[第46回]老舗・中田が「梅干し」メーカーの横綱!その中田が作る“あのPB商品”が侮れない!脂肪を燃やす「バニリン」でも注目のダイエット食品「梅干し」!

 今回のテーマは「梅干し」。漬物としては、第16回で「キムチ」を扱っているが、それ以来である。「梅干し」と聞いて、そのメーカーが頭に浮かぶ人がいるだろうか。各地域の地元産や自社開発商品(以下PB)が多く売られている印象があるが、実際はどうなのだろう。さっそく『日経POS情報POS EYES』を使って調べてみた。

 いつものように日本経済新聞社が、全国のスーパーから独自に収集したPOSデータを使用。データの期間を2020年7月~2021年6月の直近1年間に設定して、まず商品分類「漬物」で検索すると、そこにはさらに31個もの小分類が存在する。

 その中で、上の(表1)からもわかるように、最も売れている漬物は「キムチ・朝鮮漬」で、以下、「梅干し」、「たくあん」と続く。この「キムチ・朝鮮漬」「梅干し」「たくあん」が、“3大漬物“と言うべきもので、以前はトップの「キムチ」を扱ったので、今回は「梅干し」を調べてみることにしたわけである。

梅干しのメーカー、知っている会社が1つもない!

 さて(表1)と同じデータで、今度は小分類「梅干し」を検索し、販売金額によるランキングまとめたのが下の(表2)である。まずひと目でこれまで扱ってきた商品と全く様子が違うことがわかる。というのは、表中の「金額シェア」の数字である。

 第1位の商品ですら、その値は1.8%に過ぎない。そして第2位は第1位と同率。さらに0.1%差で第3位、0.1%差で第4位という具合に、トップから非常に小さなシェアで、なおかつ僅差で順位が決まっていく。「金額シェア」が同率の場合は、「千人当り金額」の多寡により順位を決め、それも同一の場合は同順位として表を作成している。
 ちなみに「千人当り金額」とは、「千人の客が来店したときに、その商品がいくら売れたかを示す数値のこと」で、地域や店舗の規模などに関係なく、商品の売れ行きを計ることができる数値である。
 「金額シェア」がこれだけ分散するということは、消費者が商品を選ぶ以前に、地域や店舗により品揃えが分散していることが考えられ、それが証拠に表中の「カバー率」も、いくつかの商品を除いては10%もいかない状況である。また、同データで「メーカー別」の販売状況を調べてみると、トップシェアこそ中田食品株式会社(和歌山県田辺市、以下中田)だが、案の定、2番手は自社開発商品(PB)で、3番手に株式会社トノハタ(和歌山県日高郡、以下トノハタ)と続く。これまで数多くの商品を扱ってきたが、メーカー別シェアで、PBより上位が1社しかなかったことは記憶にない。この「カバー率」の高さ、PBのシェアの高さなどからも、「梅干し」マーケットには、強力なナショナルブランド商品が少なく、種々雑多な商品が乱立し分散している状況が想像できるだろう。
 さて(表2)に目を戻そう。TOP20の中で、中田の商品(表中、薄紫色の部分)が11個を占める。次いでトノハタの商品(表中、黄色の部分)が3個、ほかに数社の商品が存在するが、これらのメーカー名を読者の皆さんはご存じだろうか。残念ながら記者はどれも全く知らなかった。ランキングに掲載されたメーカー名を1社も知らないのも、今回が初めてのこと。そこで今回は、上位に名を連ねている、トノハタ、中田、そしてPB商品を中心に調べてみた。

写真は南高梅。トノハタのサイト内にある「梅の知識」のページから。「皮が薄く、種が小さく、果肉がやわらかい南高梅は、和歌山県のみなべが発祥の地です」との説明がある。

脂肪を燃やす!?バニリンが豊富な紀州梅

 商品別ランキングの第1位『トノハタ 南高梅 しそ漬味 110G』のメーカー、トノハタの本社は和歌山県日高郡みなべ町にある。このみなべ町からお隣りの田辺市にかけてのエリア(下のマップ参照)は、紀州産の最高級品「南高梅」(上写真)の名産地。和歌山県は全国の梅の収穫量の65%を占める一大産地だが、その中心地が、このみなべ町や田辺市なのである。ちなみに、メーカー別シェアトップの中田の本社も、このエリアの和歌山県田辺市にある。

 この第1位『トノハタ 南高梅 しそ漬味 110G』のパッケージを見ると、「梅バニリンを調べて見よう!」とか「梅バニリン406μg/100g」など、「バニリン」という聞き慣れない言葉が目立つ。これは一体何のことなのか。ダイエットに関心の高い人ならすでにご存じかもしれないが、この「バニリン」という物質は、「脂肪を燃焼させる作用」が期待できる成分で、紀州梅には多く含まれているということなのである(下グラフ参照)。

『紀州梅効能研究会』のサイトに掲載されているグラフ。バニリンを多く含む紀州梅を週3回以上食べる人のBMI値は低くなっている。

 トノハタは、上のグラフやデータの出典である『紀州梅効能研究会』の参加企業であり、しかも同研究会のサイトを見ると、この『紀州梅効能研究会』は、トノハタ本社と同一住所でもあるため、ただの参加企業というよりも“主催”企業とでも言うべき立場なのかもしれない。いずれにせよ、トノハタは、紀州梅の美味しさや健康への効用、梅に含まれる「バニリン」の脂肪燃焼効果などをより多くの人に知ってもらうことで、「梅」から広がる食文化を伝えたいようである。

商品ランキング第1位の『トノハタ 南高梅 しそ漬味 110G』。パッケージに巻かれた帯や、パッケージ裏のラベルには、バニリンやリグナンの含有量などについての記載がしっかりとある。

 梅干しには、このバニリンの他にも、「リグナン」という植物ポリフェノールの一種である成分が含まれており、先の『紀州梅効能研究会』のサイトによれば、「抗腫瘍活性・抗酸化活性・抗肥満活性など様々な機能性が報告されており、ヒト健康に有効な成分として注目」されているということらしい。
 いずれにせよ、梅干しは日本の伝統的な食べ物で、長い時間食べ続けられてきているので、その安全性に心配はなく、非常にヘルシーな食べ物であることも間違いない。納豆と同様に、これからも機会があるたびに注目される食品である。

アイテム数でも流通でも“横綱相撲”の老舗「中田食品」

中田食品株式会社のサイトの会社概要のページより。

 次は、商品ランキング第2位から第17位までに11商品もランクインさせている、トップシェアメーカーの中田である。本社が和歌山県田辺市という南高梅の産地であることは前述したとおりだが、この会社は、上の一覧のように一般流通部門を担う営業部が、本社の他に、札幌、東京、大阪、福岡と全国に配置されている。さすがに、唯一、PBを上回ったシェアを持つメーカーだけのことはある。(表2)の右端の欄「カバー率」も、この中田の第2位、第3位の商品のみが、「30%前後」と頭抜けていることもうなずける。

中田食品のサイトには、「梅ぼし田舎漬ヒストリー」という、この商品の誕生秘話などが詳細に記されたページがある。

 創業が明治30年(1897年)なので、すでに創業120年を超える老舗メーカーである。シェアトップメーカーらしく、販売アイテム数も135品と2位トノハタの85品に大きく水を開けている。多くのアイテムがある中で、同社の主力商品は、『紀州梅ぼし田舎漬』というもの(上写真)。

『梅ぼし田舎漬』は梅の粒のサイズが選べる。その参考のために、写真入りで梅のサイズが掲載されている。

 「梅ぼし田舎漬ヒストリー」サイトにある写真を見ると、確かに「ふんわかと大粒の梅」で見るからに品質が良く美味しそうで、しかも小粒から特大粒まで4種類の梅サイズ(上写真)が選べるようである。
 同サイトによると、まだスーパーマーケットのない1967年に誕生したこともあり、早くから通信販売を手掛け、現在は公式オンラインショップでの販売も行っている。スーパーへの出荷がどれほどなのかはわからないが、今回のランキングデータでも、第22位に『紀州梅ぼし 田舎漬』の600Gの商品がランクインしている。スケールメリットにより、この600G、あるいは1KGくらいの商品であれば、ランキング第1位のトノハタの商品を買うのと比べ、単価ではさほど変わらない程度になる。

ランキング第2位(左)と第3位(右)の中田の商品。これらは中田の商品ではあるが、梅は中国産で、価格も安い。パッケージのラベルには「大粒」の文字が見える。

 この中田の定番商品『紀州梅ぼし田舎漬』と見比べると、今回(表2)のランキング第2位、第3位の商品『中田 豊熟梅』(上写真)は、どうしてもやや貧弱に見えてしまうのは記者だけではないだろう。もちろん、先の『中田 紀州梅ぼし 田舎漬』とは大きな価格差もあるので、同じ土俵で比較はできないことはわかっている。とはいえ、例えば上の商品写真を見るとパッケージには「大粒」の文字が記されているが、記者が実際に測定すると、1粒の大きさはせいぜい直径23mm~28mm程度である。先にお見せした同社が掲載する『紀州梅ぼし田舎漬』の粒のサイズの基準からすれば、小粒よりもさらに小さい粒なのに、「大粒」と表示していることになる。

 アイテム数が多い中田の商品の中でも、この第2位、第3位の商品は最も安い方の商品で、第1位のトノハタの商品と比べても、グラム単価だと半額に迫るほど安い。よってこの商品を以て何かを語ることはできないが、売れ筋の第1位の第2位の間にも、いろいろな違いがあることがわかるというもの。今回は取り上げないが、中田の商品に関しては、もう少し上の価格帯の商品も次の機会では是非取り上げてみたい。

西友のPBに垣間見た中田の実力の片鱗

 ところが、である。この中田の実力の片鱗を少しだけ垣間見ることができる商品を、今回、スーパーの売り場で見つけることができたのである。
 冒頭に書いたとおり、「梅干し」市場には強力なナショナルブランドがなく、PBが販売きんがくシェアの2位になっているため、記者は今回、各スーパーの売り場でPB商品に注目し、その内容や製造者をチェックしていたのだ。

イオンのPB『トップバリュー』のパッケージに記載されていた製造所。記者が今回見つけたのは、この写真の3カ所だった。そのうちの1カ所は「トノハタ」である。

 スーパーのPBといえば、やはりイオンの『トップバリュー』が有名だが、今回記者が調べた『トップバリュー』の3商品は、それぞれ和歌山のメーカー製(1つはトノハタ)で、すべて梅の原産国は中国だった(上写真)。またイオン以外のスーパーには、AJS(オール日本スーパーマーケット協会グループ)のPB『くらし良好』の商品も陳列されていたが、こちらは梅の原産国も製造元も中国で、こちらは種を抜いた状態で販売される商品だったため、粒の直径は計れなかった。

左がランキング第2位の『中田 豊熟梅 しそ風味 180G』、右は同じ中田が製造する西友のPB商品『和歌山県産 紀州南高梅 しそ 115G』。パッと見、粒の大きさが全然違う。

 PBは、お買い得な価格の実現が1つの目的でもあるため、やはり梅の原産国や製造が中国なのは仕方がないのだろうと諦めかけていたところ、最後に西友で見つけた商品(上写真)が、紀州産の梅を使用し、しかも中田が製造するPB商品だったのである。
 上の写真の右側の商品、これが西友のPBの1つ、『みなさまのお墨付き』の梅干しである。商品名は『和歌山県産 紀州南高梅 しそ 115G』である。同じシリーズでは、ちょうど中田の『豊熟梅』シリーズに対応するかのように、「しそ」以外にも「はちみつ」と「うす塩」もある。見るからに粒も大きく、計ってみると直径が34mm~42mm程度ある。先に紹介した中田の定番商品『紀州梅ぼし田舎漬』の中粒から大粒に匹敵する大きさである。価格的には、PB商品にもかかわらず、ランキング第1位の『トノハタ 南高梅 しそ漬味 110G』と同程度とやや高め。おそらく西友のPBなので、入手しやすさという点では一番だろう。また同じ西友の『皆様のお墨付き』ブランドで、中国産の梅を使用し、トノハタが製造する商品もあったが、今回はその商品は購入していない。

今回食べ比べをした3種類の梅干し。どれがどれかは、あえて書かないが、ここまで記事を読み、写真を見れば、答えは想像できるだろう。

 さて、最後に「味の話」である。いつものように、これに関しては個人の主観があることなので、あまり強く何かを言うことは避けたい。今回は第1位、第2位、そして今紹介した西友の『みなさまのお墨付き しそ』の、3つのしそ風味の梅干しを食べ比べてみた。一言だけ記者の感想を言うと、第1位のトノハタの商品は、少し酢の味がキツい。記者は酢が苦手なので、酢の味には敏感なのだ。ただ梅肉自体の味は、一番まろやかで塩味も穏やかだった。第2位の中田の商品は、しその味がややわざとらしく(後から取って付けたような感じ)感じられたが、梅干し自体の味は良かった。塩味がやや強い感じもした。西友のPB商品は、前の2商品の中間的なイメージ。塩味もキツくなく、酢っぽさも少ない。梅の味は濃くてしっかり。味について、甲乙を付けることはしないが、興味ある人は、ぜひ実際に食べ比べてみて欲しい。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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