“実用”ではなく“おもちゃ”と割り切れば面白い商品だが… サンワサプライ『4輪ドリーカメラスタンドセット』

画の撮影などで、台車に乗せたカメラを横に走らせながら撮影するシーンを、見たことがある人は少なくないと思う。そのような撮影の仕方を「ドリー撮影」といい、カメラを乗せる台車を「ドリー」と呼ぶ。

今日ご紹介する商品は、まさにその「ドリー」。小さな4輪のクルマに、カメラを乗せる雲台が付いていて、地面に近い“ペットの目線”でローアングル撮影をしたり、動きのある被写体を一緒に移動しながら撮影できる、その名も『4輪ドリーカメラスタンドセット』。コンピュータサプライ商品などで知られる、サンワサプライ(岡山県岡山市)の商品である。

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さっそく、サンワサプライの直営通販サイト「サンワダイレクト」で、商品の概要を調べてみると、 ラジコンカーを併走しながら撮影したり、床に座るペットをアップで撮影するなど、いろいろな使い方が紹介されている。

「本当にこんな風に撮影できるなら楽しみ!」。カメラ好きの記者は、さっそく「4輪ドリー」の組み立てに取りかかった。

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箱に入っているパーツは、4輪のローラースケートのような台車に、カメラを乗せる雲台、台車を操作するスティック、取付ネジとシンプルなもの。雲台をネジで下から固定し、スティックは上から取り付ける。

組み立てながら、ネジなどの作りがやや安普請で、これでラジコンカーの横を戸外で併走しながら撮影できるのか不安になる。しかも、雲台の調整用のネジなどは、強く締めるとネジ自体が壊れてしまいそうで、作りの貧弱さがどうも気になってしまうのだ。

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さて、雲台にカメラをセッティングするには、クイックシューという、雲台に固定する部分を先にカメラに取り付けてしまえば、あとが楽である。10円玉などのコインで、クイックシューのカメラへの固定ネジを締めカメラに取り付ける。

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あとは、そのクイックシューごと、雲台のシュー固定ネジで簡単に設置できる。これで撮影の準備はOKだ。

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ためしに、「4輪ドリー」を、操作用スティックで走らせてみると、まるで子犬を散歩させているような感じ。このスティックは、縮めると18.5cmまで短くなり、伸ばすと105cmになる。意外と長く伸ばせるのはいいが、雲台やネジ類と同様、このスティックも貧弱な作りが気になる。

軽めのコンパクトデジカメを取り付けただけでも、ちょっと力が入ると、すぐにスティックが大きくしなってしまう。重い一眼レフなどは、とても付ける気になれない。

また「4輪ドリー」の車輪は、前後ともに約80度、ハンドルを切ることができるが、角度を決めたら、いちいちネジで締めて固定しなければならない。つまり、自由に右左に曲がることはできないのである。それはかなり不便で、記者は、車輪の角度を変えるのが面倒なので、前後、どちらか2輪だけでカーブさせて使っていた。

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さて、いよいよ家の周りの撮影を開始。玄関前から未舗装の庭をムービー撮影しながら歩くと、とにかくガタガタと振動がひどくて、見られる映像にならない。車輪にショックアブソーバーやサスペンション等がないので、硬質ゴムタイヤの振動がそのままカメラに伝わるのである。

こんなに振動したのでは、映像がダメなだけでなく、カメラそのものを壊してしまうだろう。そう考えると、まずこの「4輪ドリー」は、未舗装路では使えない。サンワダイレクトのサイトに出ている、未舗装路でラジコンカーを撮った映像は、どうしてあんなにスムーズに撮れているのだろう。不思議である。

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また、確かにローアングルからの映像は、地面を歩く小動物の目線から見たようで面白いが、カメラをどのくらいの角度で固定すれば、どういったアングルの映像が撮られるかがわかりにくく、すこし画角をシビアに撮りたい場合は、この「4輪ドリー」には向かない。

漠然と、少し上向きにカメラを設置し、広角系のレンズで撮ると、だいたい応用が効くが、そうした漠然とした撮影しかできないように思える。

屋外での撮影が苦手なのに対し、この「4輪ドリー」、室内の平らなところでの撮影で、しかもあまり動かさずに済む被写体には向いていると思う。例えば、赤ちゃんやペットにグッと近寄って撮るとか、床に置いた小さな静物を撮るといったときに、この「4輪ドリー」の威力は発揮できるのかもしれない。しかし、それならわざわざ4つもタイヤを装着した意味はどこにあるのだろうか。

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ところで、この「4輪ドリー」は、操作用のスティックに直接カメラを取り付ければ、自撮りをしたり、高い目線からの撮影もできるのが面白い。

しかし、ここでもやはり問題がある。先に書いたように、スティック自体の強度が足りないので、まず重いカメラはぐらぐらして撮影どころではない。あくまでも非常に軽量のコンパクトデジカメ用だと思わなければならない。

自撮りをする場合、自分から離して、下からあおったり、上から見下ろしたりするように撮影できるのはいいのだが、そのときのカメラの設置角度がわからない。これも先に書いたとおり、漠然と自分を入れた自撮りならいいが、きちんと自分を決められた画角に収めようとすると、それは慣れないとかなり難しい。やはりあくまでもアバウトな撮影向きのツールのようである。

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一方、人混みの上から撮影したり、普段、自分の目線では届かないような高いところからの目線で撮るのは、結構面白く遊べる。部屋の中を撮るだけでも、いつもと違う景色が撮影できるし、身体が入らないような細い隙間にカメラを入れて撮影することも可能である。

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また別売りのiPhone用のホルダーと、リモコンシャッターを使えば、この「4輪ドリー」や操作用スティックにiPhoneをセットして、リモコンでシャッターを切ることができる。

ただ、4輪を使ったときの振動を考えると、使えるのはやはり室内のみ。戸外で使うならタイヤを使わず、スティックにカメラを付けて使う撮影方法が現実的だろう。

昨今では、ローアングルでも撮れるファイダーが付いたカメラも珍しくなく、手ぶれ補正も性能がいいので、果たしてこの「4輪ドリー」が本当にどういう場面で必要になるのか考えてみた方がいい。

そういう意味では、実用というよりも、あくまでも遊びとしての撮影小道具だと割り切って使う商品なのかもしれない。

さてあなたなら、この「4輪ドリー」を、どう使うだろうか。

記者

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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