[第38回]「ごま油」ランキング上位は、老舗メーカーがズラリ。なんと“暴れん坊将軍”の時代の創業も!TOP20には、調合油もあれば、「トクホ」もある!

 今回の『日経POSランキング』のテーマは「ごま油」である。とても日本的な古い商品というイメージがあるが、今回あらためて各商品のボトルを見て驚いた。というのも、ある商品のボトルには「享保十年創業」とあり、また別の商品のボトルには「安政五年創業」とある。歴史が得意じゃない記者には、一体どっちが古いのかわからない。そんな老舗メーカーの商品が、当たり前にランクインしている。今回は、さっそくランキングから見ていこう。

《サックリまとめ》

・明治なんてまだ若い!ごま油は江戸時代でしょ。

・間違わないで!TOP10には「調合油」が4商品!

・悪玉コレステロールを減らす「トクホごま油」新発売!

 

 いつものように『日経POS情報POS EYES』で、まずは商品分類の大分類「食用油」で検索をかけると、各種油の小分類が9カテゴリーも存在することがわかる。そこで、日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータの、2021年5月の1ヶ月間のデータで、この9カテゴリーの小分類の販売状況を見ると、最も売れているのは「サラダ油」、2番目が「エキストラバージンオリーブ油」、そして今回のテーマ「ゴマ油」が3番手に登場する。この上位3つの小分類カテゴリーで、「食用油」の売上げの約8割を占めている状況なのである。では次に、その「ゴマ油」の商品別の販売状況を調べてみると、上位20位までにランクインした商品のメーカーは、わずか4社に絞られている。下の(表1)がそのランキング表である。

 表を一瞥するだけで、メーカー別のシェア1位は、かどや(かどや製油株式会社日清O(日清オイリオグループ株式会社のどちらかだと見当が着くだろう。実際、このデータでのメーカー別シェアを調べると、1位かどや、2位日清オイリオグループ、3位の自社開発商品(PB)を挟んで、4位に竹本(竹本油脂株式会社)、5位に九鬼(九鬼産業株式会社)と、この4社が並ぶ。食用油業界では、“シェア50%”とも言われる圧倒的な強者・日清オイリオグループが、2位に甘んじているのが、「ごま油」業界の面白さなのかもしれない。

一番下に書かれている「享保十年」とは、八代将軍・吉宗の時代である。第8位(左)と第9位(右)の竹本油脂のごま油ブランド『マルホン』。

えっ!このメーカーは創業300年?!

 ところで、この4社の中で、最も創業が遅い、つまり最も若いメーカーは日清オイリオグループの1907年(明治40年)創業(当時は日清豆粕製造株式会社)である。若いといっても110歳を超えているわけで、それじゃあ他の3社は一体“何歳”なのだろうと調べてみて、本当にビックリ。日清オイリオグループの次に若いのが九鬼産業で、1886年(明治19年)の創業。今年で創業135年。そして残る2社は、冒頭に書いたとおり、享保10年創業と、安政5年創業という、どちらも江戸時代に創業しているメーカーなのである。この2社で若い方が、安政5年創業のかどや製油である。安政5年は1858年。14代将軍・家茂、大老・井伊直弼の時代で、今年は創業163年目という計算になる。そしてそのかどや製油から、さらに100年以上も前に創業しているのが竹本油脂で、創業の享保10年とは西暦1725年(上写真)。おなじみ『暴れん坊将軍』の8代将軍・吉宗の時代になるのである。今年で創業296年。もうすぐ300歳である。もっとも、その時代、ごま油は食用ではなく、灯明用つまり暗闇を照らす明かりの燃料として使われたのである。

300年もの歴史のある竹本油脂のHPは、とても「ごま油」メーカーのものとは思えない。「食卓から宇宙まで」、あらゆる産業界に技術展開する企業である。

 いずれにしても、どのメーカーも、“超”が付くほどの老舗なのだが、ご存じのとおり、「油」は様々な製品や素材の原料になるため、時代が進むにつれ各種素材開発へとつながりやすい。日清オイリオグループは食用油だけでなく、ファインケミカルを扱う化学工業会社だし、同様に竹本油脂も化学素材や界面活性剤を扱いながら、ごま油も作っている会社(上写真)である。一方で、かどや製油と九鬼産業は、軸足を「ごま」の上に据えた会社で、ごま油の他、ごまを使ったヘルシー食品などを取り扱っている。

日清オイリオの売れ筋は、“調合油”である!

 さて「ごま油」メーカーのトリビアはこのくらいにして、ランキング表に戻ろう。第1位の『かどや 純正 ごま油 200G』は、おそらく多くの人が「ごま油」というと頭に思い浮かべる商品。あの瓶の形、あの色(下写真)。まさに「ザ・ごま油」である。

「ごま油」と言えば、やはりこの形。「ザ・ごま油」の『かどや 純正 ごま油 200G』(左)はランキング第1位。右は、第10位の『かどや 純正ごま油 濃口 200G』。

 問題は、第2位、第3位の商品だ。これらはサイズが違うだけで、中身は同じ商品である。というか、第5位、第6位も合わせて、TOP10の4つのランクを占める日清オイリオグループの商品はすべてサイズ違いの同じ商品『日清O ヘルシーごま香油』である。これらは厳密に言うと「ごま油」ではない。ボトルにも「名称 食用調合油」と書いてあるが、これらは食用ごま油と食用なたね油を6:4でミックスした油である。価格も、そういうわけで他の100%ごま油よりは割安である。ボトルの下の方に小さな文字で「ごま油60% なたね油40%」と小さく記してある(下写真)が、買う人はこれを認識しているのか、少々心配である。

TOP10に4商品がランクインする『日清O ヘルシーごま香油』。これは下に小さく書いてるように、ごま油は60%のみの食用調合油である。

 また、その小さな文字に対して、大きな文字で書かれているのは「コレステロール0ゼロ」。これは植物油なら当然のことを言っているだけで、もちろん他のごま油もすべてコレステロールゼロである。さらにボトルの下の方に「ごまセサミン」と書かれているが、そもそもこの商品は調合油で、ごま油の比率が60%しかないわけだから、他の100%ごま油よりセサミンの含有量は少ないだろう。そして、それらを総合するかのように商品名に「ヘルシー」と謳っている。ここまで徹底した“ヘルシー商品”としての刷り込みは、少しわざとらしい気がする。ちなみに、ランキング第12位と第19位の同社の商品は、どちらも100%のごま油である。

老舗だけに、どのメーカーにも歴史あり。写真は九鬼産業のHP内になる「九鬼産業ミュージアム」のサイトから。「イギリスからの搾油機で胡麻油を搾り始めたのが始まり」とある。

 ちなみに「ごま油」の製法には、大きく分けて「圧搾法」と「抽出法」の2種類があり、前者は昔ながらの、いわば「ごまを押しつぶして搾るだけ」の製法であるのに対し、後者は薬品などを加え油分を抽出する方法である。そして、ここまで取り上げてきた4社のごま油は、HPを見る限り、どこも昔ながらの「圧搾法」を売りにしているが、そこにはおそらく違いがあると思われる。直接工場見学をして話を聞けば、少しは違いがわかるかもしれないが、本稿ではそこまで踏み込まない。また(表1)には参考のために、それぞれの商品「100G当たりの価格」を手作業で計算して記入しておいた。価格には、それぞれ何らかの意味があるわけで、消費者のみなさんは、この価格や、前述したメーカーの歴史、さらにそれぞれの商品の特長などを勘案して、自分に合った「ごま油」を選んで欲しい。

日本初「トクホのごま油」の商品情報サイトより。

かどや製油から、ごま油業界初の「トクホ」が発売

 最後に、ランキング表の第16位の商品をご紹介したい。もともと「ごま油」は、ごま由来のセサミンが含まれているため、これが健康にいいということで、メディアでも数多く取り上げられ、人気の原因となってきたのだが、そのごま油業界で初めて「特定保健用食品」の許可を受けた商品が、第16位の『かどや 健やかごま油 特定保健用食品 196G』である。今年2月15日に発売された新商品で、これからの販売状況が注目される。

「トクホのごま油」について、詳しく知りたい方は、かどや製油の商品情報のサイトに詳しく説明が書かれているので、そちらを見て欲しい。

 毎日大さじ1杯(14G)のごま油を、習慣的に摂取することにより、ごまに含まれるセサミンセサモリンの働きで、「血清LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を減らすのを助ける」効果があるとされる。少々、価格は割高ではあるが、この「トクホのごま油」も、あなたの“ごま油生活”の選択肢に加えてみてはいかがだろう。(写真・文/渡辺 穣)

 

 

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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