【特別企画】スーパーの棚に並ぶ商品を決める”バイヤー”という仕事についてイトーヨーカドーの人に聞いた!

日々興味深い新商品を紹介している「おためし新商品ナビ」。「近所のスーパーにアレ、売ってなかったけど、どこで買えますか?」と読者に聞かれることも多い。確かにお店に並ばない限り、商品は入手できないわけで…。そんな売り場に並ぶ商品を決定するのが”バイヤー“と呼ばれる人々だが、彼らは一体どんな仕事をしているのか? そこで今回は業界大手のイトーヨーカドーに突撃取材してみた。

 

“ヨーカドー”の愛称で知られる巨大スーパーの調味料の棚を決めるのはたった一人の男!?

「イトーヨーカ堂」はコンビニ大手の「セブン‐イレブン」と同じセブン&アイ・ホールディングスに属するスーパーマーケット。青と赤をバックにハトが飛ぶロゴでおなじみ。関東地方を中心に2016年7月末現在で日本全国に185店舗を展開、海外にも11店舗が存在する大手スーパーマーケット。

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今回登場していただいたのは、株式会社イトーヨーカ堂(東京都千代田区)の加工食品部加工食品担当マーチャンダイザー飯塚洋平さん。通常品揃えを決定する職種はバイヤーと呼ばれることが多いが、商品選別から現場及びその売れ方まで全体を把握する特徴から、イトーヨーカ堂ではマーチャンダイザー(MD)と呼んでいるそう。

 

そうしたMDは大まかに食品で170人、衣料180人、住居130人程度の500人程度が従事しているという。ほとんどの人は入社してからまず店舗に配属され、現場を3〜10年体験。30代くらいになって、現場をしっかり知った後に、飯塚さんのような本部のMD職につくのだという。

 

「一見多く感じるかもしれませんが、食品の中でもこの人は生鮮食品で、この人は精肉でと、細分化されているんです。異動も食品から衣料へと動くのは稀で、同じ食品の中で担当品目が変わるケースがほとんど。私も乾物などいろいろと担当して、現在担当しているのが調味料になります」

 

販促系のサポートが一人ついているものの、全国のイトーヨーカドーの調味料の棚を決めているのは、実質飯塚さん一人なのだという。その数、品目にして1500種。すごい。

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「もちろん地域性などもありますから、私が決めるのは基本的な品揃えですね。あとは各店舗の判断でプラスマイナスを決めていくということになります。また地域ごとに特色をプラスする部署もあります。こちらから提案もするし、現場から要望されたりもあって、いろいろですね」

 

棚に並ぶ商品はどうやって決めているの?

例えば調味料と一口に言っても世の中には無数の商品が存在する。そこから売れる商品をピックアップして棚の商品を決めるというのは、相当に難しい作業ではないだろうか。メーカーからの売り込みも相当激しい気が…。

「直接売り込みが殺到ということは、そんなにないですが。新規のメーカーや地場や地域のメーカー、海外商品だと、多くはベンダー(仲介業者)経由で話が来ます。

品揃えはまず誰もが知っているスタンダードな商品を揃えるというところから始まります。そこを押さえておいてからは、次の4つの要素で決めていきます」

 

1.メーカー営業担当者の熱意

「やはりこちらも人間ですから、熱意に打たれることはあります。もちろん中身が伴っていないと仕方ありませんが」

 

2.テレビやWEBなどのプロモーションプラン

「一般の消費者に情報が届いているかどうか。影響力のあるタレントが取り上げた場合などは、明らかに売り上げが変わってきますね」

 

3.イトーヨーカドーの”お客様が欲しいと思われるものを揃える”独自基準(マトリックス)

「一つの商品が売れた時に後追い商品が出ますよね。その時に似た商品ばかりを並べた場合は、その中でお客様は選ぶわけです。その場合、売り場としての売り上げは売れた品目が変わるだけで、変わらないわけです。だったら用途が少し違う商品を揃えたほうが売り場全体の売り上げが上がるという考え方ですね。ただ、アイテムを増やすことはNGです」

 

4.自分の足で稼いだ情報とMDとしての想い

「メーカー側から与えられる知識だけではMDとして不十分だと思います。次に何が流行るかということに常に目を光らせています。そこを一段深く考えるために、行列のできる飲食店も見に行きますし、新商品のフェアだけでなく、外食、原料、容器などのフェアにも足を運びます。中でも容器は重要です。新しい画期的な容器が出るということは、それを使った新製品がたくさん生まれる可能性があるわけです。日頃からそうした視察は欠かさないようにしています」

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日頃気軽に見ている商品の棚にこれだけの複雑な背景があるとは…。そこで飯塚さんに”これから来る”のは何か聞いてみた。

 

「立場上、具体的なメーカー名や商品名までは言えませんが…。今年だったらやはり黒酢、生姜あたりが狙い目に感じています。近年は健康志向は年々強くなっていますが、中でも味に工夫されているものは人気が上がる傾向にあります。イトーヨーカードーにぜひ出向いて、調味料の棚を見て私の狙いを知っていただきたいですね(笑)」

 

なるほど、飯塚さんの言葉を編集部なりに解釈すると、このあたりの商品のことを仰っているのでは…。

 

 

ヒットしそうな商品は、売り場のイメージが降りてくる!?

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普段から流行に目を光らせる努力を欠かさないMDの飯塚さん。売れる商品と売れない商品というのは、その眼力でわかるものだろうか。

 

「売れそうな商品というものは、売り場にその商品がずらりと並んで、それが次々売れていくイメージが浮かぶんですよ。もちろん百発百中というわけにはいきませんが(笑)。そもそも気温が1℃変われば売れ筋が変わるという世界です。なかなか絶対はないんですよ。実際今はPOSレジが導入されているので1時間ごとに売れ行きが出てきてしまいます。午前中に売れなかった場合は、午後にどうするんだという話になるくらい、対応スピードの速さを要求される仕事で…」

 

そんな生き馬の目を抜くスピーディーなこの仕事、飯塚さんのやりがいは何なのだろう。

 

「メーカー担当者とじっくり協力関係を築いた上で協議を重ねて、狙い通りにヒットを出せた時、その時はうれしいですね。以前飲料コーナーを担当していた時に、先程言ったように売り場のイメージがパッと浮かんだ時がありました。そして現実にも社長賞をいただくくらいヒットさせることができて。自分の考えていたことが、その通りお客様の購入行動となって現実になる。その時はつくづくやってて良かったと思いましたね」

 

 

 

さて今回は特別企画で、普段何気なく見かけているスーパーの棚の仕掛け人に直撃してみたが、いかがだったろうか。この記事を面白いと思っていただけたら、ぜひ「いいね!」ボタンを押してもらいたい。反響があればぜひ、他のスーパーにも直撃してみたいと思う。

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記者

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清水 りょういち

食レポからタバコ・コーヒーなどの体に悪い系、果てはIT、経済分野までフォローする新しもの好きライター。「わかりにくいをわかりやすく」がモットー。元「月刊歌謡曲/ゲッカヨ」編集長

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