[第13回]クールデザートの直近ランキングに見る、2種の「プリン」ライバル対決!あなたの好みはどちら?

 今回の『日経POSランキング』のテーマは、「クールデザート」である。スーパーで売られている、プリンやゼリー、杏仁豆腐やチーズケーキといった類いの商品で、コンビニにも少なからず品揃えはあるが、そちらは少々値の張るPB(プライベートブランド)商品が中心であるのに対し、スーパーではさまざまなナショナルブランド商品がところ狭しと並んでいる。いつもは、昨年1年間のランキングを見るところだが、今回は、直近の2021年2月に売れた「クールデザート」のランキングを見ていきたい。

スーパーのクールデザートコーナーには、プリンやゼリー、チーズケーキ、杏仁豆腐など、数多くの商品が並ぶ。

上位は「焼きプリン」「焼いてないプリン」「コーヒーゼリー」

 下の(表1)は、さっそく『日経POS EYES』を使って「クールデザート」の販売ランキングを調べた結果である。本稿では「クールデザート」と呼ぶが、『日経POS EYES』の商品分類では『チルドクールデザート』という大分類のカテゴリーで検索。期間は先月、つまり2021年2月の1ヶ月間で、ランキングは販売金額によるもの、そのトップ10を表にしている。

 この表1でまずわかることは、トップ10のうち7商品が「プリン」であることだ。この手のクールデザート市場の中では、実際、プリンの市場規模が圧倒的に大きいが、その結果がこのランキング表にも表れている。プリン以外では、第3位と第9位に「コーヒーゼリー」が、第10位に『ヤクルト 三つ星ファクトリー カップデヤクルト 期間限定 80G』という、ヤクルトを固形にしたものがランクインしている。というわけで、今回は、クールデザートの中でも市場規模が大きい「プリン」について、紹介していきたい。

左から、ランキングトップ3の商品。1位の『森永の焼きプリン』は、プリンの販売実績では常勝のキング的存在だ。

 それでは、ランクインしている7つのプリンについて、もう少し細かく見てみよう。7つのうち、3商品には「焼きプリン」という名称が使われている。また他の4商品は焼いてない「プリン」で、うち1つは「牛乳プリン」となっている。

 プリンは本来、蒸し料理の一種で加熱により固めるものだが、蒸して加熱する代わりに焼くと焼きプリンになるのである。ところが、これはあくまで本来の料理の形で、今日のテーマであるスーパーで売られているような「クールデザート」のプリンの多くは、基本的にゼラチンや寒天などで冷やして固め、なめらかな口当たりになるように仕上げられている。このような製法のプリンを「ケミカルプリン」と呼ぶが、ランクインしている3つの「焼きプリン」も、焼いて固めているというよりは、ケミカルプリンの仕上げとして、オーブンに入れて焼き目を付け、香ばしくしたものと考えた方が近い。

昨今は、様々な種類の「焼きプリン」を見かけるようになった。ちょっとしたブームとなっている。

 さて、ここで、第4位と第6位の「焼きプリン」は同じ『オハヨー 新鮮卵のこんがり焼プリン』のサイズ違い、また第2位と第7位の焼いてない「プリン」も同じ『グリコ プッチンプリン』のサイズ違いなので、結局、「焼きプリン」で2商品、焼いてない「プリン」で2商品が上位争いをし、他に「牛乳プリン」が1つランクインしているのが、トップ10の状況なのである。

 以下では、上位争いをしている4商品を、それぞれご紹介しよう。

どちらもロングセラー商品だが、左のオハヨー乳業の焼きプリンが昨今、次第に人気を集めつつある。

焼きプリンでは “常勝”森永に迫るオハヨー

 まず「焼きプリン」から見ていこう。第1位『森永乳 焼プリン 140G』のパッケージを見ると、そこには『14年連続売上No.1』と誇らしげに記されている。これは「2006年度~2019年度各年のデザート市場販売金額(株)インテージSRI調べ」との注意書きが添えられているが、記者が今回、『日経POS EYES』で、直近2年間のどの期間で調べてみても、やはり、この『森永乳 焼プリン 140G』は第1位となる。つまり、クールデザートのプリンの世界では、この『森永乳 焼きプリン 140G』は“キング”と言っても過言ではないほど圧倒的に売れている商品なのである。製造元は森永乳業株式会社(東京・港区)で、この商品の美味しさの秘密や製法については、同社ブランドサイトに詳細に説明されているので、興味がある方は一度覗いてみるとなかなか興味深い。

オハヨーの『新鮮卵のこんがり焼きプリン』には、小さな容器の4個入り商品があり4位、140Gの単品が6位にそれぞれランクインしている。

 それに対し、昨今売上げを伸ばし、“キング”との差を縮めつつあるのが、第4位と第6位にランクインしている『オハヨー 新鮮卵のこんがり焼プリン』である。第4位の方は68Gケースが4個入り、第6位の方は140G単品の販売となる。この2つの金額シェアを加えると5.2%となり、第1位『森永乳 焼きプリン 140G』の金額シェア5.6%にかなり接近していることがわかるだろう。こちらも製造元であるオハヨー乳業株式会社(岡山県岡山市)商品情報サイトには、開発の歴史や誕生秘話等が詳しく紹介されている。

この「焼きプリン」上位2商品は、歴史と言い、味わいといい、なかなかいい勝負のように見える。

 ちなみに、森永の焼きプリンは1994年発売開始、一方のオハヨーの焼きプリンは1992年発売開始で、どちらも長い歴史を持つ。味や食感については、個人の好みもあるので、ここでとやかく言う気はないが、実際に食べてみると、森永の方がプリンの甘み、カラメルソースの苦みのエッジが強く出ている感じに対し、オハヨーの方が、甘みも苦みも自然なまろやかさとコクが感じられる。どちらが好みかは、ぜひご自分の舌に聞いてみて欲しい。

グリコの“コピー商品”に見える雪印メグミルク

 次は、焼きを入れてないプリンの話である。ここで争っている商品は、第2位、第7位の『グリコ プッチンプリン』 vs 第5位の『雪印メグミルク なめらかプリン 70G×3』である。つまり、グリコ vs 雪印メグミルクである。

右のグリコ『プッチンプリン』の方が、プリンの色が黄色く、カラメルソースの茶色も濃く鮮やかに見える。左は雪印メグミルクの『なめらかプリン』。

 記者がまだ子どもの頃(1972年)、江崎グリコ株式会社(大阪府大阪市)から『プッチンプリン』が登場して、とても感動したことを今でもはっきりと覚えている。その名の通り、プリンの容器の突起をプッチンと折ると、容器の中のプリンが皿の上にきれいに落ち、カラメルソースがプリンの上に乗るからである。今更、説明不要だろう。この容器の構造は、江崎グリコの特許権として保護されていたが、すでに1990年代前半にはすでに特許期限が切れている。

そっくりな両商品で、売り場でも隣り合わせで売られていだが、左の『なめらかプリン』の方が値段は断然安く、量も若干多い。

 今回、このグリコの『プッチンプリン』と上位争いをしている雪印メグミルク株式会社(東京・新宿区)『なめらかプリン』は、その容器が形状も、プッチンの仕掛けも、本家のプッチンプリンとそっくりなのである。しかも小さな容器を3つ並べたパッケージングもそっくり。コピー商品と言われても反論できないほど、そっくりなのだ。それでいて、プリンの容量が、グリコが67G×3個なのに対し、雪印メグミルクが70G×3個と少し多く、逆に価格面ではグリコが平均価格146.9円に対し、雪印メグミルクが91.9円と圧倒的に安いのである。ここまでそっくり商品で、量が多く値段が安いのにもかかわらず、値段の高いグリコの方が売れているということが、どういう意味なのか。それは読者の皆さんが実際に食べて、考えて欲しいと思う。

今回は、ゼリーについて取り上げられなかったので、次の機会にはプリン以外のクールデザートを取り上げてみたいと思う。

 最後になるが、記者は甘いものが好きなので、毎日のように何かしらのクールデザートを食べている。そしてこういう食品は、確かに味に多少の違いはあるものの、明らかに不味いものは、あまりない(と思っていた)。しかし今回、いろいろなクールデザートを横並びにして食べ比べてみると、例えば同じプリンでも、「こんなにも味が違うのか!」と正直かなり驚かされた。おそらく別々に食べれば、どれもそれなりに美味しいと感じるに、同時に食べ比べると、味が違いが明確にわかり、好き嫌いがはっきりと出るのである。もし、クールデザート選びで、「どれでもいい」とか「どれを選べばいいかわからない」という方がいるなら、ぜひいろいろと同時に食べ比べることにトライして欲しい。きっと自分の好みがはっきりとわかるはずだ。

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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