[第17回]売れ行き拡大!「エナジードリンク」 直近1年で何が売れている?老舗を追う『モンスターエナジー』の魅力

 記者は今、『モンスターエナジー』を片手に、この原稿を書いている。執筆が深夜になったため、眠気覚ましと“もうひと頑張り”のパワーが欲しいからだ。『日経POSランキング』、今回は、この手のいわゆる「エナジードリンク」がテーマである。数年前までは、コンビニでしか見かけなかったような「エナジードリンク」が、昨今では普通にスーパーやドラッグストアで売られるようになった。しかも新商品も次々と登場し、市場は今まさに「エナジー」に溢れている。それでは、直近1年間で、どの「エナジードリンク」が売れたのか、さっそく『日経POS EYES』で検索を開始したのだが・・・。

 ランキング表を発表する前に、少々、言葉の定義を明確にしておきたい。というのも、この「エナジードリンク」というジャンルの言葉は、似たような言葉がいろいろと存在し、しかもその境界線が曖昧だからだ。

 一般的には、「栄養ドリンク」と「エナジードリンク」という言葉がよく使われ、前者は薬局やドラックストアでよく見かける茶色の瓶に入ったタイプといえばイメージできるだろう。例えば『ユンケル』とか『アリナミン』といった類いのものである(下写真)。これらは医薬品もしくは医薬部外品という範疇で、有効成分が配合され、その効果・効能を明確に謳うことができるものである。それに対し、後者の「エナジードリンク」とは、具体的な効果を謳うことは法律で禁止されている、単なる“清涼飲料水”である。

ドラッグストアに並ぶ「栄養ドリンク」は、ほとんど医薬部外品である。

第1位は大差でロングセラーの『オロナミンC』

 今回は、前者の医薬品もしくは医薬部外品は除外し、後者の清涼飲料水の範疇でランキングを作成してみた。『日経POS EYES』の商品分類で見ると、大分類の「栄養サポートドリンク」の中にある、「滋養強壮ドリンク(一般品)」と「栄養補給ドリンク」の2つの小分類カテゴリーが該当する。日経が独自に全国のスーパーから収集した、昨年3月から今年2月までの1年間のPOSデータから、この2つのカテゴリーで検索をかけ、販売金額によりランキングし、そのトップ10をまとめたのが下の(表1)である。

 栄えある第1位は、大塚製薬株式会社(東京・千代田区)の『大塚薬 オロナミンCドリンク 瓶 120ML×10』で、これは10本入りのパック商品だが、これはばら売り商品も第4位にもランクインしており、この両者を合わせると金額シェア17.7%と2位以下に大差を付けているのがわかるだろう。この『オロナミンCドリンク』は、おそらく読者多くの人にとっては、生まれたときには既に売られていた商品だろう。1965年が発売開始なので、発売56年目の超ロングセラー商品なのである。製薬会社が製造している、茶色の小瓶に入った姿から、医薬部外品と勘違いされそうだが、これはれっきとした清涼飲料水で、幾つかの売り場でも、その勘違いを防ぐための注意書きが施されていた(下写真)。

医薬部外品の栄養ドリンクに混じって売られていた、清涼飲料水の『オロナミンC』。

 第2位にランクインしているのが、記者が今、原稿を書きながら飲んでいる『モンスターエナジー 缶 355ML』である。この『モンスターエナジー』には多くのフレーバーが存在し、(表1)の第6位には『モンスター パイプラインパンチ 缶 355ML』というオレンジやグァバといったパッションフルーツをブレンドしたタイプがランクイン。この2つを合わせ、販売金額がシェア5.9%となっている。

 この『モンスターエナジー』と、第9位にランクインしている『レッドブルJ レッドブル エナジードリンク 缶 250ML』は、それぞれアメリカとオーストリア生まれの輸入品で、いわばエナジードリンク界の“黒船”的存在だった。そしてこの2つのブランドが昨今のエナジードリンクブームの火付け役になったのだが、先行した『レッドブル』に対し、後から入ってきた『モンスターエナジー』が追い抜いた形になっているのが現状なのである。

 

幾つかの売り場を観察していたが、どこも『モンスターエナジー』の量が『レッドブル』を圧倒。

カフェイン量の多さが疲れた人にウケる?!

 実は『モンスターエナジー』が初めて市場に登場したときのことを、記者はよく覚えている。何より缶のデザイン性、ファッション性に心をつかまれた。また、モータースポーツや音楽、ダンス、ゲームといったイベントシーンで広告を連動させ、若者の人気を獲得した販売戦略が印象的で、この缶のデザインのTシャツ(下写真)を着る若者たちも、よく街で見かけるようになった。さらに、多種多様なフレーバー展開は、従来のエナジードリンク好きな人以外にユーザーの裾野を拡大したのではないだろうか。こうした戦略が功を奏して、『モンスターエナジー』は先行した『レッドブル』を逆転したのである。

『モンスターエナジー』は、そのデザイン性やファッション性も大きな魅力!

 ところで、ここまでに紹介した、5つの商品、すなわち、

   ・第1位 大塚薬 オロナミンCドリンク 瓶 120ML×10

   ・第2位 モンスターエナジー 缶 355ML

   ・第4位 大塚薬 オロナミンCドリンク 瓶 120ML

   ・第6位 モンスター パイプラインパンチ 缶 355ML

   ・第9位 レッドブルJ レッドブル エナジードリンク 缶 250ML

は、すべて冒頭で説明した「滋養強壮ドリンク(一般品)」という小分類に属する商品である。『モンスターエナジー』と『レッドブル』が、アルギニンやカフェインの含有量が多く、眠気を覚まし、シャキッとなる飲み物であるのに対し、圧倒的第1位の『オロナミンCドリンク』は、ビタミンの含有量が多く、味わいも優しい対照的な存在である。ちなみに、それぞれ100ML当たりのカフェイン含有量は、『モンスターエナジー』が40mg、『レッドブル』が32mg、『オロナミンC』が15.8mgとなっている。『オロナミンC』は、「味が好き」というユーザーのレビューも多く、120MLという飲み干しやすい分量、そして1本あたりの価格の安さも魅力になっている。

この5商品は、「栄養補給ドリンク」カテゴリーの商品である。

栄養補給に種類豊富な『森永 インゼリー』

 さて、そうなるとトップ10の残り5商品(上写真)、すなわち

   ・第3位 森永 インゼリー エネルギー パウチ 180G

   ・第5位 サントリー デカビタC ダブルチャージ PET 500ML

   ・第7位 コカ・コーラ リアルゴールド ウルトラチャージ レモン PET 490ML

   ・第8位 アサヒ飲料 ドデカミン PET 500ML

   ・第10位 森永 インゼリー マルチビタミン パウチ 栄養機能食品 180G

が、「栄養補給ドリンク」ということになる。

 これらのうち、まず第3位と第10位にランクインしている『森永 インゼリー』シリーズは、他の商品と異なり、パウチパック入りのゼリー飲料である。そしてその飲まれ方も、まさに「栄養補給ドリンク」の名にふさわしく、食事が取れなかったときや、食事で足りなかった栄養を補うために飲むパターンが多いように思われる。この商品も、『モンスターエナジー』同様、目的やシチュエーションに応じて多くのフレーバーのラインナップがあるのが魅力である(下写真)

 そして最後に残った3つのドリンク。すなわち、第5位、第7位、第8位の『デカビタC』、『リアルゴールド』、『ドデカミン』(下写真)は、ビタミンやロイヤルゼリー、アミノ酸などを配合した炭酸飲料で、それぞれサントリー、コカコーラ、アサヒ飲料という飲料大手がつばぜり合いしている、どことなく似た雰囲気の3商品である。

 これらの炭酸飲料には、「エナジードリンク」独特のフレーバーがあり、記者の周囲にも、確実にその味にハマっている人は少なくない。また疲れたときには炭酸飲料を身体が欲することもあり、第8位の『アサヒ飲料 ドデカミン PET 500ML』には、“強強”炭酸の刺激!!という謳い文句がボトルに書かれるほど、強炭酸が売りになっている。

左から、5位、7位、8位の3本の炭酸飲料。色合いや雰囲気が似ている。

 またこれら3商品のうち、『リアルゴールド』にはカフェインは含まれず、他の2品にもカフェインは含まれてはいるが、先の『モンスターエナジー』や『レッドブル』に比べ、その含有量はずっと少なく、100ML当たり『デカビタC』が10mg、『ドデカミン』が5mgとなっている。それに対し飲料自体の容量は490ML~500MLと多めになっており、のどが渇いたときなどに、カフェイン摂取量を気にせず、ガブガブと飲むことができる。この3商品は、トップ10の中では、最も“飲み物”テイストの強い商品だということができるのかもしれない。

 以上、今日はトップ10商品の横顔を紹介したが、こうした「エナジードリンク」が今、市場規模を急速に拡大し、若者層を中心に売上げを伸ばしているため、この春も各社から数々の新商品が登場しつつある。次回また「エナジードリンク」を取り上げるときは、それら新商品の動向を中心にお伝えできればと考えている。(写真・文/渡辺 穣)

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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