[第23回]「チョコレート」の異なる“側面”でアピールする明治とロッテの戦略の違い。いまやチョコは箱入りではなく、大袋に個包装を入れた販売形態が主流。

 世界で最もチョコレートを消費する国民は、1人あたり年間約12kgものチョコレートを食べるそうである。ということは1カ月に1kg。板チョコにすると、毎日その半分以上を食べ続けている計算になる。さすがに日本人はそこまで多くは食べておらず、日本チョコレート・ココア協会の資料によると、日本人の1人あたり年間消費量は2.19kg(2018年)だそうだ。いずれにせよ、チョコレートは世界中で老若男女を問わず愛されているお菓子であることには間違いない。今回の『日経POSランキング』のテーマは、この「チョコレート」である。

 チョコレートと聞いて、皆さんはどのメーカーを思い浮かべるのだろうか。記者は「♫チョコレートは明治♫」というメロディ付きキャッチフレーズ通り、やはり株式会社明治(東京・中央区)を思い浮かべる、というと年齢がバレそうだが、国内にも国外にも、チョコレートメーカーは非常に多い。というわけで、さっそく『日経POS情報 POS EYESを使って調べてみよう。

 日本経済新聞社が、昨年4月から今年3月までに、全国のスーパーから独自に収集したPOSデータから、商品分類の「チョコレート」という大分類で検索し、販売金額のトップ20をまとめたランキング表が、下の(表1)である。

チョコレートの機能性をアピールする明治

 このランキング表を見ると、トップ3はいずれも明治であることがわかる。しかもトップ20の中に明治の商品は9商品もある。2番手のロッテは4商品、3番手はグリコの3商品だ。実際、この期間のメーカー別の販売金額シェアを見ても、やはり1位明治、2位ロッテ、3位グリコの順になっている。そこでこのトップ3のメーカーのホームページやブランドサイトを訪れ調べると、その商品戦略や販売戦略が三者三様でなかなか面白い。

第14位の『グリコ ポッキー チョコレート チョコレート菓子 9袋』と第18位の『グリコ ポッキー 極細 チョコレート菓子 2袋』。

 まず第3位の江崎グリコ株式会社(大阪府大阪市)(以下、グリコ)だが、ランキングの第5位に入っている『神戸ローストショコラ 濃厚ミルクチョコレート』という粒チョコレートが最上位である。とはいえ、やはりグリコと言えば『ポッキー』(上写真)である。これはチョコレートというよりも、チョコレートをかけたお菓子である。パッケージにも「品名:チョコレート菓子」とある。それに対し、第1位と第2位の株式会社明治とロッテ株式会社は、もちろん「チョコレート菓子」もあるが、どちらも古くから「チョコレート」で勝負しているように見える。ただ両者の販売戦略が少々異なっているのだ。

『チョコレート効果』には、売れ筋の「カカオ72%」のほか、「カカオ86%」や「カカオ95%」のラインナップもある。

 その一番の違いの部分が、ランキング第1位になっている『明治 チョコレート効果 カカオ72%』に端的に表れている。どういうことかと言うと、明治のチョコレートのサイトは、「健康と美に対するチョコレートの機能性」を前面に打ち出しているのが、他社にはない最大の特長となっているのだ。『チョコレート効果』というブランドは、その名前がずばり示す通り、チョコレートの成分の中にカカオ分が何%含まれているかを示し、そのカカオに含まれるポリフェノールで、美と健康に意識の高い消費者層にアピールする販売戦略を採っている。そしてこのことによりチョコレートを「単なるお菓子」から、「毎日健康のために習慣的食べる食品」として、これまでにない商品コンセプトを打ち出すことに成功しているのだ。このような機能性食品としての意識は、『チョコレート効果』ブランドの商品だけでなく、例えば同社の超ロングセラー商品である『明治 ミルクチョコレート』のパッケージにある成分表示にさえ「カカオポリフェノール354mg/1枚(推定値)」と表示するほどに行き届いている。

 

ロッテのサイトには、さまざまなチョコレートの知識や話題が溢れていて、チョコレートの文化を生活に浸透させようという姿勢が見られる。

チョコレート文化の普及を狙うロッテ

 それに対し第2位のロッテ株式会社(東京・新宿区)は、チョコレートの歴史や豆知識、チョコレートの文化的背景などを伝えることにより、日常生活にチョコレートを根付かせようとする姿勢がサイト全体に溢れている。その1つの例が同社のやはりロングセラー商品である『ロッテ ガーナ ミルクチョコレート』と「母の日」のキャンペーンである。『ロッテ ガーナ ミルク チョコレート』は、1964年の発売当初から真っ赤なパッケージが使われているが、これが「母の日」のカーネーションのイメージと重なるため、『母の日ガーナ』キャンペーンといって、母の日になると売り場の一角を真っ赤なガーナで埋め尽くす試みが行われ、今ではそれが当たり前の年中行事として定着するようになっている。またチョコレートのことについて何か知りたいことがあれば、同社のサイト(上写真)は、とても役に立つ記載が多く、読んでいてとても勉強になるのである。

ランキング第6位の『ロッテ ガーナ ミルクチョコレート』(左)と第8位の『明治 ミルクチョコレート』(右)。どちらも超が付くほどのロングセラー商品である。

 このように同じチョコレートという商品を、美や健康という機能性から生活に定着させようとする明治と、歴史や習慣・文化的背景から生活に定着させようとするロッテのコントラストが興味深いのである。

ランキングをカテゴリー別に見ると・・・

 次にこの(表1)の下地の色に注目して欲しい。大分類「チョコレート」の中の小分類別に、4色で塗り分けているのである。具体的に見てみると、最も多くランクインしている小分類カテゴリーは薄茶色に塗られた「チョコバー・粒チョコレート」で、トップ20のうち14商品は、このカテゴリーに属していることがわかる。各商品を見ればわかるように、このカテゴリーは、板チョコのようなひとかたまりのチョコレートではなく、チョコレートを粒やバー状に小分けにした商品のカテゴリーのようである。またここには、明治、ロッテ、グリコ以外にも、フルタやネスレ、名糖といったメーカーのチョコレートもランクインしていることがわかる。

小分類「チョコバー・粒チョコレート」カテゴリーのトップ3。どれも大袋の中に、個包装されて販売されている。

 これに対し、濃い茶色に塗られた小分類カテゴリーは「板チョコレート」で、第6位の『ロッテ ガーナ ミルク チョコレート 50G』第8位の『明治 ミルクチョコレート 50G』の2商品がランクインしている。「板チョコレート」」については、今さら何の説明も要しない、いわゆる板状のチョコレートで、チョコレートの最も基本的な形と言えるのではないだろうか。基本形だけあって、ランクインしている2つの商品はどちらもロングセラー商品で、『ロッテ ガーナ ミルク チョコレート』は1964年2月の発売開始、『明治 ミルクチョコレート』に至っては1926年9月の発売開始と、まもなく発売100周年を迎えようかという超ロングセラーである。

小分類「板チョコレート」の販売金額ランキングトップ10。

 この小分類「板チョコレート」カテゴリーだけを抜き出してランキングすると、上の表のように、トップ10はすべて明治とロッテに占められていることがわかる。この中で、明治の上位3商品、すなわち『ミルクチョコレート』『ブラックチョコレート』『ハイミルクチョコレート』の3商品を詰め合わせた商品が、(表1)のランキング第2位の『明治 ベストスリー チョコレート 184G』で、まさに明治の“ベストスリー”を集めた商品である。

 「板チョコレート」のトップは、ロッテの『ガーナ ミルク チョコレート』で、この商品は上の写真のように、発売当社から変わらず印象的な真っ赤なパッケージをまとっている。これが大きな魅力となり、母の日のキャンペーンにも繋がっていることは、先に述べた通りである。

 (表1)に目を戻すと、第3位『明治 きのこの山とたけのこの里 チョコレート菓子 12袋 138G』と第4位『ロッテ パイの実 シェアパック 準チョコレート菓子 133G』は薄緑色の地色となっている。この小分類カテゴリーは「チョコレート菓子」である。チョコレートだけでなく、そこに小麦粉などを使用した菓子が一緒になった商品が、この「チョコレート菓子」という小分類なのだろう。このカテゴリーには、これら2商品の他に何があるのか、やはり「チョコレート菓子」カテゴリーだけを抜き出してランキングしたのが下の表である。

小分類「チョコレート菓子」の販売金額ランキングトップ10。

 この小分類には。有楽『ブラックサンダー』やロッテ『コアラのマーチ』、ブルボン『シルベーヌ』、ネスレ『キットカット』といった、誰でも知っているブランドが並んでいるのがわかるだろう。この中で、ネスレの『ネスレ キットカット ミニ オトナの甘さ 14枚』が、なぜこのカテゴリーに入っているのかは、ちょっと不思議に感じられるところ。というのも、同じ『キットカット』ブランドでも、(表1)ランキングの第14位や第20位に入っている“通常の”『ネスレ キットカット ミニ』は、「チョコバー・粒チョコレート」カテゴリーに入っているからである。そこで、『キットカット』の商品説明サイトを調べてみると、通常の『ネスレ キットカット ミニ』の品名は「チョコレート」なのに対し、『ネスレ キットカット ミニ オトナの甘さ』の品名は「準チョコレート菓子」となっていることがわかった。この「品名」の違いにより、異なる分類として収録されていたわけである。ちなみに(準)チョコレートと(準)チョコレート菓子の“境界線”は、「チョコレートの重量割合が、全体重量の60%以上か否か」なので、おそらく通常の『キットカット ミニ』に入っているウエハースの単位量当たりの重量は、『キットカット ミニ オトナの甘さ』に入っているビスケットのそれよりも軽いのだろうと思われる。

『ポッキー』は『トッポ』は、小分類「チョコレートがけプレッツェル」に属する商品である。

小分類「チョコレートがけプレッツェル」の販売金額ランキングトップ10。

 小分類の最後は地色がオレンジ色の「チョコレートがけプレッツェル」である。この小分類は、広義では前出の「チョコレート菓子」カテゴリーなのだろうと思われるが、そこから独立して1つのカテゴリーを形成するほどの市場規模を持つに至ったということなのだろう。(表1)では第14位、第18位ともにグリコの『ポッキー』ブランドだが、この「チョコレートがけプレッツェル」カテゴリーだけを抜き出してランキングすると上の表のように、その他にロッテの『トッポ』ブランドもランクインしていることがわかる。とはいえ1位から10位まですべて、グリコ『ポッキー』とロッテ『トッポ』ブランドで占められているのも、このカテゴリーの特徴である。

いまやチョコレート売り場の大きな面積を占めるのは、大袋入りのチョコレートだ。

 記者はこれまでチョコレートを買うときは、必ず小さな箱入りの商品を買ったものだが、今回、ランキング上位の商品を実際に買ってみて、その多くが小さな箱入りではなく、たくさんの量をまとめて入れた大袋入りであることに衝撃を受けた。しかも大袋の中で、チョコレートはさらに個包装され、実際に人が食べるときには、この個包装を手に取るのである。こういう販売形態を取れば、チョコレートは自ずと「粒チョコレート」になるわけで、小分類カテゴリーのなかで「チョコバー・粒チョコレート」カテゴリーが、50%を超す販売金額シェアで圧倒的にトップとなり、チョコレートの基本形「板チョコレート」のシェアがわずか4.4%しかないことも頷ける出来事なのである。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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