使い勝手は最強!リヒトラブ『ツイストリング・ノート』ブレークの鍵は、JIS規格”外”リーフの種類と普及度!?

リヒトラブ(大阪・中央区)が売り出しているリングノート『ツイストリング・ノート』は、一見、ルーズリーフのように見えるがルーズリーフではない。むしろ、ルーズリーフを“否定”するところから、圧倒的な使い勝手の良さを手に入れた商品だ。それは一体、どういうことなのか?

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学生を中心に普及しているルーズリーフは、ノートというよりはバインダーに綴じて使うペーパーだ。だから、リーフを取り外したり、入れ替えたりするには大変便利だが、持ち運びにはかさ張るし、ダブルリングノートのように、360°折り返して使うこともできないので、机の上を広く占領してしまう不便さがある。

そこで、この『ツイストリング・ノート』の登場である。これはリーフを外したり、入れ替えたりも簡単にでき、しかも折り返して書く事もできるうえ、リング部分が小さくて軽い。ルーズリーフとダブルリングノートの、“イイトコ取り”をしたような、使い勝手では最強のノートなのである。

 

 

メーカーの「リヒトラブ」は、もともとファイルやバインダーなどの事務用品を得意分野とする老舗企業。上の動画を見ていただけば、この『ツイストリング・ノート』の機能性の高さは理解いただけるだろう。ただ、この商品には、1つ、問題がある。

それは、ノートに使うリーフが「専用リーフ」であること。例えば、B5用紙だと、汎用的なルーズリーフは26穴だが、『ツイストリング・ノート』の専用リーフは29穴。その両者に互換性はない。この、あえて互換性を犠牲にした「規格」との闘いにこそ、この商品の最大の強みと弱点が共存するのである。

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上の写真は、『ツイストリング・ノート』と、機能的には非常に似ているコクヨの『キャンパスバインダー<スマートリング>』を重ねて置いたものである。「スマートリング」は、あくまでもバインダーとしての位置付けではあるが、リーフを取り外せて、しかも折り返して使えるノートとして捉えれば、コンセプトがほぼ同じの競合商品である。ただ、「スマートリング」には、汎用的なルーズリーフが使える点が異なるのだ。

ルーズリーフの規格は、JIS規格により決められていて、綴じる穴の中心がリーフの端から約6.5~7mmの場所にある。つまりこれを使うと、リングの直径は、最低でも14mm程度なければ、リーフを入れてスムーズにページをめくれないことは、写真を見て考えると、すぐに理解できると思う。ところが、このリングの直径の大きさが、バインダーを厚くし、書き込むときの邪魔になるのだ。

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そこで、リヒトラブは、このルーズリーフのJIS規格をあえて捨てたのである。どういうことかというと、リングの直径を小さくするために、リーフの穴の中心位置がリーフの端に近い国際標準規格であるISO規格を採用したのだ。

ISO規格では、B5のリーフで29穴。JIS規格の26穴よりも穴の数が多い分、1つひとつの穴にかかる負荷は小さくなる。そのため、穴を紙の端に寄せても、リーフを綴じた時の強度を保つことが可能になるのだ。

実際、ルーズリーフの約7mmに対して、『ツイストリング・ノート』の穴の中心からリーフの端までの距離は4.5mm。その結果、リングの直径を最低9mmほどにしても、ページめくりに支障がないリングノートを作ることが可能になるのだ。

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実際、『ツイストリング・ノート』のリングの直径は12mm。同じコンセプトのコクヨの「スマートリング」よりもリングの直径が小さく、持ち運びにかさ張らず、書くときに邪魔にならないサイズとなった。

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しかも、リング径が小さいにもかかわらず、より多くのリーフを綴じることができ、360°折り返して使うときも、「スマートリング」では、やや不自然さが残るが、『ツイストリング・ノート』では、ほとんどリングがあることを気にしないで使うことができるようになった。

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このように、日本での汎用性の高いJIS規格のルーズリーフを犠牲にすることで、最強の使い勝手を手に入れた『ツイストリング・ノート』だが、そうなると、専用リーフに魅力的なラインナップが揃い、それがどこでも容易に手に入れることができるようにならないと、せっかくの最強の機能も“宝の持ち腐れ”になってしまう。

今のところ、B5の専用リーフでは、横罫のA罫、B罫、無地、方眼、それに高級リーフの5種類しかないが、これが今後、どのように拡充されていくのが、そして、その流通をそれだけ充実させることができるかに、このノートの命運がかかっているように思える。

また、これは裏ワザに近いが、ダブルリングノートとして売られている商品は、リング穴の規格がISO規格になっているものが多いので、ダブルリングノートを買って、ダブルリングを外せば、『ツイストリング・ノート』のリーフとして使うこともできる

ちなみに、文具好きの記者は、これまで使っていたコクヨの「スマートリング」から『ツイストリング・ノート』に乗り換えを現在、検討中である。この『ツイストリング・ノート』は、リーフ30枚が付いて、価格は税別250円。色は、ブルー、ブラック、ピンク、イエロー、グリーンの5色となっている。

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『ツイストリング・ノート』は、リーフの種類はまだまだ少ないが、ノート自体のラインナップは、結構充実している。詳しくは、メーカーのHPにある「製品情報」を参考にして欲しい。

ちょっと変わったところでは、『単語ノート』。1ページのリーフが、単語カード5枚をつないだような形状になっていて、必要に応じて、切り取り用のミシン目から切り離して使うことができるのだ。

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単語カードとして、切り離した1枚1枚をめくって使用でき、カバンにしまうときは、小さなノートになっているので、紛失しにくく、携帯に便利。綴じるリングは、もちろん『ツイストリング・ノート』の小さな径のリングである。こちらも、B5のノートと同じく、税別250円で、同じ5色をランナップとして揃えている。

リーフの汎用性や種類は劣るものの、機能性の高い『ツイストリング・ノート』を選ぶか、多少の使い勝手の悪さはあっても、汎用性が高く、色々な種類から選べて、どこででも手に入れやすいルーズリーフタイプを選ぶか。今しばらくは、さしずめJIS対ISOの規格戦争が、ノートの世界では繰り広げられそうである。

記者

渡辺 穣

複数の雑誌のデスク・編集長等を経てフリーライター/エディター。主にビジネス/経済系の著書・記事多数。一橋大学法学部卒。八ヶ岳山麓に移住して20年以上。趣味は、スキー、ゴルフ、ピアノ、焚き火、ドライブ。山と海と酒とモーツァルトを愛する。札幌生まれ。

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