「讃岐うどんの香川県」から、「???の香川県」へ! 大ヒットの足音が次第に大きくなる、恐るべき『希少糖』

から21年前に大きな話題となり、ヒットした本があった。その本の名は『恐るべき讃岐うどん』(あわわ)。香川県の讃岐うどんの店を訪ね、コラムとともにまとめ上げた名著である。

まあ、それを読むまでもなく、香川県と言えば讃岐うどん。コレは常識。しかし今年は、その香川県に、もう1つ新たな常識が加わりそうなのである。それが『希少糖』だ。

ダイエットの世界では、昨年あたりから、「希少糖」という名は知られるようになっているが、今年は、それが一般的なドリンクやお菓子、食品の分野にまで裾野を広げそうな勢い。どうやら今年2014年は「希少糖元年」といえる年になりそうである。

今日は、伊藤園の『希少糖ソーダ』を紹介しつつ、『希少糖』そのものの話を少ししようと思う。

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写真は、3月10日に伊藤園から発売された『希少糖ソーダ』(500ml税別150円)である。味はよくある「梅ソーダ」と何も変わったところはないが、その名のとおり、甘味成分に「希少糖」が使用されていることが最大の特長である。

原材料名にも、「希少糖含有シロップ(レアシュガースウィート)」と書かれている。もう少し詳しく言うと、この500mlのドリンクには、そのシロップ=レアシュガースウィートが40g入っており、その40gの中に希少糖が3.2g入っていて、その希少糖3.2gのうちの1.4gがD-プシコースなのだそうである。

ややこしいが、今登場した、「レアシュガースィート」、「希少糖」、「D-プシコース」は、これから「希少糖」を語る上でのキーワードなので、覚えておいて欲しい。

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さて「希少糖」というのは、その名のとおり、少なくて珍しい糖分のことである。上の図は、「香川大学希少糖研究センター」のHPから引用したもの。普通、糖分というと、「ブドウ糖」とか「果糖」といった名前はよく知られているが、それらは「D-グルコース」と総称され、自然界に豊富に存在するが、実は種類は少ない。

それに対し、本当に自然界には微量しか存在しないが、多くの種類を持つのが「希少糖」と呼ばれるもので、その種類は50種類にもなるという。この図は、それをイメージしたものである。これを見ると、虫歯予防で知られる「キシリトール」も、希少糖の1つであることがわかる。

その「希少糖」をいち早く生命科学として研究をしてきたのが香川大学で、近年、一部の希少糖を大量生産する技術を確立した。そうなると、もはや“希少”糖ではなくなってしまうわけだ。これまでは、希少糖が微量であったため、研究するにも困難が伴ったが、それが量産できることで、その研究がやりやすくなり、応用技術への道筋もはっきりと見えてきたのである。

その結果、文科省や経産省からの支援、さらに香川県、松谷化学工業(兵庫・伊丹市、詳細は後述)が加わり、産学官の共同研究プロジェクトとなったのである。それが昨今の「希少糖ブーム」の流れの源流なのだ。その手始めの応用研究対象として、D-プシコースやD-アロースの生理活性が研究されているのが現在の状況だ。

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最初に紹介した、伊藤園の『希少糖ソーダ』にも使われている「レアシュガースウィート」は、そうしたD-プシコースやD-アロースといった希少糖とブドウ糖、果糖などをバランスよく配合した機能性甘味料シロップで、甘さは砂糖の90%、カロリーは80%と言われている。

そしてそのダイエット効果だけでなく、D-プシコースが持つ、食後血糖上昇抑制作用、内臓脂肪蓄積抑制作用やアンチエ イジング効果、さらにD-アロースが持つ血圧上昇抑制作用、抗酸 化作用などの生理活性やアンチエイジング効果も注目されていて、すでにダイエット業界では、人気に火がつき始めている。

この「レアシュガースウィート」を開発・製造したのが、先述の松谷化学工業。この会社はもともとデンプン加工品の総合メーカーであるが、実は特定保健用食品(以下トクホ)の世界では知る人ぞ知る、有名企業なのである。

というのも、中性脂肪や血糖値を抑えるトクホでよく見かける「難消化性デキストリン」という水溶性食物繊維は、この松谷化学工業の開発・製造によるもので、当サイトでも、『三ツ矢サイダー プラス』で紹介している。

その松谷化学工業が、今度は「希少糖」に注目し、産学官による共同研究、さらにその後の応用技術、商品化に関わっていて、昨年7月には、香川県下に「レアシュガースウィート」の量産工場を完成し、翌8月からは、その生産・販売を始めたのである。

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また香川県のHPを見ても、県をあげて、「希少糖」の広報活動をバンバン行っている。その中の記事を読むと、これまでの開発の経緯や、県が「希少糖」に寄せる期待の大きさが思いっきり感じられる。

すでに先行して、香川県内では、いくつもの商品化事例があるようだが、おそらくこれからは全国のコンビニやスーパーなどで、「希少糖」と銘打った、さまざまなドリンク、お菓子、健康食品などがお目見えすることと思われる。

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例えば、4月15日には、カバヤ食品(岡山・岡山市)から「レアシュガースウィート」を使ったキャンディ『希少糖キャンディ』が、税別200円で全国発売されることがアナウンスされているほか、いくつかのコンビニでは、自社ブランドのいわゆるPB(プライベートブランド)商品として、「レアシュガースウィート」を使ったスイーツを発売することも発表されている。

このような『希少糖』を使った健康志向の食品、ドリンクは、「レアシュガースウィート」の生産・販売拡大とともに、今年これから多数登場しそうで、そういう意味では、今年2014年は、「希少糖元年」となりそうな勢いを感じる。

伊藤園の『希少糖ソーダ』は、梅味のソーダで、味はきわめて普通である。が、そこに使われている甘味料は、香川県の言葉を借りると「肥満や糖尿病の予防ができる夢のような糖」である。

『希少糖』は、讃岐うどんに代わる、香川県の代名詞となるのかどうか。これからの『希少糖』の研究成果と、その商品化、消費者への普及に注目だ、なんて考えながら飲み干した伊藤園の『希少糖ソーダ』であった。【渡邉 穣】

記者

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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