[第41回]データに見る「アイスクリーム」消費の今と「アイスバー」ランキングTOP20。あなたは知ってる?「●永」、「●下」という老舗アイスメーカー?

《サックリまとめ》

・レギュラーアイスには12種類もの小分類がある!

・小分類アイスバーで圧倒的に強い『グリコ パピコ』!

・アイスバーで、江崎グリコ、赤城、ロッテ、森永乳業の次は、「●永」、「●下」?

 アイスクリームの消費は、夏休みの7,8月をピークに夏場が中心であることは、今も昔も変わらない。とはいえ、ここ数年の月別の支出金額の推移を見ると、7,8月の支出は天候に左右されるのに対し、それ以外の月の支出は、季節にも天候にも左右されずに確実に伸びている(一般社団法人日本アイスクリーム協会のサイトのデータによる)。今回のテーマは「アイスクリーム」。「アイスバーのTOP20」や、その他、今売れている「アイスクリーム」、さらに地味に売れてる老舗アイスメーカーなど、データを中心に紹介したい。

 下のグラフは、「この10年のアイスクリーム支出と、その食料費に対する比率の推移」を表している。これを見ると右肩上がりなのが一目瞭然だ。つまりアイスクリームへの支出も、その食料費に占める割合も年々増加している。しかも先に書いたとおり、支出はいまや季節を問わないとなると、「アイスクリーム」という商品は、いまや夏の季節商品というよりは、むしろ年間を通して消費されるデザートの地位を占めつつあるといえるだろう。

 その「支出金額の季節格差」を示したのが下の表だが、これを見ると、ここ数年の支出金額の比率は、おおむね4月~9月の上期が「2」に対し、10月~3月の下期は「1」。アイスクリーム好きの記者宅の家計簿でも、アイスクリーム支出自体は一般世帯平均よりかなり大きいものの、夏冬の2対1という比率は、ほぼ一致する。いずれにせよ、今年もこれからが「アイスクリーム」シーズン本番である。さっそくいつものように『日経POS情報POS EYES』を使ってデータマイニングといこう。

レギュラーアイス全体のトップは『森永 チョコモナカジャンボ』

  まず『日経POS情報POS EYES』で「アイスクリーム」に該当しそうなデータ分類を見ると、大分類に「レギュラーアイス」と「プレミアムアイス」の2種類がある。プレミアムアイスは、もうほぼ『ハーゲンダッツ』一色の世界である。例えば、日本経済新聞社が今年5月の1ヶ月間、全国のスーパーから独自に収集のデータでも、プレミアムアイスのメーカー別シェアの91%はハーゲンダッツジャパンが占めているのだ。これではランキングしても、ほとんど意味をなさないので、今回は「プレミアムアイス」はパス。
 そこで次に「レギュラーアイス」の中身をチェック。同じデータで「メーカー別」シェアを見ると、上位からロッテ、森永乳業、江崎グリコ、明治、森永製菓と、おなじみの大手アイスクリームメーカーが並ぶ。さらに今度は大分類「レギュラーアイス」の中の「小分類別」で見ると、下の(表1)のように、アイスクリームは12酒類も細かく分類されていることがわかる。

 この「小分類別」でトップシェアを占めるのは「ホームタイプマルチアイス」の45.4%。「ホームタイプマルチ」というのは、複数個のアイスが大袋に一緒にパッケージされたタイプのアイスのこと。これは今すぐに食べるという消費の仕方ではなく、常時、家の冷凍庫に入れておいて、気が向いたら食べる消費スタイルである。冒頭で、「アイスクリームは季節を問わないデザートになってきている」と書いたが、その傾向は、こうした「ホームタイプマルチアイス」がトップシェアを占めていることにも表れているのではないだろうか。ちなみに、(表1)のデータで、「ホームタイプマルチアイス」の最も売れている商品を見ると、『森永乳業 パルム チョコレート 55ML×6』である。どんなアイスか思い浮かぶだろうか。答えは下の写真である。

 (表1)に戻って、シェア第2位は「カップアイス」。これはもう商品のイメージがわくだろう。カップアイスの1位は、『明治 エッセル スーパーカップ 超バニラ カップ 200ML』(下写真)である。イメージできないのは、小分類のシェア第3位の「その他のレギュラーアイス」の中身だが、これも商品を見ると何となくどんなジャンルかが想像できるだろう。「その他のレギュラーアイス」の1位の商品は『森永 板チョコアイス』、2位が『森永乳業 ピノ』、3位が『ロッテ クーリッシュ バニラ パウチ』(すべて下の写真)である。確かに「ホームタイプマルチ」でもなく、「カップアイス」でもない。それでいて(表1)の、第4位以下の小分類「バータイプ」でも「アイスモナカ」でも「コーンアイス」でも「かき氷」でもない。だから「その他」なのだろう。

小分類「カップアイス」の第1位『明治 エッセルスーパーカップ 超バニラ』と小分類「その他のレギュラーアイス」の第1位~第3位の商品たち。

 ちなみに、小分類第4位の「バータイプアイス」のトップシェア商品は『グリコ パピコ チョココーヒー 80ML×2』。感覚的には、「なぜバーが刺さっていないこの商品がバータイプ?」と思うかもしれないが、この点、日本経済新聞社の同分類に関する定義は、『棒状のもの。チューブ入りアイスも含む』というもので、バータイプだからといって、必ずしもバー(棒)が刺さっていることは必須ではないとの確認が取れた。

 小分類第5位の「アイスモナカ」ジャンルのトップは『森永 チョコモナカジャンボ 150ML』(下写真)で、このアイスは、すべての「レギュラーアイス」の中でもトップに位置する商品で、“知る人ぞ知る”まさにアイスクリーム業界の大横綱なのである。小分類第6位の「コーンアイス」ジャンルのトップは『グリコ ジャイアントコーン チョコナッツ/クッキー&チョコ/クッキー&クリーム』(下写真)小分類第7位「かき氷」ジャンルのトップは『森永 アイスボックス グレープフルーツ 氷菓』(下写真)となっている。これ以下の各小分類のトップ商品の紹介は、今回は省略するが、ここまで見て、それぞれの小分類の内容がだいたい理解できたかと思う。

左上は小分類「アイスモナカ」の第1位で、すべてのレギュラーアイスの第1位でもある『森永 チョコモナカジャンボ』。右が小分類「コーンアイス」第1位の『グリコ ジャイアントコーン』、左下が小分類「かき氷」の第1位『森永 アイスボックス グレープフルーツ 氷菓』。

大手の中に食い込む、九州の老舗メーカー2社

 さて、今回は、この(表1)の12種類の小分類から、赤で着色した「バータイプアイス」でさらに検索し、ランキング表を作ってみた。それが下の(表2)である。この「バータイプアイス」は、日常生活では「アイスバー」と呼ばれるアイスで、アイスに木やプラスティックの棒(バー)が刺さっているものを指す。ただし、『日経POS情報POS EYES』のデータでは、バーが刺さってはいないが『グリコ パピコ』の各商品は、この「バータイプアイス」に分類されている。この「バータイプアイス」の商品は、他ジャンルの商品よりも価格が安く、しかも冷凍庫から出すとすぐに溶け始めるため、「ホームタイプマルチアイス」とは反対に、買ったらその場でするに食べるアイスである。しかも、このジャンルのランキングには、いわゆる大手メーカーよりの知名度の落ちるメーカーが2社ランクインしており、そこに興味をそそられたのも、今回「バータイプアイス」を深堀りすることにした理由である。

 (表2)を見て、まず気が付くのは、第1位の『グリコ パピコ チョココーヒー 80ML×2』の強さだろう。シェア16.8%は2位以下を大きく引き離している。さらに、『グリコ パピコ』銘柄は、3位、4位、16位にもランクイン。メーカー別でも、江崎グリコは、2位の赤城乳業に大きく差をつけてトップとなっている。
 次に、(表2)で気が付いたことは、一番右の欄の「カバー率」である。「カバー率」とは、「販売実績があった店舗の比率」のことで、つまりどれだけ多くの店舗の棚に商品を陳列しているかを示す数字である。(表2)で上位5位までの商品の「カバー率」(表中赤字のもの)は、6位以下の商品のそれに比べ、圧倒的に高いことがわかるだろう。当たり前のことではあるが、やはりしっかり店舗の棚を押さえている商品は売れていることが、この表から明らかである。

小分類「バータイプアイス」の第1位、第3位、第4位、第16位と、圧倒的な強さの『グリコ パピコ』の各種商品。

 20位までの商品は、どれもかなり有名な商品ばかりなので、多くの方は、おそらくほとんどの商品をイメージできるのではないだろうか。メーカーも、きっとおなじみの大手ばかりだろうと思うが、その中に、記者には見たことのないメーカーが2社あることに気が付いた。“知らぬは記者ばかり”なのだろうか。そう思って、(表2)のその2社のメーカー名は、それぞれ1文字ずつ伏せ字にしてみた(赤丸部)。読者の皆さんは、この伏せ字の部分にどんな漢字が入るかわかるだろうか。 

◆第8位「永」のに入る漢字は・・・?

 まず第8位の『永 あいすまんじゅう 95ML』に入る漢字は「丸」である。そう、この『あいすまんじゅう』のメーカーは、福岡県久留米市に本社を置く『丸永製菓株式会社』である。創立が昭和8年(1933年)で、以来、アイスクリーム専業のメーカーだ。同社の会社概要を見ると、そのスローガンは「おいしさと楽しさを創る」で、「アイスクリームは平和のシンボル」だと信じていると記している。アイス好きの記者としては、それだけで応援したくなるメーカーなのである。

丸永製菓のアイスクリーム各種。同社サイトには、まだまだ多くのアイスクリームが紹介されている。『あいすまんじゅう』と『白くま』は、言われてみると見たことがあるような・・・。

◆第18位「下」のに入る漢字は・・・?

 本稿最後は、第18位『下 スペシャルブラックモンブラン バーアイス 125ML』部分に入る漢字である。この商品は、下の写真のものだが、いかがだろう。

 このの部分には、「竹」という漢字が入る。メーカー名は、『竹下製菓株式会社』(佐賀県小城市)で、こちらは昭和2年(1927年)の設立だ。竹下製菓は、事業概要に「冷菓・菓子製造」とあるが、商品紹介を見ると、主力商品はアイスクリームで、ほぼアイスクリーム専業に近いようである。「おいしい・楽しい商品をつくる」会社方針のもと、同社の『ブラックモンブラン』と『ミルクック』には、発売当初から“あたりバー”という、当たりくじが付いている(下写真参照)。

竹下製菓のサイトには、当たりくじのしくみや昨今のコロナ禍での対応についてのお願いなどが詳しく説明されている。

 この丸永製菓、竹下製菓の両社は、それぞれ(表2)のランキングデータの「メーカー別」順位で5位と6位の位置にある。大メーカーに混じって、この順位に食い込んでいる両社のユニークなアイスバーを、記者はこの夏、ためしてみたいと思う。
 今回は、「アイスクリーム」市場の話と「アイスバー」のランキングをご紹介したが、あなたのお気に入りの商品はランクインしていただろうか。またまだ食べていない商品があれば、ぜひ一度おためしあれ。(写真・文/渡辺 穣)

この記事が気に入ったら いいね!しよう

おためし新商品ナビから情報をお届けします

記者

アバター画像

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

この記者の記事一覧

トラックバック