Wトクホはトクホより機能性が向上したわけではない! 商品記事では書けなかったことをサクッと“おまとめ”

Vコマーシャルでもやっているとおり、確かに美味しいものは「脂肪と糖でできている」。わかっちゃいるけどやめられない。そこで、「脂肪と糖に効く」新しい「Wトクホ茶」の登場となるわけだ。

そんなわけで、4月になって「脂肪と糖にダブルで効く」というお茶が話題となっている。当サイトでも2週にわたって紹介した日本コカ・コーラの「からだすこやか茶W」とアサヒ飲料の「食事と一緒に十六茶W(ダブル)」がそれだ。

「糖と脂肪2つ効く」とか「日本初」といった言葉が発表されると、言葉自体も一人歩きして、「Wトクホ」は、これまでのトクホよりも機能性が大幅に向上した新商品のように勘違いしそうだが、実はそうではない。今日は、当サイトの商品紹介記事では書けなかったトクホの真実を、サクッとまとめてみたので、皆様のご参考にしていただければと思う。

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例えば、上の写真は、2009年6月に発売された日本コカ・コーラの「からだすこやか茶」のニュースリリースのものである。この商品も特定保健用食品、いわゆるトクホとして、消費者庁に効能表示を許可されたお茶だが、これは当時まだ「ダブル」ではなくて、「糖の吸収」について効果が認められただけの、いわば「シングル」トクホだった。

それが、2011年に、このお茶に含まれる関与成分「難消化性デキストリン」が、糖だけでなく、「食後の中性脂肪の上昇抑制作用」についてもトクホとして認定され、それから3年も経過した今になって、ようやく「ダブル」として新登場したのである。

つまり、関与成分もその含有量も、当時の「からだすこやか茶」と、今発売されている「からだすこやか茶W」とは、何も違わない同じ商品なのであって、別に、当時に比べて、何か機能性が向上したということではないのである。

むしろ厳密に言うと、当時の「からだすこやか茶」は、100mlあたり1.5gの「難消化性デキストリン」を含有していたのが、「からだすこやか茶W」では350mlあたり5gとなっており、同じ350mlあたりの換算では、入っている「難消化性デキストリン」が0.25g減っている計算になる。「からだすこやか茶」は税別160円だったが、リニューアルした「からだすこやか茶W」は税別146円。「その分、価格も下げたのかな?」などと、ついつい穿った見方をしてしまう記者なのである。

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そういうわけで、別に「ダブル」と名乗ることはしなくても、「難消化性デキストリン」を関与成分として含む従来からのトクホ飲料、例えば、三ツ矢の「三ツ矢サイダー プラス」だとか、キリンの「メッツコーラ」などは、「ダブル」という名前になっていないだけで、機能的には、脂肪にも糖にも効く「Wトクホ」なのである。

そして、その「難消化性デキストリン」の含有量が、「からだすこやか茶W」に比べ、4割も多いのが、先週発売されたばかりの、アサヒ『食事と一緒に十六茶W(ダブル)』(以下、十六茶W)なのである。これには、250mlあたり5gの「難消化性デキストリン」が含まれている。

商品に掲載されている基準がバラバラなので比較しにくいが、基準をそろえてみると、それぞれの飲料に含まれる「難消化性デキストリン」の量は次のようになる。

 

◆からだすこやか茶    350mlあたり5.25g   ボトル1本で5.25g

◆からだすこやか茶W     350mlあたり5g    ボトル1本で5g

◆十六茶W        350mlあたり7g      ボトル1本で10g

◆三ツ矢サイダープラス  350mlあたり5g      ボトル1本で5g

◆メッツコーラ      350mlあたり3.65g   ボトル1本で5g

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さて、それでは、そもそもこの関与成分である「難消化性デキストリン」とな何なのか、簡単に説明したいと思う。

この素材、実は兵庫県伊丹市にある「松谷化学工業」という会社が独占供給しているもので、植物由来の食物繊維である。当サイトの賢い読者なら、この会社名、どこかで聞いたことがあると思ったかもしれない。実は、やはり健康食品素材として、昨今話題の「希少糖」の研究開発・量産化を進めているのも、この松谷化学工業である。

同社のホームページを見ると、上の写真のように、「難消化性デキストリン」には、実は6つの生理機能があって、そのうち3つ(整腸、糖、脂肪)について、現在、トクホ認定を受けていることがわかる。

同社の研究員の話では、これから先、残る3つの機能(血清脂質低下、低脂肪低減、ミネラル吸収促進)についても、協力してくれるメーカーが現れれば、トクホ認定も可能であるということ。

今、「Wトクホ」などと話題になっているが、実は、すでに3つの機能についてはトクホ認定された実績があり、認定はまだだが、6つの生理機能を同社の実験ではすでに確認できている関与成分が、「難消化性デキストリン」なのである。

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そもそも、トクホという制度自体が信用できるのか否か、トクホだからといって万人に効果があるのか、その他、まだまだ疑問点の多いトクホ商品、トクホビジネスだが、これらについては、現時点での言及は避けることにする。

ただ、トクホ制度発足後22年が経過し、今、ブームとして勢いがあるトクホの市場分野は、「中性脂肪」であることは、統計データなどでも明らかで、そこにメーカーも流通も乗っかって、何とか市場を活性化したいという思惑が絡んでいても不思議はない。

ちなみに、松谷化学工業では、独自に「パインファイバーW」(写真上)という、「難消化性デキストリン」100%の“ダブルトクホ”の健康食品を出している。 これだと、「難消化性デキストリン」6gが60包入って税別3400円で入手できる。これを水に溶いて飲めば、あるいは料理に加えて食べれば、「Wトクホ」の飲料を買って飲むよりも、何倍も安く、しかも自分の好きなスタイルで、飲料に含まれる他の成分などを摂取することなく、「難消化性デキストリン」のみを摂取することができる。Wトクホの飲料に頼らなくても、こうした方法も検討にあたいするのではないだろうか。

この先、メーカー主導で、さまざまなトクホ商品が登場するかもしれないが、消費者はブームに乗せられ、踊らされるのではなく、ブームを上手く利用し自分なりに納得したうえで、自らの健康を手にして欲しいと願う記者なのである。

記者

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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