[第20回] 4大ビールメーカーを除く「ビール」販売金額ランキング!個性と美味しさ溢れる日本のクラフトビールの可能性

 ビール業界は今、新型コロナの影響で困難な時期を迎えている。感染防止のために飲食業界が大打撃を受けているため、飲食店に卸すビール販売が激減しているからだ。しかし、その一方で、外で飲めない分、「家飲み」は増加しているため、スーパーや酒店でのビール販売は増えているのではないだろうか。しかも、昨年10月から酒税法改正により、ビールにかかる税金が、350MLあたり7円下がっていることも、家庭のビール消費にとって追い風になっている。そこで、今回の『日経POSランキング』では、まずこの2年間のビールの販売状況から見ていきたいと思う。

 上の(表1)は、『日経POS EYES』を使って、ここ2年間の「ビール」の販売状況を調べた結果である。ちなみに「ビール」というカテゴリーには、「缶入りビール」「缶入りプレミアムビール」「瓶入りビール」「瓶入りプレミアムビール」「その他の容器入りビール」という5つの小分類カテゴリーが含まれている。

 これを見ると、やはり酒税法改正の影響だろうか、2020年4月~2021年3月の「平均価格」は、その前年に比べ約9.3%も下がっている。ところが「千人当り金額(※)」を見ると逆に約8.1%増加しており、「千人当り個数(※)」では約16.6%も増加していることがわかる。

※千人当り金額、千人当り個数とは、千人の客が来店したときに、その商品がいくら売れたか、何個売れたかを示す数値で、これにより地域・業態の規模、収録店舗数の変動に関係なく、商品の売れ行きを計ることが可能になる

 それでは次に、直近1年間で、最も売れた「ビール」は何かを調べ、その「トップ20」を掲載したのが下の(表2)である。

トップ20は当然のように4大メーカーが独占

 これを見ると、トップ20すべてが、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーという、いわゆる4大ビールメーカーで占められいる。そして実はこの状況は第46位まで続いている。中でも『アサヒ スーパードライ』ブランドは、1位、2位、4位、6位、7位、12位を占める強さ。次いで『キリン 一番搾り』ブランドが、3位、8位、10位、13位、14位、15位、『サッポロ 黒ラベル』ブランドが5位、17位、18位、19位を占め、この3ブランドだけでトップ20のうち16個を独占している状況なのである。

 とはいっても、きっとこの結果には誰も驚きを感じないのではないだろうか。記者にとっても、全く新味のない“見飽きた”結果に過ぎない。いまさら『スーパードライ』や『一番しぼり』の記事でもないだろう。そこで今回は、このランキング表から、「4大メーカー」のビールを取り除いた第2のランキング表を作ってみたのである。その結果が下の(表3)だ。

輸入有名ブランドの中に日本のクラフトビールが

 この(表3)を見ると、例えば第1位の『キリン ハイネケン 缶 350ML』は、『キリン』の名はあるが、このビールはオランダの『ハイネケンビール』のライセンス生産なので、このランキングに含めている。同様に第16位の『キリン ギネス エクストラスタウト ビール 瓶 330ML』も、キリンは『ギネスビール』の販売会社なので含めている(ちなみに第8位の『ギネス ドラフト・ギネス ビール 缶 330ML』はキリンが販売している商品かどうかは不明である)。第3位、第6位、第17位にもそれぞれ『アサヒ』『アサヒ』『サントリー』とあるが、これらも販売権なので、ランキングに加えている。

4大メーカーを除いたトップ3のビールブランド.真ん中がトップの『ハイネケン』、左が2位の『コロナ』、右が3位の『オリオンビール』。

 注意書きが長くなったが、この(表3)は、(表2)と違い、なかなか新味のあるランキングではないだろうか。トップ2には、いわゆる世界の有名ビールブランド『ハイネケン』と『コロナ』が来て、第3位には、日本第5のビールメーカー・沖縄の『オリオンビール』が入っている(上写真)。しかしトップ3とはいえども、金額シェアや個数シェアは全体順位でのデータなので、トップの『ハイネケン』ですら0.4%に過ぎない。

 第4位にはまた世界の有名ブランド『バドワイザー』が入り、第5位に初めて、日本のいわゆる“地ビール”(以下クラフトビール)『Yブルーイング インドの青鬼 ビール 缶 350ML』が入っている。第20位までを眺めてみると、このように世界の有名ビールブランドと日本のクラフトビールが混在しているランキングになっていることがわかる(ちなみに『コロナ』は現在、『アンハイザーブッシュインベブジャパン』が輸入者となっているが、表中では第2位は『クアーズJ』と記載され、第13位と第19位では特に記載がないが、同じブランド商品だと思われる)。

スーパーのビール売り場にも、『地ビール』コーナーが目に付くようになってきた。

 さて、ここで今回は、4大メーカーに続き、誰でも知っている世界の有名ブランドにもお引き取り願いたいと思う。今さら『スーパードライ』や『一番搾り』ではないのと同様に、いまさら『ハイネケン』や『バドワイザー』でもなかろう。というわけで、記者的には最も好きな第18位の『アンハイザー ヒューガルデン ホワイト 缶 330ML』にも今回は目をつむり、ランキング内で入手できた、日本の4社のクラフトビールを「おためし」してみたのである。全体ランキングから見れば、まさに“重箱の隅をつつく”ようなビールの試飲であるが、従来の大手一辺倒のビールの時代から、今は多様なクラフトビールを楽しむ時代へと変化しつつある。そこで本稿でも、以下、ランクインしたクラフトビールに注目してみたいのだ。

レベル高い長野のIPAとヴァイッェン

どちらも長野県の軽井沢界隈の醸造所で、日本のクラフトビールのトップ2である。

 まず第5位と第7位の『Yブルーイング インドの青鬼 ビール 缶 350ML』と『Yブルーイング 銀河高原ビール 小麦のビール 缶 350ML』の2つ(上写真)である。どちらも「Yブルーイング」という名称が付いているが、その意味は少々異なる。前者では製造者で後者では販売者なのだ。この『Yブルーイング』、正しくは『株式会社ヤッホーブルーイング』(以下ヤッホーブルーイング)という会社で、クラフトビールの製造・販売を行っている。本社は長野県の軽井沢町にある。

 ヤッホーブルーイングは、上の写真のような見るからに個性豊かなクラフトビールを造ることで知られている。おそらくこれらのビールを見たことがあると言う人は少なくないだろう。どれも見た目だけで思わず買ってしまいたくなるような個性的で魅力的なデザインの缶である。同社は「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションを掲げ、クラフトビールらしい多様で個性的なビールをつくるメーカーである。

『インドの青鬼』の不気味?なデザインに目を引きつけられる。グラスに注ぐと少し濃いめの液体に、病みつきになりそうな独特のフレーバー。

 今回試飲したのは、このヤッホーブルーイングがつくる『インドの青鬼』(上写真)である。商品の詳細はメーカーの商品サイト詳しいのでぜひ一読して欲しい。さっそくこの不思議なネーミングとデザインの缶から、グラスにビールを注ぐと、IPA(インディア・ペールエール)独特のホップの香りが漂う。少しぬるめで口に含むと、日本の大手メーカーの下面発酵ビールでは絶対に味わえない、個性の強い香りと味。少し苦めながら、華やかな香りに包まれる。名前からすると、もっとキツいビールかと思いきや、意外とマイルドで味わい豊かなビールである。度数は7%とやや高め。

 そしてこのヤッホーブルーイングが販売を担当するビールが、『株式会社銀河高原ビール』(長野県北佐久郡)が製造する『銀河高原ビール 小麦のビール』である。商品名が会社名になっているように、この会社ではこのビールだけをつくっている。さっそくグラスに注ぐと、少し白く濁りのあるヴァイツェンビールの特徴が見て取れる。小麦麦芽を多めに使い、最後に濾過処理をしないために現れる特徴で、口に含むと何とも甘くフルーティで、口当たりが優しい。この美しい缶のデザインといい、このビールは女性に人気の出そうな味わいのビールである。度数は5.5%だ。

サイトのトップ画面も美しい、銀河高原ビール

 クラフトビールは、日本では1994年に酒税法の改正により規制緩和された小規模醸造所による個性豊かなビールで、これによりヨーロッパのビールのような、深い味わいのビールが日本でも楽しめるようになった。あれから20数年が経ち、昨今では、本当に美味しい多様なクラフトビールがジワジワと人気を集めている。そんな幸せを感じる、今回の試飲である。

進化を感じる多様なIPAスタイル

 次に試飲したのは第14位の『協同 コエド 毬花 生ビール 缶 350ML』と、第20位の『エチゴビール フライングIPA 缶 350ML』である(上写真)。本当は第15位の『エチゴビール のんびりふんわり白ビール 缶 350ML』というヴァイツェンも試飲したかったのだが、今回こちらは残念ながら入手できなかった。

『コエド』の和の色彩を感じるパッケージは、売り場でも異彩を放っている。

 まず『協同 コエド 毬花 生ビール』である。どこの売り場でも、このコエドシリーズの独特な色彩はとても目立っている。製造所である『株式会社協同商事』の本社は埼玉県川越市。埼玉の“小江戸”である。ここでつくられるコエドブランドのビールは6種類。今回試飲したのは、そのなかの緑色のラベルをまとった『毬花』(まりはな)。毬花というのは、ビールの原料になるホップの雌花の部分を指す言葉で、その名のとおり、柑橘系のような華やかに香るホップが香るビールである。苦みもアピールするのに、意外と飲みやすい度数4.5%のセッションIPAと呼ばれるジャンルのビールである。

『コエド 毬花 生ビール』は低アルコールで、ホップの香り華やか。それでいて苦みも少なく飲みやすい。それがセッションIPA。

 今回最後に試飲したのが、新潟県新潟市に本社がある『エチゴビール株式会社』がつくる『エチゴビール フライングIPA 缶 350ML』である。このエチゴビールという会社は、1994年のいわゆるクラフトビールの規制緩和時に、日本で一番早く国内製造クラフトビールとなったところ。

エチゴビールのサイトには、10種類の個性溢れるビールが紹介されており、それぞれを舞台に立つ「役者」と表現している。

試飲した『フライングIPA』(下写真)は、その名のとおりIPAの強いホップ感と苦みが特徴で、今回飲んだ4種類の中で、もっとも強い個性を感じるビールだった。度数は5.5%である。

 ホームページ情報によると、今月16 日(金)から限定醸造ビール『ALWAYS A WIT (オールウェイズ ア ヴィット)』(下写真)の販売を開始するそうで、原料に大麦麦芽、小麦麦芽、ホップ、小麦、コリアンダー、オレンジピール、ジンジャーを使用したベルギースタイルのホワイトエールとのこと。これは記者のように『ヒューガルデン ホワイト』好きには見逃せないビールである。在庫が無くなり次第販売終了となるので、お求めはお早めに。

 記者は1994年にクラフトビールの規制緩和時から、雑誌記者として全国のクラフトビールブルワリーを取材した経験がある。その後、一時期「クラフトビールは不味いビール」の代名詞のように言われだし、当初の勢いは失せ、個人的には少しがっかりしていたものだが、今回、4つのクラフトビールを試飲して確信した。「日本のクラフトビールは確実に進化し、美味くなっている」と。こだわりのある若い人たちには、従来の画一的な日本のビールよりも、こうした個性的なビールをぜひ味わって欲しいと願うのである。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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