[第14回]「台所用洗剤」に求めるのは洗浄力?速乾性?除菌?この2月にシェアを伸ばした、あの商品とは?

 今回の『日経POSランキング』は、「台所用洗剤」を取り上げる。汚れた食器などを洗うために、どこのお宅でも毎日のように使用する台所用洗剤。この売れ行きの、できるだけ“新しい動き”を伝えるために、ランキングデータの取り方を今回は少し工夫してみた。さっそく『日経POS EYES』を使って、データを掘り出していこう。

台所用洗剤売り場の大半は、「詰替」用が占める。

あえて「詰替」は見ず、「本体」の動きを見る

 まず「台所用洗剤」のデータを引き出すにあたり、「台所食器洗剤」という大分類から、さらにその中の小分類を見ると、そこには「液体食器洗剤」「固形食器洗剤」「粉末食器洗剤」「食器洗い機用食器洗剤」「粉末クレンザー」等々、10個のカテゴリーの小分類が現れる。そして、その中から「液体食器洗剤」「液体食器洗剤(詰替)」をピックアップして、日経独自収集の全国のスーパーのPOSデータから、それぞれを様々な期間設定で下調べしてみた。

 すると、この2つのカテゴリーの比較では、後者の「詰替用」の販売金額が約3.7倍も大きいことがわかる。この詰替用洗剤を買う人とは、要するにリピーターである。つまり同じ商品を買い続けている人。このリピーターの市場が3.7倍も大きいということは、この市場を見れば「液体食器洗剤」マーケットの全体像がほぼ見えるということは言えるだろう。しかしその一方で、このリピーターの動きだけに目を奪われると、消費者の新しい動きが見えにくくなる。そこで、今回はこの「液体食器洗剤(詰替)」という小分類を含めずに、「液体食器洗剤」の本体だけのカテゴリーで、昨年1年間のデータと直近の今年2月1ヶ月間のデータを比べ、各商品の販売金額のシェア(%)とその伸びに注目することにしたのである。

スーパーでも、ドラッグストアでも、花王の『キュキュット』の販売力は圧倒的だ。

強い花王『キュキュット』と、追うP&G『ジョイ』

 

 上の(表1)は、全国のスーパーから日経が独自収集したデータから、今年2月の「液体食器洗剤」の販売金額のトップ20をランキングしたものである。20商品のうち、実に13商品が花王の商品で、次に多いのがP&Gの4商品である。これだけ見ても、この分野での花王の強さと、それを追うP&Gという構図が想像できるだろう。

 実際、昨年1年間の全国のスーパーからの日経独自収集POSデータで「液体食器洗剤」で検索すると、花王の金額シェアは約44%で、2位のP&Gの約23%を大きく引き離してトップになっている。そして第3位がライオンでその金額シェアは約10%である。

 しかし本稿で注目したいのは、前述したとおり、現状の強さではなく「新しい動き」である。そこで(表1)の「シェア伸び」(太枠部分)という項目に注目して欲しい。これは「液体食器洗剤」の昨年1年間のPOSデータを検索し、(表1)の各商品の「金額シェア」が、昨年1年間と今年2月とで、どれだけ伸びたかをポイント数で示したものである。

 例えば、第1位の『花王 キュキュット クリア除菌 240ML』の今年2月の「金額シェア」は8.4%で、「シェア伸び」は1.1ポイントなので、この商品の昨年1年間のデータでの「金額シェア」は7.3%だったことがわかる。実はこの商品は、昨年1年間でも、今年2月でも販売金額が第1位で、しかも昨年からのシェア伸びも第1位と、まさに盤石の強さでトップに君臨しているという状況が読み取れる。そしてこの「シェア伸び」の数字が(+)の商品を、その大きい順にランキングし直したのが、下の(表2)である。

 

直近の“伸び”で目立つライオンの躍進

 「シェア伸び」に同ポイント数のものがあるために、上の(表2)では順位が第7位までしかないが、そこに商品数は13個ある。この13の商品が、昨年1年間の金額シェアに比べ、直近1ヶ月の金額シェアの伸びが大きい商品、つまり今人気を集めている可能性の高い商品として、今回記者が注目したい商品ということになる。

 メーカー別で見ると、ここでもやはり花王の商品が13商品中8商品を占め、次はP&Gの2商品となっており、花王の圧倒的強さと、それに次ぐP&Gという構図は変わらないが、ただ、(表1)で第5位だった『ライオン チャーミー マジカ 除菌プラス フレッシュシトラスグリーンの香り 220ML』が、(表2)では第2位に躍進しているのがかなり目立っているのがわかるだろう。

(表2)で「シェア伸び」が大きかった4商品。こういう時代なのか、どのボトルにも「除菌」の文字が並ぶ。

 具体的なデータはここでは取り上げないが、この“ライオンの躍進”は、別の角度からのデータからも裏付けらている。とういうのは、ランキングのトップ20だけでなく、すべてのデータで、同様に昨年1年間と直近1ヶ月の金額シェアをメーカー別に比較してみると、実はトップの花王が0.8ポイントダウン、第2位のP&Gも3.1ポイントダウンしているのに対し、第3位のライオンは2.8ポイントアップしているのである。そして、このライオンの躍進の原動力となっているのが、上記『ライオン チャーミー マジカ 除菌プラス フレッシュシトラスグリーンの香り 220ML』を始めとする、『ライオン チャーミー マジカ』シリーズなのである。

酵素、速乾、除菌が特長の3つの『マジカ』

 というわけで、この『ライオン チャーミー マジカ』シリーズとは、一体どういう台所用洗剤なのかの話を始める前に、「消費者が台所用洗剤に何を求めているのか」の話から始めたいと思う。まず洗剤なので「汚れが落ちること」。これは当然である。そしてパッと汚れが落ちて、「すすぎが楽」で、「水切れが良く乾きが早い」ことも基本。忙しい現代人は、いちいちこうしたことで時間がかかる商品は敬遠する。またコロナ禍の昨今では、この基本性能に「除菌」という機能が以前にもまして確実に重視されているようにも思える。次に毎日繰り返し使うものなので、「手肌に優しいこと」。これは手荒れがしやすい人には深刻な問題である。そしてこれと同様に、「環境負荷の小さい成分であること」も大事な問題だ。さらに「値段が安いこと」は切実。「香りがいい」とか「デザインが素敵」といったことも求められるだろうが、この2点は絶対に必要というものではないだろう。

 そして、このような要素をすべて叶えてくれる商品は、おそらくなかなか存在しないのだろうが、これらの要素1つ1つが“フック”となって、消費者の心をしっかりとつかみ、リピーターを作り上げていくのである。

『ライオン チャーミー マジカ』の3種類。ブランドサイトより。

 さて、そこで『ライオン チャーミー マジカ』シリーズを見ると、その最大の特長は油汚れをナノレベルまで分解することで、素早くサラサラと油汚れを落とす『ナノ洗浄にある。しかもシリーズに共通して「除菌」の機能がある。シリーズは全3種類で、上の写真のようにそれぞれ「酵素+」「速乾+」「除菌+」という、さらなる特長をプラスされている。

 酵素分解で、食器洗いが楽になる「酵素+」、洗った後の水切れが圧倒的で早く乾く「速乾+」、そしてしっかり除菌できる「除菌+」と、洗剤の基本性能として魅力有るフックがそれぞれに付加されている。今のところ(表1)では第5位に「除菌+」だけがトップ20にランクインしているが、24位に「酵素+」、25位に「速乾+」とどちらも人気上昇中である。

売り場では、P&Gの『ジョイ』シリーズも、花王の『キュキュット』シリーズに負けず劣らず目立っている。

手肌に優しく、環境負荷の小さな“2商品”もシェア伸ばす!

 表2に目を戻すと、第5位と第6位にランクインの『P&G ジョイコンパクト』は、どちらも液性が弱アルカリ性で、洗浄能力の評価が高いが、弱酸性である手肌への刺激は強いタイプ。

あくまで一般論だが、液性が弱アルカリ性のものは洗浄能力が高いが手肌に厳しく、逆に液性が弱酸性の洗剤は手肌に優しいが、洗浄能力が低くなりがち。そして、そのバランスがいいのが液性が中性の洗剤で、台所用洗剤には一番多いタイプである。

 ちなみに、(表2)の商品では、液性が弱アルカリ性なのはP&Gの2商品のみ。逆に手肌に優しい弱酸性は第6位の『旭化成ホーム フロッシュ 食器用洗剤 アロエヴェラ 300ML』のみ。他はすべて中性である。

左:『サラヤ ヤシノミ洗剤』、右:『旭化成ホームプロダクツ フロッシュ 食器用洗剤 アロエヴェラ』(ドイツ製)。

 この『旭化成ホーム フロッシュ 食器用洗剤』と同じく6位ランクインの『サラヤ ヤシノミ洗剤 500ML』は、どちらも植物由来の洗浄成分を使用しており、環境負荷も小さく、手肌にも優しい台所用洗剤。記者もかつて長く使用経験があるが、泡立ちや洗浄能力という点ではやはり劣るものの、使用後の手の感覚は本当に自然で、これらの商品が確実にシェアを伸ばしつつあるのは、健康や環境への意識が高まりを見せている時代的な背景もあるのだろうと思われる。

花王の『キュキュット』には、すぐに洗えないときに食器にかけておくだけの商品もある。とにかく商品バリエーションが多彩なことが、花王の強さである。

消費者が何を求めても花王に当たる!

 そして最後に、やはり話は花王に戻ることになる。先ほど、洗剤に消費者が求める“フック”の話をしたが、花王の圧倒的な強さは、結局、このフックの「これでもか」というほどの多彩さにあると記者は考えている。

  (表1)(表2)でどちらも第1位の『花王 キュキュット クリア除菌 240ML』は、基本的な「洗浄力」に加え「除菌」性能が高く、(表2)で第3位の『花王 ファミリー フレッシュ コンパクト 270ML』は、価格が圧倒的に安いし、同じく第3位の『花王 キュキュット クリア除菌 デザインポンプ 300ML』は逆に値段は高いものの、その名の通りポンプボトルにデザイン性と機能性を追求している。第4位の『花王 キュキュット ハンドマイルド カモミールの香り 230ML』では手肌へのいたわりをアピールし、同じく第4位の『花王 キュキュット リラックスデイズ ヴァーベナ&シトラスの香り デザインポンプ 300ML』では、やすらぎの気分をもたらす天然精油を配合。その他にも、ランクインはしていないが、スポンジが届かない場所を洗浄するスプレータイプだの、すぐに洗えない食器にふりかけておくだけの商品など、まさに多種多様なフックを持つ商品展開は、他社の追随を全く許さない

 結局消費者が何を求めても「必ず花王に当たる」という、花王の強さを目の当たりにした、今回の「台所用洗剤」である。ちなみに記者は決して花王の回し者ではないことをはっきりと記しておこう。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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