話題性はあるが、本当に実用に耐えられる商品なのか? 野菜の鉛筆削り『ねじっこ』の“素直な”使用レポート

この商品、テレビやメディアで話題になっているらしい。あたかも鉛筆削りで鉛筆を削るように、この調理器の中で、野菜をグルグルと回転させて“削る”というものだという。メーカーが、この商品を作りたい気持ちは何となくわかるが、野菜は鉛筆のようには簡単に削れないのである。

できるだけ簡潔、率直に、事実を指摘する試用レポートを書こうと思う。

 

 

とりあえず、商品概要が簡単に知るには、メーカー作成の上の動画を見るのが一番。

これを見ると、いとも簡単に、野菜を桂むきにしたり、千切りを作ったりしていて、とても便利そうに思える。ナレーションの口上も軽妙で、実演販売でも見ているかのような動画である。思わず、「買いたい!」と思った人もいるかもしれないが、しかし買うのは、まだ決断が早すぎる。

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『ねじっこ』に入っている“鉛筆削り“は3種類。桂むき用の平刃、太千切り用のくし刃、細千切り用のくし刃である。あとは、平刃におまけ?で付いているピーラーがある。

まず、商品として最もシンプルな桂むき用の平刃を使ってみた。多少の慣れと同時に、野菜の角度と、漏斗状の調理器の角度が合う必要があるが、この桂むきは、何とか使うことができた。とはいえ、思ったよりも野菜は回しにくく力も必要で、角度を合わせるのに神経も使う。

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この『ねじっこ』の中で、最も実用的なのは、実はこのおまけ?のピーラーかもしれない。

刃の部分に軽い湾曲があり、そのおかげで、皮を薄く、広くむくことができる。ただ、これを使うために、漏斗部分を持たないといけないので、専用のピーラーよりは使いにくいことは言うまでもない。

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次は、太千切り用のオレンジ色の“鉛筆削り”を使う。撮影のために、頑張って、少しでも長く千切りができるようにやってみたが、なかなか動画のようには上手く削れない。これは、漏斗の部分の角度に、野菜の面を上手く押さえつけられないのが原因なのだろうか。

細い野菜を使うための「ガイドプレート」も付いていたので使ってみたが、これは押さえる部分が増えることで、かえって使いにくくなる。使わない方が、野菜と刃との接触角度は安定できるように感じた。

同じ「野菜の鉛筆削り」なら、以前、当サイトでも紹介した、MONKEY BUSINESSの「カロット シャープナー&ピーラー」の方が、断然使いやすいし、見た目も、鉛筆削りそのもので遊び心がある。やはり、漏斗状部分の角度の違いなのだろうか。

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さて、問題は、細千切り用の緑の“鉛筆削り“である。こちらは、野菜が途中でちぎれて、詰まりやすく、刺身のつまを、美しく上手に作るのは至難の業である。これなら、手持ちの普通の千切りスライサーで、サッサっとスライスした方がずっと楽である。

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ひょっとしたら、にんじんだから作りにくいのかと思い、大根でも挑戦したが、結果は同じ。にんじんよりは多少、力を使わなくて済んだものの、お世辞にも、楽に美しいつまができるとは思えなかった。

これは記者のスキルの問題なのかと思い、ネットで実際に使った人のレビューなども見てみたが、やはり記者と同じような感想の人が少なくないことも確認できた。例えば、アマゾンでの購入者のレビューは以下から読めるので、ぜひ読んでみて欲しい。

ねじっこ Nejicco 野菜を回しながらスライス

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この『ねじっこ』は、新潟県の燕市にある株式会社カンダが作っている商品。燕三条という地域は、当サイトでもしばしば登場するが、銀食器や刃物作りの職人のまちで、クオリティの高い商品が多い。

この『ねじっこ』も、刃の部分は、切れ味鋭く、なかなかいい仕上がりをしているのだが、刃だけが良くても、商品全体としての開発に、その良さが生かされていないように感じられるのが残念である

例えが悪いかもしれないが、ままごと遊びに使う包丁に切れ味のいい刃が付いているような、あるいは、おもちゃのピストルに実弾がこめられているような、そんなチグハグな印象があって、せっかくの刃を使いきれていないような感じがするのである。

写真は、その刃の取り付け部分だが、刃をプラスチック2ヶ所で圧着されていて、いかにも安普請なうえ、これで耐久性が大丈夫なのか心配になる。何かチグハグさの象徴のような部分のように感じられた。

実際、1度の使用で、この2ヶ所のプラスチックの内側部分が白く変色し、ここに大きな力が集中していることがわかった。これを毎日のように使用し続けたら、本当にどれだけの期間、使用に耐えられるのだろうか。

また、このくし刃の間に、野菜が詰まってしまい、洗っても取れなかった。使用説明書には、「詰まった野菜は、ブラシや楊枝で取り除くように」と書いてあるが、ブラシで洗っても、楊枝でほじくっても、結局、1回の使用で詰まった野菜を落とすことはできなかった。

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さらに、にんじんを1度削っただけで、写真のように色素がプラスチックを染めてしまい、これも台所洗剤で洗っても、シミになってしまって落ない状況になってしまった。

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使用後は、タワー型の専用スタンドに全部を差し込んで置いておけるので、これはなかなか使い勝手はいい。が、肝心の野菜スライサーとしての機能で、この商品は実用に耐えられるのだろうか。

話のタネとして、パーティーなどのときに、お客さんに見せながら、サラダを作ったりするのは楽しいかもしれないが、毎日の普通の生活の中で使用する、実用の調理器としての素質には、記者はやや疑問を感じざるをえない。

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価格は税別2500円。冒頭にも書いたが、テレビやメディアで話題性がある商品らしいので、しっかりと自分で情報を集めて、購入の判断を下して欲しいものだと思う。

記者

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渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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