[第39回]「お菓子のギフトセット」、売れ筋上位30のデータを「価格」と「カバー率」で並べ替えてみた!ギフトは「値段の高さ」「カバー率の低さ」は弱点にならない商品なのかも・・・?

 お中元、お歳暮のみならず、引っ越し先での軽いご挨拶、お世話になった人へのお礼、お祝い等々、日常生活の中でギフト商品を贈る機会は少なくない。こだわればキリが無いが、サッと気の利いた物を贈るにはスーパーのギフトコーナーを使うのが意外と便利である。今回は、そんなスーパーで買えるギフトセットの中から、「お菓子のギフトセット」に焦点を絞って売れ筋商品を見ていきたい。贈り物の購入の際には、ぜひ参考にしていただきたい。

 いつものように『日経POS情報POS EYES』を使って作成した売れ筋商品のランキング表が、下の(表1)であるが、始めに表のタイトルにある「お菓子のギフトセット」という言葉について少し説明をしておきたい。というのも、『日経POS情報POS EYES』には、「お菓子のギフトセット」という商品分類は存在しないからである。この言葉は大分類「食品ギフトセット・商品券」の中の、3つの小分類「和・洋菓子ギフトセット」、「ビスケット・クッキーギフトセット」、「せんべいギフトセット」を合わせて、便宜上、本稿で名付けたものである。

北海道の『六花亭 マルセイバターサンド』がトップ!

 上のランキング表は、日本経済新聞社が、全国のスーパーから2020年6月から2021年5月の1年間に独自に収集したPOSデ-タから、大分類「食品ギフトセット・商品券」の中の3つの小分類カテゴリー:「和・洋菓子ギフトセット」、「ビスケット・クッキーギフトセット」、「せんべいギフトセット」で検索し、販売金額の上位30商品をまとめたものである。ちなみに、大分類「食品ギフトセット・商品券」の中には、この3つの小分類以外にも、お酒、漬物、ハム・ソーセージ、コーヒー・紅茶、乳製品、缶詰等々、様々なギフト商品を分類した17の小分類がある。その合わせて20の小分類の中で、今回のテーマである3つのカテゴリーだけで、「食品ギフトセット・商品券」の販売額シェアのおおむね過半数を占めている。しかも、この「過半数」というのは、1年間を通した数字で見た場合で、お歳暮やお中元といったギフトシーズン以外の時期を月別に見れば、「お菓子」を買う比率はさらに高くなるようだ。というのも、ギフトシーズンには、ビールやハム・ソーセージなど、価格の高いものを買う比率が高くなるので、相対的に「お菓子」の比率が下がるからである。

売り場を見て回ると、店舗により品揃えはかなり異なるものの、せんべいなどの和菓子よりも、クッキーやチョコレート、ビスケットといった洋菓子の方が、多く陳列・販売されているようだった。

 (表1)を見ると、お菓子のギフトでは、和・洋で比較すると、“洋菓子”が優位なことがわかるだろう。データの小分類カテゴリーのことではなく、単純に、この30商品を和菓子か洋菓子かで区別すると、和菓子に該当するのは第18位、第21位、第22位の株式会社中村屋(東京・新宿区)の3商品ぐらいしか見当たらない。
 そしてランキングの第1位に輝いたのは、『六花亭 マルセイバターサンド 10個 1箱』(下写真)である。金額シェアで、第2位の『モロゾフ ハッピーパーティ MO0043 49点 1箱』の3倍も売れている。おそらく食べたことのある人も多いと思うのだが、この商品は、いかにも北海道のお菓子らしく、サンドされたチョコクリームに、香ばしいバターの風味、さらにレーズンの甘酸っぱさが魅力の商品である。

ランキング第1位の『六花亭 マルセイ バターサンド 10個 1箱』。写真は、メーカーのオンラインショップのサイトから。

 メーカーの六花亭製菓株式会社(北海道帯広市)は、(表1)のデータで、メーカー別の販売金額シェアでも第6位に入っているのだが、その割には同社の商品は、(表1)には他には1つも見当たらない。上位30位どころか、上位50位にも、上位100位にも見当たらない。同社商品が次にランキングに登場するのは、なんと第197位なのである。そして以下、第255位、第694位といった具合である。つまり同社の商品では、第1位のこの商品だけが圧倒的に売れているのである。それがとても不思議でもあり、興味深かったので、今回は、いつもと少し趣きを変えて、(表1)の上位30の商品について、その「平均価格」と「カバー率」で、さらにソートをかけて、この上位30の商品だけで、さらに別のランキング表を以下4つ作ってみたのである。

安くて、どこにでも売ってる『中村屋 花の色よせ』


 まず(表1)の「平均価格」から、上位30の商品を安い順に並べ替えて、その10位までを表にすると、上の(表2)のような結果になる。30商品で、一番安いのは『中村屋 花の色よせ HI10 あられ 1箱』で、中村屋の商品は9位にも入っている。また1000円を切る商品が6個あり、さきほどの売れ筋トップの『六花亭 マルセイ バターサンド』は8番目に安い商品だということがわかる。

 次は、「カバー率」の高い順に10商品を並べた上の(表3)を見て欲しい。「カバー率」が高いということは、多くのスーパーの棚に商品が陳列されていることを意味する。平たく言うと、多くのスーパーでよく見かける商品ほど、「カバー率」が高いということにある。(表3)を見ると、ここでも中村屋の商品が1位、2位、そして10位にもランクインしている。つまり、『中村屋 花の色よせ』(下写真)というブランドのお菓子は、最も多くのスーパーで売られていることになる。

『中村屋 花の色よせ』は、非常によく見かける、贈り物に手軽に購入される商品である。

 この(表2)(表3)の2つのデータから、売れ筋ランキング上位30の中にある数少ない和菓子『中村屋 花の色よせ』という商品は、多くのスーパーで見かける、価格の安いギフトセットだということがわかる。つまり、買う側から見れば、もっとも気軽に買えて、パッと気軽に贈れる商品ということになる。こういう商品は、大袈裟な贈り物というより、ちょっとしたご挨拶とか、お礼に使いやすいだろう。実は、記者も、この『中村屋 花の色寄せ』を、この2年の間に2回もいただいている。お子さんに勉強を教えた謝礼ということだった。

『モロゾフ』や『ステラおばさん』は大切な人向け?!

 今度は逆に、「平均価格」の高い商品を10個並べたのが、上の(表4)である。一番値段が高いのは、株式会社メリーチョコレートカムパニー(東京・大田区)『メリー サヴールドメリー クッキー・パイ 41点 1箱』の2967.4円で、5番目までは2800円以上の商品である。『ステラおばさんのクッキー』で知られる株式会社アントステラ(東京・渋谷区)や各種スイーツで有名な神戸のモロゾフ株式会社(神戸市東灘区)といったメーカーの商品も、価格の高い商品の(表4)で目立っている。

 最後の表、(表5)は、「カバー率」の低い10商品である。つまり、スーパーであまり見かけない商品である。圧倒的に低いのは『紅谷 クルミっ子 8点 1箱』、そして『ブランカ シェルレーヌ』だが、そこに続くのは、アントステラやモロゾフといった高価格の商品。先ほど同様に、買う側の気持ちで考えれば、人に贈り物を贈るときに、大切な人への贈り物になればなるほど、スーパーで普通に売ってるような商品は贈りたくないのではないだろうか。あまり見かけないし、少し値の張るもの。つまり(表4)、(表5)の上位に入るような、「平均価格」が高くて、「カバー率」の低い商品を買いたくなるのではないだろうか。

記者の自宅近くのスーパーには、写真のアントステラ『ステラおばさんのクッキー』は多くの商品を扱っていたが、『モロゾフ』の商品は陳列・販売していなかった。

 (表1)の売れ筋ランキング表と見比べると、『モロゾフ ハッピーパーティ 夏』とか、『Aステラ ステラズセレクト M クッキー』などの商品は、そうした価格が高めで、カバー率が低めの商品で、販売ランキングで上位に入っていることがわかる。例えば、売れ筋30にランクインしている商品で、カバー率が1ケタの商品は第2位と第6位のモロゾフと、第13位のアントステラの商品が上位3商品で、どれも価格が2800円台と高い商品である。

こちらは、売れ筋ランキング第2位の『モロゾフ ハッピーパーティ MO0043 49点 1箱』。豊富な詰め合わせで、見るからに豪華なギフトセットである。

 このように、あまりスーパーでは見かけなくて、なおかつ価格が高めの商品など、この『日経POSランキング』でこれまで取り上げてきたような商品なら、おそらく売れない商品になるのだが、今回の「ギフト」に限っては、消費者には別の心理が働くのだろう。「スーパーで、あまり見かけない、ちょっと高い商品。その方が大切な人への贈り物に相応しいだろう」という心理である。

消費者がギフトに求める「お値頃価格」は“1221円” か?!

 さて、ここで、もう一度、最初に戻りたい。(表1)の売れ筋第1位の『六花亭 マルセイバターサンド 10個 1箱』である。この商品、価格は少し安め、カバー率は特別高くもなく低くもない。これまで見てきたような、消費者の心理で言うと、この商品は「気軽な挨拶」にも、「大切な人への贈り物」にも、両用で使えそうな微妙な立ち位置にある商品なのではないだろうか。というのも、売れ筋第2位の商品は、値段がグッと高くなって、カバー率はグッと低い商品だし、売れ筋第3位や第4位の商品は、逆に価格がグッと安く、カバー率は高くなっている。見事に正反対の傾向を見せているのに対し、第1位の商品は、まさに中庸な万能商品に見えるからだ。そのくせ、この商品は金額シェアで、第2位の商品の3倍も売れている。ちなみに直近の今年5月の同じデータでは、第2位の4倍以上も売れているのである。
 そう考えると、スーパーで買う「お菓子のギフト」としては、この第1位の商品価格「1221.6円」あたりの金額が、最も値頃感のある価格といえるのかもしれない。そして、そこを境にして、少し高めとか、少し安めという判断を多くの消費者が下しているのではないだろうか。
 少々マニアックな見方かも知れないが、このように(表1)を眺めていくと、どの商品も、「大切な人用」「お気軽用」「どちらも兼用」みたいな3種類の商品に分類できるように見えてくる。そして、その中の「どちらも兼用」の代表選手が、第1位の商品のように思えるのである。

株式会社シンケールス(神戸市中央区)の公式通販サイトにある、新しいラインナップ商品『シンケールス 森のスイーツ工房 セレクト 22個 SS-30』。

 このような見方をしたときに、売れ筋ランキング第28位の『シンケールス ファクトリーシン エクセレント EX30 1箱』のランキング順位が、記者は少々気になり始めた。価格が2800円台と高く、カバー率が6.1%と低いので、これは「大切な人用」として、もっと売れ筋上位にあってもいいように思えたからだ。そこでメーカーに電話取材をすると、「この商品は、すでに現在のラインナップにはないもので、同じような位置付けの新ラインナップとして『シンケールス 森のスイーツ工房 セレクト 22個 SS-30』(上写真)と徐々に入れ替えられている」ということだった。確かに、直近の今年5月のデータを見ると、この第28位の商品は、第82位まで後退し、そのカバー率も3.5%まで落ち、その替わりの新ラインナップ商品が、143位にランクインしていることが確認できた。

 この新しいラインナップ商品が、これからどういう動きをするかは、また次回、このテーマを取り上げるときの宿題としておこう。(写真・文/渡辺 穣)

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記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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