[第19回] 冷凍ギョーザ対決!『味の素』VS『大阪王将』。冷凍ギョーザとチルドギョーザ、今何が一番売れている?

 今回の『日経POSランキング』のテーマは「ギョーザ」である。ネットでキーワード「ギョーザ」「意識調査」などで検索すると、各種調査会社や食品メーカーなどが行った「ギョーザの消費に関する」アンケート結果などをいくつも見ることができる。これらを見ると、「ギョーザ」という食品は、本当に日本人の食卓にしっかりと定着していることがわかる。おおむね「日本人の9割がギョーザが好きで、月に2~3回程度ギョーザを食べる人が4割程度もいる」というような数字も複数出ている。今回は、そんな“国民食”「ギョーザ」でスーパーで買える商品、つまり「冷凍ギョーザ」と「チルドギョーザ」を調べてみた。

 「ギョーザは家で手作り」という“手作り派”も一定数いるようだが、ご存じの通り、ギョーザの手作りは少々手間がかかる。そういう意味では、“手作り派”とはいえ、たまにはお世話になるのがスーパーで買う「冷凍ギョーザ」「チルドギョーザ」なのかも知れない。この2種類のギョーザは、一体どちらの市場規模が大きいのだろうか。売り場の面積などを実際に見回ってみたが、意外と両者は拮抗しているのかも知れないと思いつつ、さっそく『日経POS EYES』で検索を開始してみた。

チルドギョーザは種類が多く、売り場面積も広い。

 データの期間は昨年3月~今年2月の12ヶ月間、日経が全国のスーパーから独自収集したPOSデータから、小分類「冷凍ギョーザ」と「チルドギョーザ」で「小分類別」の検索結果を出力すると下の表のような数字が得られた。

 見てわかるとおり、若干だが「冷凍ギョーザ」の方が売れているようで、金額シェアで57.4%だが、平均価格が「冷凍」の方が少し高いので、個数シェアだと53.3%と、両者の差はより接近してくる。またアイテム数が、「チルド」の方が2倍以上多いので、売り場面積では、とても拮抗しているように感じたのかも知れない。

独占市場の『冷凍』と多社乱立の『チルド』

 この結果を頭に入れて、次は、「商品別」に何が売れているのか調べてみよう。先ほどと同様に、データの期間を昨年3月~今年2月の12ヶ月間として、日経が全国のスーパーから独自収集したPOSデータから、小分類「冷凍ギョーザ」と「チルドギョーザ」で検索。「商品別」の結果を出力すると、下の(表1)のような結果となった。

 この(表1)を見て、まず疑問に感じたことがある。表の青地の商品は「冷凍ギョーザ」で赤地の商品は「チルドギョーザ」なのだが、見てわかるとおりトップ20で、「冷凍ギョーザ」は6商品しかないのである。残り14商品は「チルドギョーザ」なのだ。先に調べたとおり、「冷凍」と「チルド」の販売状況を比較すると、「冷凍」の方が多いにもかかわらず、トップ20ではわずか6商品だけ。確かにアイテム数は「チルド」が多いとはいえ、この結果はパッと見、不思議な感じがしたのである。

トップ3はすべて「冷凍ギョーザ」。写真の左上が第2位、右上が第3位、下が第1位。ランクインしている「冷凍ギョーザ」は、すべて『味の素』と『大阪王将』ブランドである。

 そこでデータを細かく見てみると、驚くべきことがわかったのである。なんとトップ20の上位4商品だけで、657商品の全売上げの金額シェア43.8%を占めているのである。もっと言うと、第1位と第2位の2商品だけで35.9%を占めていることになる。そのくらいこのトップ2の商品の売れ方は頭抜けているのだ。

 またトップ4の商品の顔ぶれを見ると、「やっぱりね!」と納得がいく。というのも、事前にスーパーの冷凍ギョーザ売り場を見て回ったときに、とにかくどのスーパーの売り場も、「ほぼこの4商品に埋め尽くされていた」といっても過言ではないほど、これらが棚を独占していたからである。その状況は、(表1)の一番右欄の「カバー率」という数字を見ると「なるほど」と腑に落ちる。

 この「カバー率」というのは、「対象商品の販売実績があった店舗の比率」という意味なのだが、もっとくだいて言うと、「メーカーが各店舗の棚にどの程度の割合で陳列できたか」を示す数字で、この数字が小さければ、店舗に買い物に行ってもあまり見かけない商品ということになってしまう。メーカー側から見れば、各商品に対する「営業力」を示す数字ということにもなる。

冷凍ギョーザ売り場は、ほとんど『味の素』(下)と『大阪王将』(上)に独占されているが、写真のように、『味の素』は品薄気味のところが多かった。

 第1位の『味の素 ギョーザ 12個 276G』のカバー率を見ると、なんと「100%」である。つまり調査した店舗の全店に陳列され売上げが立っているのである。これまで様々な商品のカバー率を見てきたが、「100%」という商品は、あまり見かけた記憶がない。同じくカバー率を見ると、第2位は85.4%、第3位は85.0%、第4位が73.6%とあって、これが「冷凍ギョーザ」の5位、6位にあたる第14位、第17位の商品になるとそれぞれ26.4%、33.0%と、カバー率がガクッと落ちているのがわかるだろう。つまり、どの店舗に行っても、上位4商品ばかり売られている状況は、このカバー率がはっきりと示しているのである。

 次に、表の赤地の部分、「チルドギョーザ」を見てみよう。こちらは14商品に8社のメーカーが乱立している。同時に、それらの「カバー率」もチェックすると、その数字も大きくばらついているのがわかる。これはおそらく、「チルドギョーザ」は地域格差が大きい商品だからではないかと考えられる。

「チルドギョーザ」の販売金額トップは、この『マルシン 宇都宮肉餃子 たれ5G×2付 16個 224G』。手作り感がある、具のしっかりしたギョーザだった。

 例えば、第16位にランクインしている『テンフード みよしのさっぽろぎょうざ 12個』は、カバー率がわずかに7.5%しかない。しかし商品名をヒントに、試しにデータ収集地域を北海道に限定してみると、この商品は、北海道ではランキング第1位で、何と全国第1位の『味の素 ギョーザ 12個 276G』よりも売れているのである。しかもそのカバー率は、北海道では100%だったのだ。調べてみると、メーカーの『株式会社テンフードサービス』は札幌市東区に本社を置く会社だった。

 「チルドギョーザ」は、第6位の日本ハム株式会社(大阪市北区)や第7位の株式会社紀文食品(東京・中央区)が製造するナショナルブランド商品よりも、各地方のメーカーが製造する、地域色の強い商品が多いのではないかと想像できるランキングになっている。

 さて、それでは、四の五の理屈をこねるのはこのくらいにして、そろそろ『おためし新商品ナビ』らしく、実際に上位のギョーザを食べ比べてみよう。

1位『味の素』と2位『大阪王将』の差はどこに?

 なんと言っても、やはり一番興味があるのは、「1位・2位対決」である。第1位の『味の素 ギョーザ 12個 276G』のメーカー『味の素冷凍食品株式会社(東京・中央区)』は味の素株式会社が100%出資する子会社で、その名の通り「味の素の冷凍食品部門」を担う会社である。一方、第2位の『イートアンド 大阪王将 羽根つき餃子 12個 314G』のメーカー『株式会社イートアンドフーズ(東京・品川区)』は、ギョーザを中心とする中華料理チェーン『大阪王将』や、ラーメンチェーン『よってこや』や『太陽のトマト麺』を傘下に持つ株式会社イートアンドホールディングスのグループ会社で、もともとは大阪を本拠地とし、原点である『大阪王将』の味を冷凍食品ブランドとして製造販売するメーカである。

株式会社大阪王将のHPより。大阪王将関東1号店の写真。

 このまるで違うタイプの2社が、「冷凍ギョーザ」の分野では抜きんでたシェア争いをしているのだから、これはやはり食べないわけにはいかない。とはいえ、本稿は、ただ単に「どっちが美味しい」とか「こっちがオススメ」などと謳う記事ではないことだけは、はじめにお断りしておく。

 普段手作りギョーザしか食べない記者にとって、この対決は目新しいことが多かった。まず「調理に水も油も必要ない」こと。第2位の『大阪王将 羽根つき餃子』に至っては、フライパンのフタすら必要ないのである。さらにギョーザに「羽根」があるというのが、昨今のギョーザのデフォルトなのだろうか。確かにどちらにも「羽根」が生えている。この羽根が焼き上がりのサインの役目も果たし、これだとまず焼き過ぎたり、焼き足りなかったりする失敗はしない。しかもこの羽根が、案外パリパリと美味しいのも面白かった。

左が『味の素』、右が『大阪王将』。羽根に慣れてない記者は、皿に盛るときに羽根を割って落としてしまう。

 肝心のギョーザ本体の食べ比べた結果だが、まずどちらも“冷凍”とは思えないほど満足のいくものだった。ただ第1位の『味の素 ギョーザ』の方が、メリハリのあるはっきりとした味がしており、味がやや濃い。一方の第2位『大阪王将 羽根つき餃子』は、具が練り物のように粘りがあり、少し甘みが強い。しかしどちらも甲乙付けがたく美味しい。かつて冷凍ギョーザというと、独特のクセを感じたものだが、そうした冷凍食品のクセは全く感じられなかった

 ここで、ちょっとだけ視点を変えてみると、第2位の『大阪王将 羽根つき餃子』には、たれが付いており、調理の際にはフタも要らず、ギョーザの内容量が『味の素 ギョーザ』より4G多く、それでいて価格が安いとなると、もっと第1位に肉迫するほど売れてもいいのではないかと思える。この差が「ブランド力」というものなのだろうか。それともカバー率100%の「営業力」の差なのか。

 ちなみに、同じ焼きギョーザで、「チルドギョーザ」の1位となるランニング第5位の『マルシン 宇都宮肉餃子 たれ5G×2付 16個 224G』も一緒に食べ比べてみたのだが、これが一番“手作り感”が強く、具の素材感もしっかりしていた。ただ、これは肉餃子だったためか、ギョーザというより肉まんを食べているような印象が強く、機会があれば、第13位にランクインしている同ブランドの「野菜餃子」も試食してみたかった。またこの商品は内容量が少なく価格が高いこと、チルド商品なので賞味期限が短く「冷凍ギョーザ」が約1年もの賞味期限があるのに対し、こちらは約1週間の賞味期限しかないこと。調理方法も「冷凍ギョーザ」に比べると少々面倒くさいこと。これらの点がマイナスに作用するのかもしれない。

左が『味の素 ギョーザ』、右が『マルシン 宇都宮肉餃子』。このくらい大きさが違う。

『冷凍』の進化に比べ『チルド』はどうなのか?

 最後になるが、今回、ランキング第4位の『イートアンド 大阪王将 ぷるもち水餃子 270G』と同じく第7位の『紀文 スープ餃子 192G』も食べ比べてみたのだが、こちらでもやはり『大阪王将』の方の具は、記者には少々甘めに感じられた。これは『大阪王将』の具の特徴なのかもしれない。ただそれは決して嫌なものではなく、好みの問題の範囲であると思う。またこの『イートアンド 大阪王将 ぷるもち水餃子 270G』のギョーザの皮は、商品名通り本当に分厚くモチモチした「ぷるもち」食感で、これも好みがあるだろうが、記者にはとても好ましいものだった。それに対し、『紀文 スープ餃子 192G』の試食感は、あまりプラス要因はなく、いわゆる従来の「チルド商品」というイメージを超えることはなかった。

器の中の右側にある『イートアンド 大阪王将 ぷるもち水餃子 270G』は、皮の食感がモチモチでスープでも、辛子醤油で食べても、美味しくいただけるギョーザだった。

 以上が、食べ比べの結果報告だが、何より今の「冷凍ギョーザ」の進化が強く印象に残った。手作りギョーザと遜色なく美味しくいただけたことには驚いた。強いて言えば、『味の素』も『大阪王将』もどちらも美味しいが、やはり万人ウケするように、とてもバランス良く作られているため、ちょっと個性が足りないというか、パンチに欠ける味わいが、唯一のマイナス点かもしれない。ただそのマイナスを補って余りあるほどの、調理の便利さや簡単さは大きな魅力で、記者もこれからは手作りの合間に、ときどき食べてみようという気になったのも事実である。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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