『タテロング 大人のわかめラーメン ごま・しょうゆ』塩分控え目+本来の素材の旨みで、濃厚味文化に浸食された己れの味覚を叩き直す!

1983年(昭和58年)に発表されて以来ロングランで愛され続けている「わかめラーメン」シリーズからのスピンオフとも言うべき最新作が、この『タテロング 大人のわかめラーメン ごま・しょうゆ』である。

もちろん発売はエースコック株式会社(大阪・吹田市)。エースコックのカップ麺といえば若年層だと「スーパーカップ」シリーズかもしれないが、この「わかめラーメン」シリーズも地味ながら非常に長く愛されているシリーズだ。

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その特徴は大書された極太明朝体の「わかめ」の文字と、先日変なところで有名になってしまった理研の「わかめスープ」同様、乾燥したわかめがお湯で戻される具材と正統派しょうゆ味スープとのハーモニー。

さらに潜在意識に訴えかけるのが、カップ麺は体に悪いものであるという刷り込みに対抗する、海藻のヘルシーイメージだろう。コンビニの棚をにらみながら、増えてきた体重、暗雲立ちこめる体調などに悩まされる人間にとっては恰好の逃げ場所として成立している面も少なからずあると思う。

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そうした背景から考えると、「わかめラーメン」の第一のブームの波をもろにかぶったのは今では中高年であるはずで、今回の「タテロング 大人のわかめラーメン ごま・しょうゆ」は当然の進化であると言える。

高血圧、腎臓に関する病気など、かかりつけの医者に直接「塩分に気をつけましょう」といわれない限り、本来は塩分そのものは悪ではない。

しかし中高年ともなると、イメージとしての塩分は脂肪とともに悪の権化と化す。かといってそれまで慣れ親しんできた食習慣というものはそう簡単に変えられるものではない。そうなると、この進化はおいしさをそのままによりヘルシー志向を高めるという任務を持っているということになる。

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ヘルシーといいながら、タテ型で重さを感じる91g(めん70g)。中を見るとこれまたヘルシーといいながら油揚げめんを採用しているのが不思議なところ。

この「わかめラーメン」シリーズそのものが、実はノンフライのものと油揚げめんタイプのものとの二種類並行展開をしている。普通に考えれば低カロリーとなるノンフライめんに一本化されそうなものだが、やはりカップ麺としての魅力は油揚げめんというファンが多いのだろう。

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お湯を注ぐと鼻をつく海産物の香り。乾燥したわかめと一緒にかやくとして入っているのは、香ばしい上に健康志向のごま、小型ながら味にアクセントを与えるメンマ、色鮮やかでこのわかめラーメンという特徴の重要な要素であるコーンはきっちりと入っている。

スープは後からの投入。磯の香りオンリーだったところが、しょうゆの香りが入ることによって実においしそうな匂いに変化する。ごまの香ばしさも食欲を加速させる一方。

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スープは魚介タイプ。オイスターやアサリなどを中心に、隠し味としてガーリック、スパイシーさをほんのりつけるための白コショウが使用されている。

実際に試食してみると、確かに一口目は「おや?」と思う。そう、塩分を控え目にしているがゆえにじゃっかんではあるが確実に味が薄いのである。これはコンビニ食など濃い味付けに慣れた舌にとっては、物足りなさを感じるのではないだろうか。

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しかし、ただ塩分を控えて味が薄くなったということで済ませるエースコックではない。塩分を補うのに一番良いのは旨みである。旨みがあれば塩分は必要最低限の量で済むというのがヘルシー料理界の定説だ。

そういう意味ではこのスープ、ゴマとしょうゆのダブルの旨みを強調することによって二口目、三口目と進むごとにおいしさを増してくる。

そう、慣れてくるとボディーブローのようにからだにおいしさが染みてくるのである。さらにその素材としてのわかめの風味は、より際立ってくる。むしろ「このおいしさがわからないほど、己れの食感は普段の味の濃い料理によって麻痺されてしまったのか」という自問自答が浮かぶほど、ヘルシーな味わい=からだにおいしいという本来の味覚が戻ってくるような気さえするから不思議だ。

油揚げめんになっているのも正解。塩分を控えた上に油まで控えられてしまっては、もはやおいしさも捨てるしかないという作り手のギリギリの判断ではないか。

ただそれでもまだパンチが足りないという濃厚味文化にすっかり毒されてしまった人ならば、そこで塩分を追加するという負け戦に出る前に、ラー油の数滴をおすすめしたい。

これによってわかめとゴマの風味はより強調され、旨みもグンと高まる。せっかくの塩分30%カットをムダにしないためにそうした対策で乗り切りたい。

ただ一つ感じたことがある。それはタテ型にしたがゆえのデメリット。豊富に投入されているせっかくのわかめが、底に沈み込んでしまいやすく、めんとわかめの配分が、後半で大いに狂い出しやすいのである。

うまく麺と一緒にわかめをすくおうとしても、海藻ゆえのヌルヌルと、つるつると麺のおいしさを際立たせるために採用したカドをとった麺が、その作業をことさらに難しくしているのである。

一言で言ってしまえば、食べにくい!

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おいしいのだけれど、落ちたわかめがはねて熱いスープも飛び跳ねる。わかめラーメンシリーズならば、これまで同様どんぶり型のタイプにして欲しかったというのが正直な感想である。今までの路線を破棄しての、唐突なこのタテ型の投入には、正直戸惑うばかりだ。

価格は税抜希望小売価格で190円。2014年8月25日から発売開始。全国のコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで入手可能である。

公式サイト:タテロング 大人のわかめラーメン ごま・しょうゆ

記者

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清水 りょういち

食レポからタバコ・コーヒーなどの体に悪い系、果てはIT、経済分野までフォローする新しもの好きライター。「わかりにくいをわかりやすく」がモットー。元「月刊歌謡曲/ゲッカヨ」編集長

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