、そこに陳列されていた。しかし、それでもまだ見つからないのは、あの第1位の「オタフク デーツ」なのである。

上段の中央に、ランキング第3位の商品発見。なんとグミやキャンディーの棚にあった!

 この「オタフクデーツ」は、カバー率も34.8%とそこそこ高い。全く見つからないのはおかしい。何より第1位の商品である。しかも記者は系列の異なる10店舗のスーパーを見て回っているのである。そこで、あるスーパーで店員さんに聞いてみたところ、「どこかで見たなあ」と言いながら、あちこち探してくれて、少し時間がかかった末に見つけてくれたのである。陳列されていた場所は、なんと「手作りお菓子」のコーナー(下写真)。どうりで見つけられなかったわけである。その後、2つの店舗でも、「手作りお菓子」のコーナーで、「オタフクデーツ」を無事発見。

「手作りお菓子」コーナーの片隅にひっそり、第1位の『オタフク デーツ』。まわりは、ベーキングパウダーやドライイースト、ケーキ用のリキュールやエッセンスなどが。

 このようなわけで、今回は、同じランキング表の中の商品なのに、あるものは「珍味・ナッツ」のコーナーに、あるものは「グミ・キャンディー」のコーナーに、そしてあるものは「手作りお菓子」のコーナーにバラバラに分散されて陳列されているという、初めての出来事に遭遇したのであった。

第10位『共立 フルーツミックス 徳用 170G』。共立食品株式会社(東京・台東区)がレーズン、パイン、パパイヤ、クランベリー、マンゴーの5種類のフルーツを輸入し、加工・販売。砂糖や着色料、漂白剤などが使用されている。

多く見かけたのは、ミックスフルーツ、デーツ、マンゴーよりも、
     実は、輪切りの●●●だった!

 さて、もう一度(表1)に目を戻すと、実はいつもと違う色分けが施されている。いつもはメーカー別にしているが、今回は、フルーツの種類別である。一番多い緑色は「ミックスフルーツ」。商品名では第6位のように「詰合せ」だったり、第14位のように特にミックスの記載がなかったり、第20位のように「アソート」となっていたりと、いろいろあるが、すべてメーカーサイトでミックスフルーツ商品であることを確認している。そしてこのミックスフルーツに次いで多いのが、オレンジ色の「デーツ」と黄色の「マンゴー」である。

左:第17位、中央:第5位、右はランキングにはないPB『トップバリュ』の商品。いずれもマンゴーのドライフルーツだが、右の『トップバリュ』の商品だけは、砂糖も入っていない素材のままの商品。

レモンのドライフルーツ2種。左:第3位、右はランキングにはないPB『トップバリュ』の商品。どちらもグミのようでとても美味しいが、砂糖その他、いろいろと入っている。

 この色分け結果を実際に売り場で見た印象と合わせて考えてみると、確かにミックスフルーツやデーツ、マンゴーは売り場にも多かったが、少なくとも記者が見た10店舗では、デーツよりはマンゴーの方がずっと多く置かれている印象がある。またそれらミックスフルーツ、デーツ、マンゴーよりも、もっと多く売り場にあったのが実は「輪切りのレモン」だった。PB商品がメーカー別はシェアトップであることは先にも書いたが、そのPB商品に「輪切りのレモン」が多かったからなのだろうか。

このスーパーでは、写真のように輪切りのレモンのドライフルーツが大量に置かれていた。

 例えば、ランキング表の第12位に、『南信州菓子工房 輪切りレモン 40G』という商品があるが、このメーカー南信州菓子工房株式会社(長野県下伊那郡)は、国産のフルーツを使用したドライフルーツを数多く製造しており、その種類はレモンを中心にした柑橘類や、リンゴが多いようである。記者が住む長野の地元大手スーパーでは、この南信州菓子工房が製造するPB商品をたくさん陳列しており、そこにレモンのドライフルーツが大量に置かれている(上写真)。さらにPBといえばイオンの『トップバリュ』が“全国区”で有名だが、その『トップバリュ』の「輪切りレモン」も、この南信州菓子工房の製造だったのだ(下写真)。

『トップバリュ』の「輪切りレモン」。左下の製造所に、「南信州菓子工房」の名がある。

 今回のように、PB商品がメーカー別シェアのトップになると、このように各地域の特殊性によって、おそらく店に多く置かれるドライフルーツの種類も異なるのだろうと思われる。そうした地元やPBならではの商品を見つけ、それを消費するのも、ドライフルーツの楽しみ方なのかもしれない。
 

健康食としては、砂糖などを加えない
    素材のままの商品を選ぶのが筋だ!

 食の安全や健康への意識が高まり続けている昨今だが、「ドライフルーツ」という食品は、ミネラルや食物繊維を多く摂れる食品であるため、そうした健康志向に乗って人気が高まっている。しかも果物を干して水分を飛ばすことから、甘みや味が濃縮され、美味しく食べられることも、人気の背景にはあるだろう。
 これまでは、ドライフルーツには、砂糖や香料、着色料など何かしらの添加物が加えられ、より口当たりのいい商品が多かったが、この頃は、このような健康志向から、原材料の果物に何も加えず、素材のままで作るドライフルーツが人気を集めている
 今回記者が入手してきた10商品のパッケージを見ると、5商品には砂糖やブドウ糖などの甘味、着色料などが添加されているが、残る5商品は、素材だけを原材料として製造されている。なかでも、3種類を購入したデーツは、どれも素材だけで作られている。

デーツ3商品。中央:第1位、左:第4位、右は株式会社エスエルジャパンが輸入する、トルコ産のデーツ。中央の『オタフク デーツ』のみマジョール種で粒が大きく、品質も高い印象だが、値段もそれなりに高い。

 デーツは、「なつめやし」の実のことで、古代より中東の砂漠の民に食されてきた健康食品である。以前より健康・美容意識の高い女性に人気のプルーンやレーズンよりも、デーツの方が食物繊維やミネラルなどの成分を豊富に含むため、近年、急速に人気が高まっているドライフルーツなのである(下表参照)。

オタフクソースのデーツの商品ページにあるデーツの栄養素の比較表。同社では、1975年以来、オタフクソースの甘みを出す原料としてデーツを使用している。

 一口にデーツと言っても、その種類はいろいろで、最も大きく甘みの強いマジョール種のデーツが、“デーツの王様”と言われている。また同じマジョールデーツでも、中東方面産のものとアメリカ産のマジョールデーツがあり、アメリカ産の方が水分が多く食べやすいというのは、記者の個人的な好みである。
 今回入手したデーツの3商品は、サウジアラビア産、チュニジア産、トルコ産と、いずれも中東方面のデーツであり、第1位の『オタフク デーツ』だけがマジョール種で粒が断然大きく、種も入っている(下写真参照)。

粒の大きさを見て欲しい。真ん中の『オタフク デーツ』だけがサウジアラビア産のマジョール種で粒が断然大きい。味は各人の好み。いずれも砂糖などを加えず、素材のみで加工されている。

 いつものように、味自体には好みがあるので、本稿ではとやかく言う気はないが、ドライフルーツは、フルーツが持っている本来の甘みだけで十分だと記者には思える。またどれを食べても、フルーツは魅力的な味わいで、ついついたくさん食べてしまいがちだ。そう考えると、砂糖に漬けたり、砂糖をまぶしたり、さらに香料だの着色料だのを加えている商品は、健康食としてはいかがなものだろうという気持ちもある。健康にいいから食べるというのなら、そうした添加物のない、素材そのままのドライフルーツを選ぶのが筋が通った選び方ではないだろうか。そうしたことも頭に入れつつ、地元で手に入るドライフルーツをいろいろと食べ比べてみると面白そうである。今回購入した商品も食べ比べてみると、意外と味には非常に大きな差があるもの。自分の好みのドライフルーツをぜひ見つけてはいかがだろうか。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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