[第35回]「干しうどん」、讃岐、稲庭に次ぐ第3のうどんは? 売れ筋ランキングトップ30!食べ比べてわかった、品質は粒ぞろいのハイレベルな争い!

 丸亀製麺の混雑ぶりを見ると、もちろん企業努力もあるだろうが、それ以上に「日本人のうどん好き」を実感せざるを得ない。“ステイホーム”の増加により、いわゆる家食や家飲みの機会も増えている。暑くなる季節、たまには「ざるうどん」などいかがだろう。今回のテーマは「干しうどん」である。まずは、美味しい「干しうどん」選びから始めてみよう。

売り場に見る、“日本三大うどん”とは??

 何事につけ「日本三大××」と話題にするのが好きな日本人だが、うどんの場合、どういう結果になるのか。まずは“現場百遍”!あちこちのスーパーの「干しうどん」売り場を見て回った。

比較的、多くの店に陳列されていた川田製麺の『讃岐うどん』と『讃岐ざるうどん』。どちらも販売者は日清フーズである。

 まず驚いたのは、スーパーにより置いてある商品・銘柄がまちまちで、行く店によって、買える「干しうどん」が異なること。これまで、この企画では様々な商品を取り上げてきたが、どこの店にも必ず置いてある、いわゆる“定番”がこれほど少ない商品も珍しい。とはいえ、比較的安定して多く陳列されている「干しうどん」は、株式会社川田製麺さぬき工場(香川県さぬき市)で製造し、日清フーズ株式会社(東京・千代田区)が販売する「讃岐うどん」と「讃岐ざるうどん」(上写真)。これらは、株式会社川田製麺(香川県高松市)のサイトには掲載されていない商品なので、日清フーズとの共同開発商品なのだろう。その“対抗馬”的に多く見かけるのが、石丸製麺株式会社(香川県高松市、以下石丸)が作る、やはり「讃岐うどん」と「讃岐ざるうどん」だ。その他、全体的にみて、やはり香川の「讃岐うどん」は多く陳列されており、予想通りというか、さすが“日本一のうどん”の貫禄を感じる。

この店では、「讃岐うどん」は石丸のものばかりが並ぶ。上段の右には後文の「稲庭うどん」。上段一番左には「ほうとう」が。

 この「讃岐うどん」に次いで、売り場に多く並んでいる「干しうどん」の銘柄は、秋田の「稲庭うどん」だ。なかでも株式会社後文(秋田県湯沢市)株式会社無限堂(秋田県湯沢市)の「稲庭うどん」は、比較的多く陳列されていた。こちらも、さすがに「讃岐うどん」と並び称される“日本の代表的なうどん”だけのことはある。

この店では、「稲庭うどん」が一番多く、中段左には星野物産の「上州うどん」が2種類並ぶ。

 問題は、“第3”のうどんは何かである。個人的には名古屋の「きしめん」かと思っていたが、売り場では一度も見かけなかった。たまに見かけるのは山梨の「ほうとう」、長崎の「五島うどん」。あとは特に銘柄のないPBの商品や、日清フーズが作る『ナンバーワンうどん』という商品も、たまに見かける。そのなかにあって、記者の印象では、「讃岐」「稲庭」の次に多く売られていたのが、群馬の「上州うどん」である(上写真)。ただ確かに比較的多く見かけたが、そのすべてが星野物産株式会社(群馬県みどり市)の製造の商品なのである。これをもって、第3のうどんを「上州うどん」にするのは、多少乱暴なのだが、少なくても“スーパーで入手しやすい三大うどん”と考えれば、
   1,讃岐うどん
   2,稲庭うどん
   3,上州うどん
ということで決まりそうである。

発表!直近1年間の売れ筋ランキングTOP30

 今回は、先に売り場を観察してから、『日経POS情報POS EYES』での調査を開始だ。商品分類は「干しうどん」。検索するデータの期間は、昨年5月から今年4月までの直近1年間。日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したデータで、販売金額により上位30商品をまとめたランキング表が、下の(表1)である。

 

 この上位30商品を見ると、
   1,讃岐うどん 10商品(表中、赤色の着色部分)
   2,稲庭うどん 4商品(表中、青色の着色部分)
   3,上州うどん 3商品(表中、黄色の着色部分)
   4,五島うどん 2商品 5, ほうとう 1商品。ほか、特に銘柄なし。
このような配分になっている。これを見る限り、売り場で実際に見てきた商品割合と、ほぼ完璧に一致していることがわかる。つまり、ここでも「讃岐」、「稲庭」に次ぐ第3のうどんは、「上州」なのである。

ランキングTOP3商品。左から1位、2位、3位。どれも「讃岐うどん」である。

 また、表中の「カバー率」を見ると、カバー率30%を超えているのは、上位4商品だけで、それ以下はカバー率が一ケタの商品が多い。これは「10店に1店も陳列されていない商品が多い」ということを意味し、冒頭に書いた、“定番の少なさ”を裏付けているとも言えそうだ。

さらに、都道府県別のランキングを見ると・・・・

 ランキング30の商品の詳細情報は、また後述するとして、さらに別角度の2つのデータでから、もう少し“日本三大うどん”を検証してみたい。
 まず「都道府県別うどん屋店舗数」というデータ(下写真)である。このデータは、2014年のタウンページが出典となっており、「都道府県別統計とランキングで見る県民性」というサイトで閲覧することができる。これを見ると、人口10万人あたりのうどん屋店舗数で圧倒的1位が「讃岐うどん」の香川県であることがわかる。そして2位に「上州うどん」の群馬県が入っているが、「稲庭うどん」の秋田県は、下の表では見られないが、意外にもずっと下の43位と最下位に近いのである。

この表の全データは、こちらのサイトから。

 また、少々古いデータになるが、農水省で発表している「平成21年度米麦加工食品生産動向」の参考4の資料(下表は抜粋)を見ると、都道府県別の乾麺「うどん」の生産量で、やはり圧倒的1位は讃岐うどんの香川県で、これはケタ違いである。そして2位に茨城、3位に上州うどんの群馬と続く。稲庭うどんの秋田は7位となっている。

実際のデータには、すべての都道府県の数値が出ているが、この表はそこから上位7県を記者が抜粋し作成したものである。

 記者は、かつて秋田に住んだ経験があるのだが、確かに秋田市内には、それほど稲庭うどんの店がたくさんあるようには感じない。むしろ乾麺として、少し高級品然とした面持ちの商品のように感じられるのである。それに比べると、讃岐うどんは、民衆的で、明らかに稲庭うどんとは起源が違う雰囲気がある。
 いずれにせよ、これらのデータを見ると、群馬の上州うどんは、その生産量といい、うどん屋の店舗数といい、“日本三大うどん”の3番手にして問題はないように思える。

星野の「上州手振りうどん」のヒントは稲庭うどんだった!

 さて、ランキング表に目を戻そう。今回は、表の右端に、「100G当価格」という欄を設けてみた。内容量100G当たりの平均価格を算出してみたのだ。これを見ると、「稲庭うどん」がワンランク上の価格帯にあることがわかるだろう。広く大衆に受け入れられる「讃岐うどん」に対し、どこか晴れの舞台用の高級感漂う「稲庭うどん」のイメージは、この価格設定からも感じられる。それでは「上州うどん」はどうなのか。表中の上州うどんはすべて星野物産の商品だが、同社のサイトを見ると、《上州手振りうどん誕生の秘密》という記載があり、そこには以下のように書かれている。
『誕生したのは昭和51年の冬でした。(発売は昭和52年4月) 早いものでもう40数年前になります。製造部門の責任者だった長井恒氏(故人)が、手綯製法で製造量が極めて少なく高価な秋田の伝統食品「稲庭うどん」をヒントに、もっと気軽に多くの方に食べていただきたいと開発した商品なのです。』
 この記載から、同社の「上州うどん」は「稲庭風」であること、そして「稲庭うどん」は高級品であることの2つのことがわかる。間違わないで欲しいのは、ここで言う「上州うどん」は、あくまでも星野物産製造ものの話で、「上州うどん」全般にあてはまるものではないということである。
 以上の予備知識を持って、最後は購入した「干しうどん」を食べ比べてみた。

実際に食べてみたら、どれも驚くほどハイレベル!

 さて今回、この表中から9商品を入手して、実際に食べてみた。当企画では、以前に「乾麺そば」を取り上げており、その際にも食べ比べを実施している。同じように比較ができればと目論んだのだが、同じようには行えなかった。というのも、「乾麺そば」では、明らかに味や食感に差があったが、今回の「干しうどん」は、それほどの差がなかったからである。いや、厳密に言えば、差はあるのだが、それぞれの特長が存在するだけで、マイナス面としての差は、ほとんど感じなかったということである。それでも、記者の個人的感想ではあるが、実際に食べて気が付いたことを、以下書き記しておきたい。 

石丸の讃岐と、川田製麺の讃岐

 「讃岐うどん」はご存じの通り、しっかりと噛み応えのあるもっちり食感が特長である。ゆで時間も13分前後と長めだが、「讃岐ざるうどん」と、「ざる」の2文字が入った商品は、ゆで時間が6~7分と短くなる。その分、特長であるもっちり感も半減する。

左が第2位の『石丸 国産芳純讃岐うどん 400G』、右が第3位の『川田製麺 讃岐うどん 90G×5』

 まずは、第2位と第3位の「讃岐うどん」、つまり石丸と川田製麺の「讃岐うどん」を食べ比べてみた(上写真)。最初に書いたとおり、どちらも美味しいうどんで高レベルの闘いなのだが、個人的には石丸の商品の方が、よりもっちり感としっかりとした歯応えがあって好みである。この印象は、第1位と第5位の「讃岐ざるうどん」の比較でも変わらなかった。

左から第15位、第20位、第23位の「稲庭うどん」。以下、食べ比べをする3種。

後文、無限堂、稲庭うどん小川、3つの「稲庭うどん」

 「稲庭うどん」は、表中、第15位、第20位、第23位の3商品(上写真)を比べてみた。「稲庭うどん」は、そもそもその製法がそうめんに近く、2本の棒の間で手延べで干すもので、「讃岐うどん」とは対照的に、細くツルツルとした食感が特長である。それでいてしっかりとした歯応えもあり、そこに小麦の風味を感じられる。またゆで時間が非常に短く、おおむね3分~5分程度。「讃岐うどん」と10分近く差がある。

透明感のある株式会社稲庭うどん小川(秋田県湯沢市)の『稲庭 秋田銘産 稲庭饂飩 200G』。

 3商品は、「讃岐うどん」同様、高レベルの仕上がりで、甲乙付けるのは極めて難しいが、記者の一番の好みは第23位の「稲庭うどん小川」の商品(上写真)である。上品な食感と、小麦の風味以外の雑味を感じない「稲庭うどん」は、どこか懐かしさを感じさせるものだった。また、第15位の後文の『稲庭かんざしうどん』は、その名前通り、見た目にもかんざしのよう(下写真)で、まさにハレ用として食したい華のある商品だ。

工芸細工のような薄い『後文 稲庭かんざしうどん』。ふわふわと踊るような食感の中に、コシがある。

『上州手振りうどん』と『ナンバーワンうどん』

 星野物産の『上州手振りうどん』は、そばと同様、独自の「もみ切り打ち」、乾麺の表面が斜めに波打っている。これにより、ほぐれやすく、つゆの絡みのいい食べ心地を実現しているのだが、歯応えが少々物足りない。よく言えば、「讃岐うどん」と「稲庭うどん」の中間的な印象である。ゆで時間は4~5分と短く、上述したように「稲庭うどん」をヒントに開発した商品らしさを感じる。どこか折衷的な感想だが、とはいえ、このうどんも、非常に美味しいことには違いない。

左が第17位『星野 上州手振りうどん 90G×4』、右が第18位『日清F ナンバーワン うどん 200G』。

 折衷という意味では、今回試食した中で、最も特長のないのが第18位の『日清F ナンバーワン うどん 200G』である。良くも悪くも“普通のうどん”である。ところが面白いのは、(表1)のデータを地域別に見ると、「稲庭うどん」の産地・秋田を含む「東北」エリアでは、シェア1位はこの『日清F ナンバーワン うどん 200G』であること。「上州うどん」の産地・群馬を含む「関東外郭」エリアのシェア1位が第9位の『全農協連 エーコープ 国産小麦粉づくりの手振りうどん 500G』であるのも同様に興味深い。それに対し、「讃岐うどん」の産地・香川を含む「四国」エリアでは、地元・石丸の讃岐うどんが1位~4位を独占している。こうしたことからも、「讃岐うどん」というのは、本当に地元の人たちの生活にしっかりと根付いたものだと感じることができる。
 さて、あなたはどの「干しうどん」を選ぶだろう。どれを選んでも間違いはないので、あれこれ試してみると面白いだろう。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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