[第24回]「乾パスタ」トップ10は、日清フーズvsイタリア製のスパゲティ対決の様相。“おためし”してわかった日本製とイタリア製の違い!

 

 今回の『日経POSランキング』のテーマは「乾パスタ」である。なかなか収束しないコロナ禍で外食もままならず、誰もが自宅で料理する機会が増えている昨今、「乾パスタ」は比較的手軽に美味しく料理できる、欠かせない食材ではないだろうか。というわけで、さっそく『日経POS情報POS EYES』を使って、「乾パスタ」の商品分類や商品の販売状況などを調べてみた。

 まず「乾パスタ」という大分類の中には、3つの小分類カテゴリーがある。1つ目は「スパゲティ・ロングパスタ」、2つ目が「マカロニ・ショートパスタ」、そして3つ目が「その他乾パスタ」である。1つ目と2つ目は、ロングやショートという言葉で想像がつく通りのパスタだと思えば、とりあえずはOKである。“とりあえず”と言ったのは、ここであまりパスタの種類に深入りすると、それだけで原稿が長~くなってしまうからである。それほどパスタには種類が多いのだ。「ロング」は、“とりあえず”スパゲティが中心と言っても、スパゲティは麺の太さによっても多様な呼び名がある。今回はそこは目をつぶり、「ショート」は“とりあえず”マカロニやペンネ、シェルなど、そして「その他乾パスタ」は、フェットチーネ、ラザーニャ、ニョッキなどだと思ってもらえればそれでいい。

 さて、そこで今回も日本経済新聞社が独自に収集した2020年4月~2021年3月の全国のスーパーのPOSデータから、大分類「乾パスタ」で検索し、その販売金額によりトップ10のランキング表を作成してみると、下の(表1)のような結果となった。

「カバー率」で圧倒、日清フーズ『ママー スパゲティ』

 この(表1)のトップ10商品は、実はすべて上記小分類の「スパゲティ・ロングパスタ」に属する商品なのである。そこで今度は、(表1)のデータで「小分類別」の販売金額シェアを調べてみると、「スパゲティ・ロングパスタ」が83%も占めており、以下、「マカロニ・ショートパスタ」が15.2%、「その他乾パスタ」に至ってはわずか1.8%に過ぎないことがわかった。乾パスタの販売金額の8割以上が「スパゲティ・ロングパスタ」なのだから、トップ10すべてが「スパゲティ・ロングパスタ」であっても不思議はないわけである。このようなわけで、今回は「スパゲティ・ロングパスタ」の話をしよう。

見かけは、それほど差がないものの、食べてみると大きな差があるのがスパゲティ。しかもなぜか、日本製とイタリア製では、かなり違いがある。

 (表1)のトップ10の商品のうち、赤色の欄の6つの商品は、日清フーズ株式会社(東京・千代田区)『ママー スパゲティ』ブランドの商品で、メーカー別ではダントツのトップシェアを誇る。それに対し、緑色で着色した3つの欄の商品は、イタリア製の輸入商品である。少なくとも、直近1年間のこのデータで見る限り、日清フーズ製とイタリア製のシェアの差は大きく開いてはいるものの、「乾パスタ」市場は、“赤vs緑”すなわち「日清フーズvsイタリア」の様相を呈しているようである。

 それでは、少し細かく(表1)のデータを見ていこう。まず表の一番右の欄「カバー率」に注目すると、日清フーズの『ママー スパゲティ』ブランドの商品のカバー率が軒並み高いことがわかるだろう。「カバー率」とは、「商品の販売実績があった店舗の比率」のことで、これが高いということは、メーカーがそれだけ多く店舗に商品を陳列できたことを意味し、すなわちメーカーの「営業力」が高いことを示すのである。『ママー スパゲティ』ブランドの商品は、多くのスーパーに陳列されており、日清フーズの「営業力」の高さが際立っている。 

コスパ抜群の『アントニオデニーロ スパゲティ

 それに対し、面白いのは、第9位の『アントニオデニーロ スパゲティ 1KG』である。この商品はカバー率がわずか11.3%しかない。要するに10店に1店程度しか陳列されてないということである。それにもかかわらず、第9位に食い込んでいる理由は、まずその“圧倒的な安さ”だろう。

 表の右から2番目の欄「価格/100G」は、記者が「平均販売価格を100G当たりに換算した金額」である。これを見ると、この『アントニオデニーロ スパゲティ 1KG』は100G当たり21.7円と、断然安いことがわかる。しかもこのスパゲティ、安いだけでなく味もしっかりしている(試食のインプレッションは後述)。つまりコスパが非常にいい「乾パスタ」だと言えるのである。カバー率が11.3%であっても売れているということは、このコスパの良さから、消費者はこの商品を狙って買いに行っていると考えられる。

日本製のスパゲティ。手前から第1位、第2位の日清フーズ『ママー スパゲティ』ブランド、一番奥が第3位、はごろもフーズの『ポポロスパ』ブランド。どことなく子供っぽいパッケージデザインだ。

使い勝手の良さで売る“日本製”スパゲティ

 次に、商品名に注目してみよう。日清フーズ『ママー スパゲティ』の6商品のうち4商品の商品名には、「密着チャック」「結束」「早ゆで」という3つの“キーワード”のうち2つが組み合わされて含まれている。これらの言葉は、パッケージに何度でも開け閉めできるチャックが付いていて、スパゲティが計量しなくてもいいように1人前(100G)ずつ結束されていて、しかもゆで時間が通常の半分以下で済むという“使い勝手の良さ”を意味しており、スパゲティ自体の商品性にはほとんど関係のない(「早ゆで」に関しては、後述の試食の結果、商品性にはむしろマイナスになっている可能性がある)ことなのである。しかしこのことにより商品価格が高くなっているにもかかわらず、売上げの伸びに寄与していると考えられるのだ。

 具体的に言うと、日清フーズ『ママー スパゲティ』の6商品の中で、これらのキーワードを含まない2つの商品(日清フーズはこれらを「標準品」と呼ぶ)、すなわち第4位と第8位は、どちらも「価格/100G」は38円台なのに対し、「密着チャック」と「結束」が含まれる第1位と第6位の商品はどちらも「価格/100G」は48円前後、そして「早ゆで」と「結束」が含まれる第2位と第5位は「価格/100G」が60円前後となっている。例えば、同じ麺の太さ1.6MMで見れば、消費者は“標準品”である第4位商品よりも、「チャック付き結束」の第1位商品や「早ゆで結束」の第2位商品を選んでいるということである。

 忙しい現代人は、いつの頃からかあらゆることに対して、「安」「近」「短」(アンキンタン)を、つまり安くて、近くて、時間がかからないことを選ぶようになっているが、それはスパゲティにも当てはまるようで、パッケージを簡単に開け閉めでき、計量しなくてもサッと取り出せて、しかも3分でゆで上がるスパゲティは人気のようである。同様に、第3位にランクインしている、はごろもフーズ株式会社(静岡県静岡市)『はごろも ポポロスパ 1.6MM 7分 結束 100G×7』も、100Gごとに結束されており、それでいて価格は100G当たり33円と安く、そこそこのカバー率があることが、この順位の理由だろう。

トップ10にランクインしたイタリア製の3種のスパゲティ。左が第9位『アントニオデニーロ スパゲティ』、右上が第10位『バリラ スパゲティ』、右下が第7位『ディ・チェコ スパゲッティーニ』。

イタリア製は、食感や風味が日本製よりいい

 そのような日本勢に対し、第7位、第9位、第10位のイタリア勢は、いずれも日清フーズの言葉を借りれば“標準品”である。つまりパッケージの利便性とか結束の方法とか、ゆで時間の短さといったスパゲティ本来の商品性以外のセールスポイントは持たない。

 そこで最後は、『おためし新商品ナビ』らしく、試食をしてそれぞれの商品を比べてみた。ちなみに、記者は36年前から、「乾パスタ」はほぼ『ディ・チェコ』ブランドと『バリラ』ブランドしか食べていない。つまりこの2ブランドの味はしっかりと身体が覚えているので、これら味が基準となっていることは始めに断っておきたい。

 そこでまずランキング第1位『日清F ママー 密封チャック付結束スパゲティ 1.6MM 600G』を食べてみて、正直驚いた。以前に比べずいぶんと進化していたからである。日本のスパゲティらしいテフロンダイスで作られる麺は、ツルツルとした喉ごしが好みの人には好まれるだろうし、ペペロンチーノのようなオイル系の食べ方には向いている。ただやはり小麦の風味は弱く、歯ごたえもザクザクしていて、記者にとってはパスタらしさが感じられない。あくまでも個人的な感想だと思って参考程度にしてほしい。

『ママー 早ゆでスパゲティ』は麺に切り込みが入っているが、このためかゆで上がりに歯ごたえがなく、ぶかぶかと柔らかい麺になってしまっているのが残念だった。

 それに比べ第2位の『日清F ママー 早ゆでスパゲティ ファインファスト 1.6MM 結束 100G×5』には、あまりパスタらしさが感じられなかった。「早ゆで」を実現するために、麺に切り込みを入れている(上写真)のがポイントで、特許まで取得している技術のようだが、ゆで上がったパスタは、記者には無理矢理膨らませたうどんのようにしか感じられなかった。第3位の『はごろも ポポロスパ 1.6MM 7分 結束 100G×7』は、テフロンダイスのツルツルした喉ごしは良かったが、小麦の風味が感じられず、何を食べているのかよくわからない感じがした。

 今回の試食で、最大の収穫だったのは、第9位の『アントニオデニーロ スパゲティ 1KG』だ。この商品は「コスパが良い」とは前述したが、第7位の『ディ・チェコ スパゲッティーニ』にやや似たモチモチした食感タイプで、他よりも太めの1.7MMの麺は小麦の風味もしっかりと感じられる骨太な味わいだった。日本製の麺と同様のテフロンダイス製法なので、オイリーな食べ方には相性が良く、ゆで上がりから麺には一切熱を加えずにオリーブオイルと絡めて食すると非常に食感もいいものだった。

ブロンズダイス製法の『ディ・チェコ スパゲッティーニ』(左)は、見るからに表面がザラザラしており、色も白っぽい。ソースの絡みの良さは随一で、モチモチした食感が特長である。

 記者の常食スパゲティである第7位の『ディ・チェコ スパゲッティーニ』は、トップ10で唯一ブロンズダイス製法の麺。記者はアル・デンテ指定の7分よりも1分長くゆで、ソース系の食べ方でいただく。オイリーな食べ方は、ツルリとした第10位の『バリラ スパゲッティ』でいただく。どちらも歯ごたえも小麦の風味も良く、食べ比べの基準としては、やはり最適な商品だと感じられる。

 今回は、小分類カテゴリーの「スパゲティ・ロングパスタ」の話で終始したが、次に「乾パスタ」を取り上げるときは、「マカロニ・ショートパスタ」」や「その他乾パスタ」にも言及したいと思う。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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