[第28回]「即席カップ入りスープ」の2大ブランド「スープデリ」と「じっくりコトコト」を“五番勝負”!実食してわかった、冷めても“トロリ”を保った唯一の商品!

 カップスープと一口に言っても、思い浮かべるものは人それぞれ違うだろう。卵スープやコーンスープ、わかめスープや味噌汁といった、いわゆる汁物のスープもあれば、パスタやパン、春雨といった具がしっかり入った、スープというより軽食に近いものもある。『日経POS情報POS EYES』を調べてみると、そのあたりはいくつかの商品分類に分かれているようである。今回のテーマは、その中から「即席カップ入りスープ」を取り上げようと思う。

《目 次》
0,「即席カップ入りスープ」にはどんな商品がある?
1,五番勝負の壱 「CM対決」
2,五番勝負の弐 「パスタ vs パン」
3,五番勝負の参 「3分  vs  1分」
4,五番勝負の四 「実食比較」
5,五番勝負の五 「販売ランキング トップ10」

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0,「即席カップ入りスープ」にはどんな商品がある?

 『日経POS情報POS EYES』の商品分類を確認すると、大分類「即席カップ入りスープ・汁」カテゴリーの下に、「即席カップ入り春雨スープ」とか「即席カップ入りみそ汁・和風汁」、「即席カップ入り卵スープ」、「即席カップ入り吸い物」など6つの小分類カテゴリーが存在する。その中で、販売金額にして最大のシェアを占めているのが、今日のテーマの「即席カップ入りスープ」である。

 下の(表1)は、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集した昨年4月~今年3月の12ヶ月間のPOSデータから、大分類「即席カップ入りスープ・汁」の中の小分類別の販売金額シェアと平均価格を示したものである。これを見ると「即席カップ入りスープ」の販売金額シェアは53.5%で、第2位の「即席カップ入り春雨スープ」の22.8%を大きく引き離してトップとなっていることがわかるだろう。


 では、この小分類「即席カップ入りスープ」には、どのような商品が含まれているのかを見ると、全体の約8割強は『味の素 クノール スープデリ』ブランドと、『ポッカサッポロ じっくりコトコト こんがりパン』ブランドの商品で占められており、その他には『日清食品 とろけるおぼろ豆腐』『エースコック ハノイのおもてなし』『東洋水産 マルちゃん 食べるスープ』といったブランドが上位グループには散見される程度である。

売り場に見る「即席カップ入りスープ」。『クノール スープデリ』が圧倒的に多く棚を占拠しており、その次が『じっくりコトコト こんがりパン』。どこの売り場も、だいたいその順になっていた。

 というわけで、今回の「即席カップ入りスープ」のテーマでは、2大ブランドの『味の素 クノール スープデリ』ブランド(以下スープデリ)vs『ポッカサッポロ じっくりコトコト こんがりパン』ブランド(以下じっくりコトコト)を、“五番勝負”で比較してみたい。

 ちなみにこの両者、中の具こそパスタかパンの違いはあるものの、それ以外はとても似たテイストのカップスープである。しかも商品アイテム数は、それぞれのブランドサイトによると、スープデリは8種類、じっくりコトコトは12種類ある。それにもかかわらずスープデリの方が約1.5倍くらい、じっくりコトコトよりも売れているのはなぜなのか。この“五番勝負”により、その理由も垣間見えてくればいいと考えている。

 

1,五番勝負の壱 「CM対決」

 スープデリとじっくりコトコトのCMは対照的だ。「スープデリ」のメインキャストは女優の川口春菜さんである。スープデリのブランドサイトを見ると、随所に彼女がスープデリを美味しそうに食べる姿が登場する。

 一方、「じっくりコトコト」の広告塔を務めるのは、俳優の横浜流星さん。こちらは、スープを食べる側ではなく、スープ屋さんの見習いシェフとしてスープを提供する側の役を演じている。下の動画を見ても、彼はスープをサーブし、スープを食べる側には女性役が別に登場している。

 カップスープに限らず、両社の商品のCMギャラリーを見ると、味の素は女性のキャストが多く、ポッカサッポロは男性キャストが多い。だから何だとは簡単には言えないが、テレビCMのイメージや効果は消費者の購買行動には、とても大きな影響を及ぼすことを考えると、この対照的なCMキャラクターも、両ブランドの販売に、少なからぬ影響があるものと思われる。

 

2,五番勝負の弐 「パスタ vs パン」

 次は、それぞれのスープに入っている「具」についてである。まず「スープデリ」だが、こちらは濃厚なスープの中に、らせん状のショートパスタが入ったスープパスタ仕立てになっている(上写真)。デュラムセモリナ粉100%の質感のいいパスタ入りで、スープにパスタが入っているので、それにパンやおにぎり、チーズなどを1品加えた食べ方の提案が、ブランドサイトでもなされている(下写真)。簡単な昼食メニューとして、手軽に手に入るパンやおにぎりを添えて食するのは非常に便利で現実的である。

「スープデリ」にパンを添えて、「パンデリ」として食事。こんな提案がブランドサイトで紹介されている。

 一方、「じっくりコトコト」は、同じくトロリとした濃厚スープの中に、こんがりと焼き上げたパンが入っていて、これがスープを絡めてジュワーととろけて香ばしい。パンにもこだわりがあるようで、ブランドサイトにも詳しく説明がなされている(下写真)

 ところが、こちらはスープにパンが入っているので、1品加えたメニューとして、さらにパンを添えるのは、ちょっとカッコがつかない。そのためか、ブランドサイトで提案されているのは、ゆでたスパゲティと一緒に、つけパスタとして食べるというもの(下写真)。しかしこれは、昼休みのお手軽昼食メニューには少々不向きである。なんせ、ゆでたスパゲティが必要なのだから。


 ここで、なぜ昼食にカップスープに添えるメニューの話をしているのかというと、実はカップスープは、「昼食のメニューの1つとして」という食べ方が43.1%で最も多い回答だとするアンケート調査結果があるからなのだ。どちらも同じように美味しいスープだとしても、パスタが入っているスープデリの方が、「昼食メニューの1つ」としての応用が利きやすいのかもしれない。

 

3,五番勝負の参 「熱湯3分 vs 熱湯1分」

 さて3番目の勝負は、それぞれのスープの調理時間である。スープデリの調理時間はカップ麺などと同様の、「熱湯3分」である。それに対し、じっくりコトコトの調理時間はなんとわずか「熱湯1分」。スープデリのパスタを食べ頃にするには、やはり3分程度はかかるということなのだろう。とはいえ、忙しいビジネスパーソンの昼食にとって、この“2分の差”は非常に大きいと感じるのは記者だけだろうか。

「じっくりコトコト」のスープは、熱湯1分で食べられる。これは大きな魅力だが、この点のアピールはほとんどない。

 この『日経POSランキング』では、これまでにも「乾麺そば」や「乾パスタ」「冷凍ギョーザ」など、調理を要する商品を扱ってきているが、どれを取っても、調理時間が短いということは商品を選ぶときの重要なファクターとなっていた。そう考えると、「じっくりコトコト」の調理時間が「熱湯1分」ということは、消費者にとって大きな魅力なのだと思うのだが、ブランドサイトにも、商品パッケージにも、その点をアピールする記載はほとんど見つけられなかった。
 スープデリで3分待っている間に、じっくりコトコトなら食べ終わることだってできてしまう。この勝負はじっくりコトコトの勝ちだろう。

 

4,五番勝負の四 「実食比較」

 五番勝負の4つ目は、実際に食べて比較し、そこから何か気が付いたことをお知らせしたい。実際に食べてみた商品は、スープデリ、じっくりコトコト、それぞれの売れ筋3商品ずつである。
 冒頭の(表1)と同様に、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集した、昨年4月~今年3月の12ヶ月間のPOSデータから、小分類「即席カップ入りスープ」で検索し、商品別の販売金額ランキング表を作成、そこからスープデリとじっくりコトコトのそれぞれのブランド商品の上位3商品を抜き出すと、下の(表2)と(表3)のようになる。この6商品を実際に調理し、食べてみたのである。味は人の好みに関わることでもあるので、いつもと同様、単に「美味しい」というような評価をする気はないので悪しからず。
(表2)

(表3)


 スープの出来や、その中に入っているパスタやパンのスープとの相性、食感等は、どの商品も非常に良く出来ている。特に、スープデリのショートパスタの食感は絶妙で、熱湯3分という時間を経て、何とも言えないもちもち感とサクサク感が同居した心地よい歯ごたえを実現している。
 ただスープに関して気になったことがある。どのスープも、濃厚でトロリとした食感のスープなのだが、スープが熱いうちは、しっかりととろみがあるものの、少し時間が経過しスープが冷めてくると、とろみが無くなってサラサラのスープになってしまうことだ。ただ1つの例外の商品を除いては・・・である。その例外商品とは、スープデリの第1位の『まるごと1個分完熟トマトのスープパスタ』である。このトマトスープだけは、冷めてもとろみが残り、スープが冷めてしまうことを気にせずに最後まで食べることができる。

 

5,五番勝負の五 販売ランキング

 いよいよ最後の勝負である。ここまで比較してきたスープデリやじっくりコトコトの商品や、それ以外の商品も含めて、「即席カップ入りスープ」の中で、一体何が売れているのか。ランキングトップ10の発表である。
 下の(表4)は、既述の3つの表データと同じく、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集した昨年4月~今年3月の12ヶ月間のPOSデータから、「即席カップ入りスープ」という商品分類で検索し、商品別の販売金額トップ10をまとめたものである。

(表4)


 トップ10には、スープデリとじっくりコトコトの2つのブランドの商品しか見当たらないが、この2ブランド以外で初めてランキングに登場するのは、第13位の『日清食 とろけるおぼろ豆腐 スンドゥブチゲスープ』である。またトップ20を見ると、そのうち16商品は、スープデリかじっくりコトコトブランドの商品である。
 トップ10のうち、スープデリブランドが6品、じっくりコトコトブランドが4品で、何より驚きなのは、トップ3は「スープデリ」の独占であること。実際、スーパーの店頭を見ると、やはりスープデリの商品の陳列が他を圧して多いのも事実。

 個々の商品の「金額シェア」自体を見比べれば、その差はそれほど大きくないようにも見えるが、実際に店頭に出向き、売り場を見ると、この表の「金額シェア」以上の大きな差を感じるのである。さて、あなたのお好みは、「スープデリ」それとも「じっくりコトコト」、どちらだろうか。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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